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小学生でも分かる商標法|商標法第73条・第74条 商標登録表示と虚偽表示の禁止 ― 「登録ずみ」と書いてよいとき、書いてはいけないとき

小学生でもわかる商標法 第36回「商標登録表示と虚偽表示」。登録済みと表示するルール。

小学生でも分かる商標法 / C. 商標権の効力・使用権・侵害 #36

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お店や商品の「目じるし」を特許庁(とっきょちょう)に登録した人は、「これは登録ずみの目じるしです」と書くようにつとめることになっています。反対に、登録していないのに「登録ずみ」と書くことは、だれであっても禁止されています。この記事では、書く側のルール(商標法第73条)と、うその表示を禁止するルール(商標法第74条)を、罰則(商標法第80条・第82条)まで一続きで整理します。

条文:商標法第73条、第74条(第1号〜第5号)、第80条、第82条、商標法施行規則第17条審査基準:商標審査基準に対応する章なし(登録要件ではないため)参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

「登録ずみ」のふだは、ほんとうに登録した人だけのもの

パン屋さんの「ほしぞらパン」という名前を思いうかべてください(架空(かくう)のお店です)。商標(しょうひょう)とは、お店や商品の「目じるし」のことです。店長さんは、この目じるしを国の役所である特許庁(とっきょちょう)に登録しました。登録すると、番号がもらえます。

登録した店長さんは、パンのふくろに「登録商標(とうろくしょうひょう) 第○○号」と書くことができます。これは「この目じるしは、国に登録してあります」というお知らせです。法律は、登録した人に「できるだけ書くようにしましょう」と言っています。書かなくても、しかられることはありません。

では、登録していないお店が、ふくろに「登録商標」と書いたらどうでしょう。ほんとうは登録していないのに「登録ずみ」と書いたら、それはうそになります。お客さんは「国がみとめた目じるしなんだ」と思いちがいをしてしまいます。だから法律は、このうその表示を、だれに対しても禁止しています。やぶると、重いばつを受けることがあります。

「登録ずみ」と書いてよいのは、どっち?(架空の例) 登録した目じるし ほしぞらパン 登録商標 第○○○○号 ほんとうのお知らせ 登録した人は 「書くようにつとめる」 (書かなくても、ばつはない) 登録していない目じるし つきよのパン 登録商標 (ほんとうは未登録) × うそのお知らせ だれであっても 「してはならない」 (やぶると、ばつがある) お客さんは「登録ずみ」のふだを見て、国に登録された目じるしだと信じる

図は左右にスクロールできます。

  • 橙の枠:登録した目じるし。「登録商標」と書いてよい場面(第73条)
  • 赤の枠:登録していない目じるし。書いてはいけない場面(第74条)
  • 赤の破線の枠:ほんとうは登録がないのに付けた「登録商標」の表示
  • 赤い丸の×:してはならないこと

【図1】正しい表示と、うその表示。店名・商標は架空の例。条文を単純化した模式図(本記事作成者が作成)。

登録した人でも、うそになることがある

気をつけたいのは、登録した人でも、うそになる場合があることです。登録は「この目じるしを、この商品に使います」と、商品を決めて行います。店長さんが「ほしぞらパン」を「パン」について登録したとします。その店長さんが、登録していない「えんぴつ」に同じ名前をつけて「登録商標」と書いたら、えんぴつについては登録していないので、これもうその表示になります。

① 登録した人は「登録ずみ」と書くようにつとめる② 登録していない目じるしに「登録ずみ」と書くのは禁止③ 登録した商品とちがう商品に書くのも禁止
レベル1のまとめ
  • 目じるしを登録した人は、「登録ずみです」と書くようにつとめる。書かなくても、ばつはない。
  • 登録していない目じるしに「登録ずみ」と書くのは、うそ。だれがやっても禁止で、ばつがある。
  • 登録した人でも、登録していない商品に「登録ずみ」と書けば、うそになる。

