小学生でも分かる商標法 / C. 商標権の効力・使用権・侵害 #35
お店の目じるし(商標)を勝手に使われたとき、「いくら損をしたか」を自分で全部証明するのは、とてもむずかしいことです。そこで商標法は、損の金額を計算する「ものさし」をいくつか用意しました。この記事では、そのものさし(商標法第38条)、あとから話をむし返せなくするルール(商標法第38条の2)、特許法から借りてくるルール(商標法第39条)を、3つのレベルで順に見ていきます。
LEVEL 1イメージでつかむ
「いくら損をしたか」は、じつは証明しにくい
「ほしぞらパン」という名前のパン屋さんがあるとします(架空のお店です)。この名前は、商標(しょうひょう)=お店や商品の「目じるし」として、国に登録されています。
ある日、となり町の別のお店が、勝手に「ほしぞらパン」という名前でパンを売りはじめました。ほしぞらパンの店長は、「やめてください」と言うだけでなく、「損をした分のお金をはらってください」と言うことができます。これを損害賠償(そんがいばいしょう)=「損をさせた人が、その分のお金をはらうこと」といいます。
でも、ここでこまったことが起きます。「にせものが売られたせいで、うちのパンが何個売れなくなったのか」を、正確に数えることはできません。お客さんの一人ひとりに「本当はどっちで買うつもりでしたか」と聞いて回ることはできないからです。
そこで、法律が「ものさし」を用意した
商標法は、損の金額を計算しやすくするために、4つの「ものさし」を用意しました。店長は、自分に合ったものさしを選んで使うことができます。
図は左右にスクロールできます。
- 橙の枠:ものさし①(売れたはずの分)
- 青緑の枠:ものさし②(相手のもうけ)
- 藍の枠:ものさし③(名前の使用料)
- 赤の枠:ものさし④(登録にかかった費用)。商標法だけにあるものさしという意味で、「使えない」という意味ではありません
【図1】損の金額をはかる4つのものさしのイメージ。店名は架空の例で、本記事作成者が作った模式図。ものさし④は、登録した名前と同じ名前を、登録した商品と同じ商品に使われた場合にかぎられます(→レベル3)。
| ものさし | どう考えるか | たとえ |
|---|---|---|
| ① 売れたはずの分 | にせものが売れた数だけ、本物が売れなくなったと考える | にせものが100個売れた → 本物100個分のもうけが消えた |
| ② 相手のもうけ | 相手がもうけた分を、自分の損と考える | 相手が5,000円もうけた → 自分の損も5,000円とひとまず考える |
| ③ 名前の使用料 | 名前を貸していたらもらえたはずのお金 | 1個売るごとに10円もらう約束をしていたら…と考える |
| ④ 登録にかかった費用 | 登録して持ちつづけるのにふつうかかる費用 | 登録のためにはらうお金など |
〔表1〕4つのものさしのやさしい説明。金額はすべて説明用の仮の数字です。
あと2つのルール
むし返し禁止のルール。裁判で「お金をはらいなさい」という結論が出て、それが動かせなくなったとします。そのあとで「じつは登録そのものがまちがいだった」と決まっても、「だから前の裁判をやり直してください」とは言えません。いつまでも話が終わらないと、みんながこまるからです。
特許法から借りるルール。発明を守る特許法には、裁判を進めやすくするルールがたくさんあります。商標法は、その一部を「同じように使います」と言って借りています。たとえば「勝手に使った人は、うっかり(不注意)があったものとあつかう」というルールです。登録された名前は国の公報(こうほう)=「お知らせの本」にのっていて、だれでも調べられるからです。
- 目じるしを勝手に使われたら、「損をした分のお金をはらって」と言える。
- でも損の金額は証明しにくい。そこで法律が、計算のための4つのものさしを用意した。
- 決着した裁判は、あとで登録がまちがいだったと決まっても、むし返せない。
- 裁判を進めやすくするルールは、特許法から借りている。
※ お金をはらってもらえるのは、相手に「わざと」か「不注意」があった場合です。また、どのものさしも、使える場面や条件が条文で決まっています。ものさし③でも、名前にお客さんを引きつける力がまったくなく、損がないことがはっきりしている場合は、はらってもらえないことがあります。正確には条件があります(→レベル3)。
LEVEL 2条文の骨格
第38条は6つの項でできている
商標法第38条の見出しは「損害の額の推定等」です。損害賠償を請求する根拠そのものは民法の不法行為の規定で、商標法第38条は、そのうち「損害の額」の証明を助ける規定です。まず全体の形を見ます。
図は左右にスクロールできます。
- 青緑の枠:損害の額を出す「道具」(第1項・第2項・第3項)
- 赤の枠:損害の額を出す「道具」のうち商標法だけにあるもの(第5項)
- 藍の枠:道具を使うときの補助ルール(第4項・第6項)
- 灰色の矢印:どの項を補っているか
【図2】商標法第38条の構造。条文を整理して本記事作成者が図にしたもの。矢印は「どの項を補っているか」を示します。