※ 「登録ずみと書く」は、正確には「『登録商標』の文字と登録番号を付する」ことです。禁止される行為も、正確には5つの型に分かれ、「まぎらわしい表示」や「売るために持っていること」もふくまれます(→レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第73条 ― 登録した側の「努力義務」

商標法第73条(商標登録表示)(原文) 商標権者、専用使用権者又は通常使用権者は、経済産業省令で定めるところにより、指定商品若しくは指定商品の包装若しくは指定役務の提供の用に供する物に登録商標を付するとき、又は指定役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該指定役務の提供に係る物に登録商標を付するときは、その商標にその商標が登録商標である旨の表示(以下「商標登録表示」という。)を付するように努めなければならない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。

文の終わりは「付するように努めなければならない」です。「付さなければならない」ではありません。つまり、表示をしなかったからといって、商標法第73条に違反したことを理由とする罰則や不利益は、条文上は定められていません。このような定め方を、一般に「努力義務」と呼びます(講学上の呼称です)。

部品条文の文言意味
だれが商標権者、専用使用権者又は通常使用権者登録商標を正当に使う立場の3者。登録した人と、使用の許可を受けた人。
どのやり方で経済産業省令で定めるところにより表示の中身は、商標法施行規則第17条が決めている。
いつ指定商品等に登録商標を「付するとき」商品や包装、サービスに使う物などに、登録商標を付ける場面(下の〔表2〕の4場面)。
何をその商標が登録商標である旨の表示(商標登録表示)「この商標は登録されています」というお知らせ。
どうする付するように努めなければならない努力義務。義務づけではない。

〔表1〕商標法第73条の部品分解。

場面登録商標を付ける対象(条文の文言)たとえ(架空)
①指定商品パンそのものに焼き印で「ほしぞらパン」
②指定商品の包装パンのふくろ
③指定役務の提供の用に供する物喫茶サービスのお店が使うカップやトレー
④指定役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該指定役務の提供に係る物クリーニング店が、お客さんから預かった服に付けるタグ

〔表2〕商標法第73条が挙げる4つの場面。たとえは本記事作成者による架空の例。条文は「付するとき」に限っており、広告に表示する場面は第73条の文言には挙げられていない。

商標登録表示の中身 ― 商標法施行規則第17条

商標法施行規則第17条(商標登録表示)(原文) 商標法第七十三条の商標登録表示は、「登録商標」の文字及びその登録番号又は国際登録の番号とする。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 335M50000400013)、2026年9月参照。
要素内容
文字「登録商標」の文字
番号その登録番号、又は国際登録の番号
つなぎ方「文字及び番号」。文字と番号の両方がそろって、省令の定める商標登録表示になる。
規定されていないもの「®」や「TM」の記号は、商標法第73条にも商標法施行規則第17条にも文言として挙げられていない(→レベル3の5)。

〔表3〕商標登録表示の中身(商標法施行規則第17条)。

第74条 ― 「何人も」してはならない5つの行為

商標法第74条(虚偽表示の禁止)柱書・第1号・第2号(原文) 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一 登録商標以外の商標の使用をする場合において、その商標に商標登録表示又はこれと紛らわしい表示を付する行為
二 指定商品又は指定役務以外の商品又は役務について登録商標の使用をする場合において、その商標に商標登録表示又はこれと紛らわしい表示を付する行為
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。第3号〜第5号の原文はレベル3の〔表5〕。

主語は「何人も」です。商標権者も、使用権者も、まったくの第三者も、すべて対象です。第73条が「登録した側の3者」だけを名宛人にしているのと対照的です。

だれに向けたルールか(商標法第73条と第74条) 第74条の名宛人=「何人も」 虚偽表示を「してはならない」(禁止) 第73条の名宛人(3者) 商標権者 専用使用権者 通常使用権者 商標登録表示を「付するように努めなければならない」 努力義務(違反の罰則は条文上なし) 団体構成員・地域団体構成員は、第73条の適用について 通常使用権者とみなされる(商標法第31条の2第3項) 3者以外の第三者も、3者自身も、第74条の対象 (例:商標権者が指定商品以外の商品に表示 → 第74条第2号) 違反 第80条 虚偽表示の罪 三年以下の拘禁刑 又は 三百万円以下の罰金 業務に関して 第82条 両罰規定 行為者を罰するほか 法人に一億円以下の罰金刑 (第82条第1項第2号)

図は左右にスクロールできます。

  • 赤の枠:第74条(何人もしてはならない)の範囲と、その罰条
  • 青緑の枠:第73条(努力義務)の名宛人の範囲
  • 白い枠:個々の主体・罰条の箱
  • 赤の矢印:違反したときにつながる罰則

【図2】商標法第73条と第74条の名宛人・効果の相関図。条文を整理して本記事作成者が図にしたもの。

比べる点商標法第73条商標法第74条
見出し商標登録表示虚偽表示の禁止
だれが商標権者、専用使用権者又は通常使用権者何人も
文末「付するように努めなければならない」「次に掲げる行為をしてはならない」
性質努力義務(講学上の呼称)禁止規定
違反の罰則条文上の定めなし商標法第80条(三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金)

〔表4〕商標法第73条と第74条の対比。

flowchart LR
  A["商標法第73条
商標登録表示を付するよう努める"] --> B["表示の中身
商標法施行規則第17条
登録商標の文字及び登録番号等"] C["商標法第74条
虚偽表示の禁止
第1号から第5号"] --> D["商標法第80条
三年以下の拘禁刑又は
三百万円以下の罰金"] D --> E["商標法第82条第1項第2号
法人に一億円以下の罰金刑
人に各本条の罰金刑"] B -. "この表示又は紛らわしい表示を
うその場面で付すると" .-> C style A fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style B fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style C fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style D fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style E fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:適法な表示のルール(第73条・商標法施行規則第17条)
  • 赤の箱:禁止とその罰則(第74条・第80条・第82条)
  • 破線の矢印:手続の流れではなく、うその場面で付したときに禁止の側につながることを示す

【図3】4つの条文のつながり。本記事作成者がフロー化したもの。

レベル2のまとめ
  • 商標法第73条:商標権者・専用使用権者・通常使用権者の3者が、指定商品等に登録商標を付するときに、商標登録表示を付するよう「努めなければならない」。
  • 商標登録表示の中身は、商標法施行規則第17条の「『登録商標』の文字及びその登録番号又は国際登録の番号」。
  • 商標法第74条:「何人も」、5つの型の虚偽表示をしてはならない。違反は商標法第80条の罪。法人には商標法第82条の両罰規定。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 第74条各号の原文と構造

号原文(商標法第74条)
柱書何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
第1号登録商標以外の商標の使用をする場合において、その商標に商標登録表示又はこれと紛らわしい表示を付する行為
第2号指定商品又は指定役務以外の商品又は役務について登録商標の使用をする場合において、その商標に商標登録表示又はこれと紛らわしい表示を付する行為
第3号商品若しくはその商品の包装に登録商標以外の商標を付したもの、指定商品以外の商品若しくはその商品の包装に商品に係る登録商標を付したもの又は商品若しくはその商品の包装に役務に係る登録商標を付したものであつて、その商標に商標登録表示又はこれと紛らわしい表示を付したものを譲渡又は引渡しのために所持する行為
第4号役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標以外の商標を付したもの、指定役務以外の役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に役務に係る登録商標を付したもの又は役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に商品に係る登録商標を付したものであつて、その商標に商標登録表示又はこれと紛らわしい表示を付したもの(次号において「役務に係る虚偽商標登録表示物」という。)を、これを用いて当該役務を提供するために所持し、又は輸入する行為
第5号役務に係る虚偽商標登録表示物を、これを用いて当該役務を提供させるために譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持し、若しくは輸入する行為