| 項 | 役割 | 条文の結びの言葉 |
|---|---|---|
| 第1項 | 侵害品の譲渡数量をもとに、①販売できたはずの利益(第1号)と ②使用料相当額(第2号)の合計額を損害の額とする | 損害の額とすることができる |
| 第2項 | 侵害者が侵害の行為により受けた利益の額を、損害の額と推定する | 損害の額と推定する |
| 第3項 | 登録商標の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額(本記事では「使用料相当額」と呼びます。条文上の用語ではありません)を請求できる | その賠償を請求することができる |
| 第4項 | 使用料相当額(第1項第2号・第3項)の認定で、侵害があったことを前提として合意するとしたならば得ることとなる対価を考慮できる | 考慮することができる |
| 第5項 | 商標権の取得及び維持に通常要する費用に相当する額を損害の額とする(商標法固有) | 損害の額とすることができる |
| 第6項 | 第3項・第5項の額を超える請求を妨げない。侵害者に故意又は重大な過失がなかったときは裁判所が参酌できる | 妨げない/ 参酌することができる |
〔表2〕商標法第38条の項ごとの役割。出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
第1項 ― 「売れたはずの利益」+「使用料相当額」
商標権者又は専用使用権者が故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した商品を譲渡したときは、次の各号に掲げる額の合計額を、商標権者又は専用使用権者が受けた損害の額とすることができる。
第1号
商標権者又は専用使用権者がその侵害の行為がなければ販売することができた商品の単位数量当たりの利益の額に、自己の商標権又は専用使用権を侵害した者が譲渡した商品の数量(次号において「譲渡数量」という。)のうち当該商標権者又は専用使用権者の使用の能力に応じた数量(同号において「使用相応数量」という。)を超えない部分(その全部又は一部に相当する数量を当該商標権者又は専用使用権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量(同号において「特定数量」という。)を控除した数量)を乗じて得た額
第2号
譲渡数量のうち使用相応数量を超える数量又は特定数量がある場合(商標権者又は専用使用権者が、当該商標権者の商標権についての専用使用権の設定若しくは通常使用権の許諾又は当該専用使用権者の専用使用権についての通常使用権の許諾をし得たと認められない場合を除く。)におけるこれらの数量に応じた当該商標権又は専用使用権に係る登録商標の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額
| 部品 | 文言 | 意味 |
|---|---|---|
| だれが | 商標権者又は専用使用権者 | 通常使用権者は主語に入っていない |
| だれに | 故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者 | 「わざと」か「不注意」があった侵害者 |
| どんなとき | その侵害の行為を組成した商品を譲渡したとき | 侵害品が譲渡された場面。条文の文言は「商品」 |
| 譲渡数量 | 侵害した者が譲渡した商品の数量 | 計算の出発点になる数 |
| 使用相応数量 | 使用の能力に応じた数量 | 権利者が自分で売れたはずの上限。特許法の「実施相応数量」に当たる言葉 |
| 特定数量 | 販売することができないとする事情に相当する数量 | 権利者が売れなかったはずの分。第1号の計算から引く |
| どうなる | 各号に掲げる額の合計額を損害の額とすることができる | 第1号の額+第2号の額 |
〔表3〕商標法第38条第1項の部品分解。
flowchart TB
A["侵害者の譲渡数量"] --> B{"使用相応数量を
こえる部分があるか"}
B -- "こえない部分" --> C{"販売できない事情
(特定数量)があるか"}
C -- "ある" --> E["第1号
単位数量当たりの利益 ×
(特定数量を控除した数量)"]
C -- "ない" --> D["第1号
単位数量当たりの利益 × その数量"]
B -- "こえる部分" --> F{"使用権の設定・許諾を
し得たと認められるか"}
E --> G["特定数量の部分"]
G --> F
F -- "認められる" --> H["第2号
その数量に応じた使用料相当額"]
F -- "認められない" --> I["第2号の額には入らない"]
D --> J["第1号の額 + 第2号の額 = 損害の額とすることができる"]
E --> J
H --> J
style J fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
style I fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F