〔表5〕商標法第74条の柱書と全5号(原文)。出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。

号型対象禁止される行為
第1号表示を付する行為(商標がちがう)登録商標以外の商標の使用をする場合商標登録表示又は紛らわしい表示を付する
第2号表示を付する行為(商品・役務がちがう)指定商品・指定役務以外について登録商標の使用をする場合同上
第3号商品の所持虚偽の表示が付された商品・商品の包装(3類型:登録商標以外の商標/指定商品以外の商品に商品に係る登録商標/商品に役務に係る登録商標)譲渡又は引渡しのために所持する
第4号役務用の物の所持・輸入(自分で提供)役務に係る虚偽商標登録表示物(3類型:登録商標以外の商標/指定役務以外の役務に役務に係る登録商標/役務の物に商品に係る登録商標)これを用いて当該役務を提供するために所持し、又は輸入する
第5号役務用の物の流通(他人に提供させる)役務に係る虚偽商標登録表示物これを用いて当該役務を提供させるために譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持し、若しくは輸入する

〔表6〕商標法第74条各号の整理(本記事作成者が原文を要約したもの。正確な要件は〔表5〕の原文による)。

ポイント:第1号・第2号は「付する行為」、第3号〜第5号は、虚偽の表示が付された物の「所持」「輸入」「譲渡」「引渡し」という、付した後の段階の行為です。第3号の対象行為は「譲渡又は引渡しのために所持する行為」で、条文の文言上、輸入は第3号には挙げられていません(輸入は第4号・第5号に挙げられています)。
商標登録表示を付してよいのは、4マスのうち1マスだけ 指定商品・指定役務について使用 それ以外の商品・役務について使用 登録商標 (色彩のみ異なる類似 商標を含む=第70条第1項) 登録商標以外の商標 (出願中の商標、 未出願の商標 など) 表示してよい 第73条:3者は表示を 付するよう努める 第74条の各号に当たらない 虚偽表示 第74条第2号 商標権者自身でも該当しうる (類似商品・類似役務でも同じ) 虚偽表示 第74条第1号(商品・役務が何であっても) 登録商標に類似するだけの商標(色彩のみ異なるものを除く)も 「登録商標以外の商標」 ※ 付する行為(第1号・第2号)の整理。所持・輸入等は第3号〜第5号

図は左右にスクロールできます。

  • 橙の枠:商標登録表示を付してよいマス(第73条の場面)
  • 赤の枠:虚偽表示に当たるマス(第74条第1号・第2号)

【図4】第74条第1号・第2号の4マス図。条文の文言を当てはめて本記事作成者が整理したもの。

商標権の効力は、講学上「専用権」(商標法第25条)と「禁止権」(商標法第37条第1号)に分けて説明されます。他人の使用を排除できる範囲は類似の範囲まで及びますが、商標登録表示を付してよい範囲は、条文の文言上、登録商標を指定商品・指定役務に使用する場合に限られます。類似の範囲に広がらない点が、第74条第1号・第2号の文言から導かれる帰結です。

ポイント(商標法第70条第1項):商標法第70条第1項は、第73条・第74条を含む列挙条文における「登録商標」には、その登録商標に類似する商標であつて、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含むものとする。と定めています。したがって、色だけを変えた登録商標は、第73条・第74条の適用上は「登録商標」に含まれます。ただし、商標法第70条第4項により、色彩のみからなる登録商標にはこの規定は適用されません。

2. 「使用をする場合」と「紛らわしい表示」

第74条第1号・第2号は「商標の使用をする場合において」と定めています。「使用」は商標法第2条第3項各号で定義されており、商品や包装に標章を付する行為のほか、たとえば同項第8号は商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為を挙げています。第73条が「付するとき」の4場面に限っているのに対し、第74条第1号・第2号は「使用をする場合」という広い文言を使っている点が、条文上の違いです。

「これと紛らわしい表示」が具体的にどのような表示を指すかは、条文にも商標法施行規則にも定義がありません。

立法趣旨(逐条解説〔第22版〕):特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』(令和4年10月。以下「逐条解説〔第22版〕」)の説明の要旨は、次のとおりです。
第73条。現行法(昭和34年法)で創設された規定である。商標登録表示を付することには、その商標が商標権の対象となっていることを表明し、かつ、第三者がその使用によって商標権を侵害しないようにあらかじめ警告するという効果がある。本条は訓示規定であり、従わなくても何ら制裁はない。また、本条は商標権の正当な権利行使に対してのみ適用されるので、例えば商標権のうちの禁止権に係る部分を使用するのは正当な権利行使とはいえず、商標登録表示を付することはできない。もし付した場合には、逆に第74条・第80条によって処罰されることになる。表示の具体的方法は商標法施行規則第17条による。
第74条。正当な商標権の権利行使ではないにもかかわらず、そうであるかのように装って第三者を欺瞞することを禁止しようとするものである。商標登録を受けていない商標には、不正競争防止法による場合や先使用による商標の使用をする権利等の特殊な例外を除いて法的保護はないのに、商標登録表示を付して商標権による法的保護があるかのように装うことは商標法の立法趣旨に反するので、これを禁止している。この趣旨に従い、商標登録表示だけでなく、これと紛らわしい表示を付することも禁止している。
各号と経緯。第1号は未登録商標の使用をするときは一切の商標登録表示をしてはならないこと、第2号は登録商標であっても指定商品・指定役務以外の商品・役務に使用するときは商標登録表示をしてはならないこと、第3号は第1号・第2号の行為の結果物を譲渡又は引渡しのために所持する行為をしてはならないことを定める。第4号・第5号は、役務において商標の使用につながる虚偽表示に係る行為を禁止するために平成3年の一部改正で新設された規定で、役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を対象としている。また、令和3年の一部改正で、外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為が輸入する行為に含まれるとする解釈規定が新設されたことに伴い、第4号・第5号の輸入する行為にも同様の行為が含まれることとなった、と説明されています。
逐条解説〔第22版〕1873頁(第73条)、1874頁〜1876頁(第74条)。
第74条は、登録商標でない商標や指定外の商品・役務での使用について、登録表示やそれと紛らわしい表示を禁止します。青本は、正当な商標権に基づく保護があるように第三者を誤認させることを防ぐ趣旨と説明しています。記号だけで適法・違法を決める例は設けず、登録の有無・対象商品等と表示内容を対応させます。青本1874〜1875頁

3. 罰則 ― 第80条と第82条

商標法第80条(虚偽表示の罪)(原文) 第七十四条の規定に違反した者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
商標法第82条第1項柱書(両罰規定)(原文) 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号で定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
出典:同上。第1号=第78条、第78条の2又は前条第1項:三億円以下の罰金刑。第2号=第79条又は第80条:一億円以下の罰金刑。
罪条文法定刑(原文どおり)併科の文言両罰規定での法人の罰金刑
侵害の罪商標法第78条十年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科するあり三億円以下(第82条第1項第1号)
詐欺の行為の罪商標法第79条三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金なし一億円以下(同項第2号)
虚偽表示の罪商標法第80条三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金なし一億円以下(同項第2号)

〔表7〕商標法の罰則のうち、虚偽表示の罪と並べて覚えたい3つ(2026年9月時点のe-Gov掲載条文による。第78条の2・第81条以下は省略)。

ポイント:第80条の法定刑は「拘禁刑又は罰金」で、第78条のような「又はこれを併科する」の文言はありません。また、第82条第2項が定める告訴の効力は「前条第二項の告訴」(第81条の2第2項)に関するもので、第80条の条文には告訴を要する旨の定めはありません。
拘禁刑への変更は2025年6月1日に施行されました。現在の商標法第80条・第81条も「拘禁刑」と定めています。2026年度弁理士試験の受験案内は、各試験の実施日に施行されている法令を出題対象としています。短答式筆記試験の実施日は2026年5月17日です。法務省の説明/商標法/2026年度受験案内・冊子2頁