図は左右にスクロールできます。
- 緑の箱:損害の額に算入できる結論
- 赤の箱:損害の額に算入できない結論
【図3】商標法第38条第1項の計算の流れ。条文を整理して本記事作成者がフロー化したもの。
仮の数字で計算してみる
次の数字は、しくみを説明するためだけの説明用の仮の数字です。実際の事件の金額や相場を示すものではありません。
図は左右にスクロールできます。
- 青緑の帯:第1号の対象になる数量(500個)
- 赤の帯:特定数量(100個)。第1号の計算から引き、第2号の対象にまわる
- 藍の帯:使用相応数量をこえる数量(400個)。第2号の対象
- 橙の枠:第1項の額(第1号の額+第2号の額)
- 個数・金額:すべて説明用の仮の数字。実際の事件の金額や相場ではありません
【図4】商標法第38条第1項の計算例。すべて説明用の仮の数字(単位数量当たりの利益100円、使用料相当額1個10円と仮定)で、本記事作成者が作った模式図。
| ルート | 仮の前提 | 計算 | 仮の結果 |
|---|---|---|---|
| 第1項 | 譲渡数量1,000個、使用相応数量600個、特定数量100個、単位数量当たりの利益100円、使用料相当額1個10円 | 100円×(600−100)個 + 10円×(400+100)個 | 55,000円 |
| 第2項 | 侵害者の利益 1個80円 | 80円×1,000個(推定) | 80,000円(侵害者の反証で覆ることがある) |
| 第3項 | 使用料相当額 1個10円 | 10円×1,000個 | 10,000円 |
| 第5項 | 取得及び維持に通常要する費用に相当する額 | 数量とは関係なく定まる | (金額は本記事では示しません) |
〔表4〕同じ事例を4つのルートで計算した場合の比較。金額はすべて説明用の仮の数字で、どのルートが有利かは事案によります。
第2項〜第6項の原文
商標権者又は専用使用権者が故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、商標権者又は専用使用権者が受けた損害の額と推定する。
第3項
商標権者又は専用使用権者は、故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対し、その登録商標の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
第4項
裁判所は、第一項第二号及び前項に規定する登録商標の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額を認定するに当たつては、商標権者又は専用使用権者が、自己の商標権又は専用使用権に係る登録商標の使用の対価について、当該商標権又は専用使用権の侵害があつたことを前提として当該商標権又は専用使用権を侵害した者との間で合意をするとしたならば、当該商標権者又は専用使用権者が得ることとなるその対価を考慮することができる。
商標権者又は専用使用権者が故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その侵害が指定商品又は指定役務についての登録商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。第五十条において同じ。)の使用によるものであるときは、その商標権の取得及び維持に通常要する費用に相当する額を、商標権者又は専用使用権者が受けた損害の額とすることができる。
第6項
第三項及び前項の規定は、これらの規定に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、商標権又は専用使用権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。
第38条の2 ― 決着した侵害訴訟を、再審でむし返せない
商標権若しくは専用使用権の侵害又は第十三条の二第一項(第六十八条第一項において準用する場合を含む。)に規定する金銭の支払の請求に係る訴訟の終局判決が確定した後に、次に掲げる審決又は決定が確定したときは、当該訴訟の当事者であつた者は、当該終局判決に対する再審の訴え(当該訴訟を本案とする仮差押命令事件の債権者に対する損害賠償の請求を目的とする訴え並びに当該訴訟を本案とする仮処分命令事件の債権者に対する損害賠償及び不当利得返還の請求を目的とする訴えを含む。)においては、当該審決又は決定が確定したことを主張することができない。
第1号
当該商標登録を無効にすべき旨の審決
第2号
当該商標登録を取り消すべき旨の決定
| 部品 | 文言 | 意味 |
|---|---|---|
| どの訴訟 | 商標権若しくは専用使用権の侵害に係る訴訟/第13条の2第1項に規定する金銭の支払の請求に係る訴訟 | 侵害訴訟と、設定の登録前の金銭的請求権の訴訟 |
| いつ | 終局判決が確定した後に、審決又は決定が確定したとき | 順番が大事。判決の確定が先、審決等の確定が後 |