4. 当てはめ ― 出願中・消滅後・指定商品以外

flowchart TB
  S["商標に 登録商標 第○号 などの
商標登録表示又は紛らわしい表示を付する"] --> Q1{"その商標は いま
商標登録を受けている商標か
(商標法第2条第5項)"} Q1 -- "はい" --> Q2{"付した商標は登録商標と同じか
(色彩のみ異なる類似商標は含む
=商標法第70条第1項)"} Q1 -- "いいえ(未出願・出願中・
拒絶された・登録が消滅した等)" --> N1["登録商標以外の商標
商標法第74条第1号に当たる"] Q2 -- "はい" --> Q3{"使用する商品・役務は
指定商品・指定役務か"} Q2 -- "いいえ(類似するだけ等)" --> N1 Q3 -- "はい" --> OK["虚偽表示に当たらない
3者は第73条の努力義務の場面"] Q3 -- "いいえ(類似商品・類似役務を含む)" --> N2["商標法第74条第2号に当たる
商標権者・使用権者でも同じ"] N1 --> P["商標法第80条
法人は商標法第82条第1項第2号"] N2 --> P style OK fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style N1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N2 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style P fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

  • 緑の箱:虚偽表示に当たらない結論
  • 赤の箱:虚偽表示に当たる結論と、その罰則

【図5】第74条第1号・第2号の当てはめ分岐図。条文の文言に基づき本記事作成者がフロー化したもの。刑事罰の成否には、故意など刑法総則上の要件も関係する(本記事の範囲外)。

事例(架空)条文の文言への当てはめ結論
①「ほしぞらパン」を出願中。まだ設定の登録前に、ふくろに「登録商標」と表示商標法第2条第5項はこの法律で「登録商標」とは、商標登録を受けている商標をいう。と定める。出願中の商標は、まだ商標登録を受けていない=「登録商標以外の商標」。第74条第1号
②「パン」を指定商品とする登録商標を、「えんぴつ」に付して「登録商標 第○号」と表示「指定商品…以外の商品…について登録商標の使用をする場合」。商標権者自身の行為でも、柱書は「何人も」。第74条第2号
③登録商標「ほしぞらパン」に似た「ほしぞらブレッド」(未登録)に「登録商標」と表示類似するだけの商標は「登録商標以外の商標」。色彩のみ異なる場合に限り、商標法第70条第1項で「登録商標」に含まれる。第74条第1号
④存続期間の満了、無効審決の確定、取消審決の確定などで商標権が消滅した後に、新たに「登録商標」と表示して使用消滅後は、その商標は「商標登録を受けている商標」ではなくなるので、文言上は「登録商標以外の商標」に当たる。第74条第1号(文言上)
⑤上の①〜④の表示がある商品を、売るために倉庫に保管「譲渡又は引渡しのために所持する行為」。第74条第3号
⑥登録商標を指定商品に付して「登録商標 第○号」と表示第74条のどの号にも当たらない。適法。第73条の場面

〔表8〕当てはめ事例(架空の例。条文の文言に当てはめた結果であり、個別事案の結論は事実関係による)。

この表は、権利消滅後に新たに登録表示を付す行為の整理です。存続中に表示された流通在庫や、後日の無効審決による過去の表示の扱いまで、一括して犯罪になるとするものではありません。第74条の禁止行為と第80条の刑事責任は、行為時点や表示等の事実を区別して判断します。第74条・第80条
timeline
  title 商標の一生と 登録商標 の表示(架空の例)
  出願前 : 登録商標以外の商標 : 表示すると第74条第1号
  出願から設定の登録まで : まだ登録商標以外の商標 : 表示すると第74条第1号
  設定の登録から消滅まで : 登録商標 : 指定商品・指定役務に付するなら表示してよい(第73条)
  商標権の消滅後 : 文言上は登録商標以外の商標 : 新たに表示すると第74条第1号

図は左右にスクロールできます。

【図6】時期ごとの表示の可否。条文の文言に基づき本記事作成者がタイムライン化したもの。商標権は設定の登録により発生する(商標法第18条第1項)。時間軸に縮尺はありません。

5. 「®」「TM」は商標登録表示か

表示商標法第73条・商標法施行規則第17条との関係第74条との関係
「登録商標」の文字+登録番号(又は国際登録の番号)商標法施行規則第17条が定める商標登録表示そのもの。登録商標以外の商標や指定商品・指定役務以外に付すれば、第1号・第2号。
「登録商標」の文字だけ(番号なし)規則は「文字及び番号」。文字だけでは省令どおりの商標登録表示ではない。うその場面で付した場合に「これと紛らわしい表示」に当たるかが問題になる(登録の有無・商品役務・表示内容を合わせて判断)。
「®」商標法第73条・商標法施行規則第17条の文言に挙げられていない。条文上の商標登録表示ではない。同上(登録の有無・商品役務・表示内容を合わせて判断)。
「TM」同じく、条文・規則の文言に挙げられていない。同上(登録の有無・商品役務・表示内容を合わせて判断)。

〔表9〕表示の種類と条文の関係。「®」「TM」については、商標法・商標法施行規則の文言から言える範囲のみを記載。

特許庁のFAQ 1-4は、®を外国の登録商標を示す表示、TMをTrademarkの略と説明し、いずれも日本の商標法に基づく登録表示ではないとしています。日本では「登録商標」の文字と登録番号又は国際登録番号が法定の表示です(施行規則第17条)。このFAQは、®やTMを付せば一律に第74条違反になると判断したものではありません。特許庁・商標制度FAQ 1-4

6. 拒絶・異議・無効・取消との関係

制度条文第73条・第74条違反は理由になるか
拒絶理由商標法第15条非該当 列挙されていない(登録要件の規定ではない)。
登録異議の申立ての理由商標法第43条の2非該当 列挙されていない。
無効理由商標法第46条第1項非該当 列挙されていない。
除斥期間商標法第47条無効理由でないため、問題にならない。
取消審判商標法第50条、第51条、第52条の2、第53条、第53条の2第73条・第74条違反それ自体を取消事由とする規定は、これらの条文にはない。
刑事罰商標法第80条、第82条該当 第74条違反のみ。第73条違反には罰則なし。

〔表10〕第73条・第74条と各制度の対応。第73条・第74条は「登録後の表示」に関する雑則の規定であり、商標登録の可否や有効性には直接かかわらない。

7. 四法比較

法表示の条文(見出し)名宛人表示を付する対象(条文の要旨)文末
特許法特許法第187条(特許表示)特許権者、専用実施権者又は通常実施権者特許に係る物(物の特許発明におけるその物、物を生産する方法の特許発明におけるその方法により生産した物)又はその物の包装「附するように努めなければならない」
実用新案法実用新案法第51条(実用新案登録表示)実用新案権者、専用実施権者又は通常実施権者登録実用新案に係る物品又はその物品の包装「附するように努めなければならない」
意匠法意匠法第64条(意匠登録表示)意匠権者、専用実施権者又は通常実施権者登録意匠若しくはこれに類似する意匠に係る物品若しくはその包装、建築物又は画像若しくは画像記録媒体等若しくはその包装「付するように努めなければならない」
商標法商標法第73条(商標登録表示)商標権者、専用使用権者又は通常使用権者指定商品、指定商品の包装、指定役務の提供の用に供する物、指定役務の提供を受ける者の当該指定役務の提供に係る物に登録商標を付するとき、その商標に「付するように努めなければならない」

〔表11〕四法の「表示」規定の比較(各法のe-Gov掲載条文、2026年9月参照)。いずれも「経済産業省令で定めるところにより」。この表は法律上の表示義務・努力義務の比較です。

法虚偽表示の禁止号の数と型虚偽表示の罪両罰規定(法人の罰金刑)
特許法特許法第188条4号:①付する行為 ②譲渡等・譲渡等のための展示 ③物の広告 ④方法の広告特許法第198条:三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金特許法第201条第1項第2号:一億円以下
実用新案法実用新案法第52条3号:①附する行為 ②譲渡・貸渡し・そのための展示 ③広告実用新案法第58条:一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金実用新案法第61条第1項第2号:三千万円以下
意匠法意匠法第65条3号:①付する行為 ②虚偽の表示を付した物品等について行う「次のいずれかに該当する行為」 ③登録意匠等に係る物品等以外の物品等について行う「次のいずれかに該当する行為」(第2号・第3号の細目は原文で確認)意匠法第71条:一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金意匠法第74条第1項第2号:三千万円以下
商標法商標法第74条5号:①登録商標以外の商標に付する ②指定商品・指定役務以外で付する ③商品の所持 ④役務用の物の所持・輸入 ⑤役務用の物の譲渡・引渡し等商標法第80条:三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金商標法第82条第1項第2号:一億円以下

〔表12〕四法の「虚偽表示の禁止」と罰則の比較(各法のe-Gov掲載条文、2026年9月参照)。号の型は本記事作成者による要約。

商標法での違い:①権利者以外の名宛人が「実施権者」ではなく「使用権者」。②特許法・実用新案法・意匠法には「広告」に虚偽の表示をする行為を独立の号で定めるものがありますが、商標法第74条には「広告」の文言を置いた号はなく、第1号・第2号が「商標の使用をする場合」という文言で定めています。③商標法には、役務(サービス)に対応する第4号・第5号があります。④法定刑は特許法と同じ水準で、実用新案法・意匠法より重く定められています。⑤意匠法第64条は「類似する意匠」に係る物品等も表示の対象に含めますが、商標法第73条は「登録商標」「指定商品」「指定役務」に限っています。

試験での問われ方

Q. 通常使用権者が、指定商品に登録商標を付するときに商標登録表示を付さなかった。商標法上の罰則はあるか。
A. 商標法第73条は「付するように努めなければならない」と定めるにとどまり、同条違反に対する罰則は条文上定められていません。
Q. 商標権者が、指定商品に類似する商品に登録商標を使用し、商標登録表示を付した。第74条に当たるか。
A. 第74条柱書は「何人も」で、商標権者を除いていません。類似する商品は「指定商品…以外の商品」ですから、文言上、第74条第2号に当たります。
Q. 団体商標の団体構成員は、第73条の名宛人か。
A. 商標法第31条の2第3項により、団体構成員・地域団体構成員は、第73条の規定の適用については通常使用権者とみなされます(同項が挙げる条文は、第24条の4、第29条、第50条、第52条の2、第53条及び第73条)。

問われ方としては、短答式で、①第73条が努力義務であること、②第74条の主体が「何人も」であること、③商標権者自身の行為でも第2号に当たりうること、④第80条の法定刑と第82条の法人の罰金刑の額、⑤第70条第1項の色彩の特則、が条文知識として問われる形が考えられます。出題頻度についての断定はできません。

令和8年度短答の商標全10問には、第73条・第74条・第80条・第82条そのものを直接問う肢はありません。出題実績の推測に代えて、本記事では登録表示の方式と虚偽表示になる行為を条文で整理しています。 公式問題/公式正解。肢の説明は条文による検証であり、公式解答が公表するのは問題全体の正解番号です。
レベル3のまとめ
  • 第74条は全5号。第1号・第2号=表示を付する行為、第3号=商品の「譲渡又は引渡しのために所持」、第4号・第5号=役務に係る虚偽商標登録表示物の所持・輸入・譲渡・引渡し。
  • 商標登録表示を付してよいのは、登録商標(色彩のみ異なる類似商標を含む=第70条第1項)を指定商品・指定役務に使用する場合だけ。類似範囲には広がらない。
  • 出願中の商標、消滅後の商標は、文言上「登録商標以外の商標」(第2条第5項)。指定商品・指定役務以外なら商標権者でも第2号。
  • 罰則は第80条(三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金)、法人は第82条第1項第2号(一億円以下の罰金刑)。第73条違反に罰則なし。
  • 「®」「TM」は、第73条・商標法施行規則第17条の文言に挙げられていない。「紛らわしい表示」に当たるかは確認先へ。
  • 第73条・第74条違反は、拒絶・異議・無効の理由ではない。

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