| 何が | 第1号 無効にすべき旨の審決/第2号 取り消すべき旨の決定 | 第2号の「決定」は、登録異議の申立てについての取消決定(商標法第43条の3第2項)の文言と一致 |
| だれが | 当該訴訟の当事者であった者 | 原告・被告の双方を含む書き方 |
| どうなる | 再審の訴えにおいては、審決又は決定が確定したことを主張することができない | 括弧書で、仮差押え・仮処分に関する一定の訴えも含まれる |
〔表5〕商標法第38条の2の部品分解。
flowchart LR A["侵害訴訟
終局判決"] --> B["判決が確定"] B --> C["その後に
無効にすべき旨の審決
または取消決定が確定"] C --> D{"当事者であった者が
再審の訴えを起こす"} D --> E["審決・決定が確定したことを
主張することができない"] style E fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F
図は左右にスクロールできます。
【図5】商標法第38条の2が働く時間の順番。条文を整理して本記事作成者がフロー化したもの。
第39条 ― 特許法のルールを借りる
特許法第百三条(過失の推定)、第百四条の二(具体的態様の明示義務)、第百四条の三第一項及び第二項(特許権者等の権利行使の制限)、第百五条(書類の提出等)、第百五条の二の十二から第百五条の六まで(損害計算のための鑑定、相当な損害額の認定、秘密保持命令、秘密保持命令の取消し及び訴訟記録の閲覧等の請求の通知等)並びに第百六条(信用回復の措置)の規定は、商標権又は専用使用権の侵害に準用する。
「準用する」とは、ほかの法律の規定を、必要な読みかえをして同じように当てはめることです。ここでは、特許法の「特許権」を「商標権」に、「専用実施権」を「専用使用権」に置きかえて読むことになります。
- 商標法第38条は、損害の「額」の証明を助ける規定。第1項(販売できた利益+使用料相当額の合計)、第2項(侵害者利益の推定)、第3項(使用料相当額)、第5項(取得及び維持に通常要する費用相当額)の4つの道具がある。
- 第4項は使用料相当額の認定の考慮要素、第6項は第3項・第5項の額を超える請求と軽過失の参酌。
- 第38条の2は、侵害訴訟等の判決確定後に無効審決・取消決定が確定しても、再審の訴えでそれを主張できないとする規定。
- 第39条は、特許法第103条、第104条の2、第104条の3第1項・第2項、第105条、第105条の2の12〜第105条の6、第106条を準用する。
LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方
1. 特許法第102条との項ごとの対応
商標法第38条は、特許法第102条に対応する規定です。特許法第102条は全5項、商標法第38条は全6項で、商標法には第5項が1つ多く入っているため、最後の項の番号がずれます。
| 内容 | 特許法第102条 | 商標法第38条 | 文言のちがい |
|---|---|---|---|
| 販売できた利益+相当額の合計 | 第1項(第1号・第2号) | 第1項(第1号・第2号) | 「物」→「商品」、「実施の能力」→「使用の能力」、「実施相応数量」→「使用相応数量」。「特定数量」は同じ |
| 侵害者利益の推定 | 第2項 | 第2項 | 主体・権利の名称のみ |
| 相当額の請求 | 第3項(特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額) | 第3項(登録商標の使用に対し受けるべき金銭の額) | 「実施」→「使用」 |
| 相当額の認定の考慮要素 | 第4項 | 第4項 | 同旨 |
| 取得及び維持に通常要する費用相当額 | なし | 第5項 | 商標法固有 |
| 超える請求を妨げない・軽過失の参酌 | 第5項(第三項の規定は) | 第6項(第三項及び前項の規定は) | 商標法は第5項の額も対象に含む |
〔表6〕特許法第102条と商標法第38条の項ごとの対応。出典:e-Gov法令検索(特許法=法令ID 334AC0000000121、商標法=法令ID 334AC0000000127)、2026年9月参照。
2. 第1項・第4項 ― 令和元年法律第3号による改正
第1項が「第1号の額+第2号の額の合計額」という形になり、第4項(考慮要素)が置かれたのは、令和元年法律第3号(特許法等の一部を改正する法律、令和元年5月17日公布)による改正です。特許庁の「令和元年法律改正(令和元年法律第3号)解説書」第1部第1章「損害賠償額算定の見直し」は、特許法第102条について次の趣旨を説明しています。
| 項目 | 解説書の説明(本記事作成者による要約) |
|---|---|
| 改正前の問題 | 改正前の第1項では、権利者の能力を超える部分や「販売することができないとする事情」に当たる部分について、相当額の賠償が認められるかが争われ、裁判例ではこれを否定する傾向が強くなっていた、と説明しています。 |
| 第1項第1号 | 販売数量の減少による逸失利益に当たる部分、と説明しています。 |
| 第1項第2号 | ライセンスの機会の喪失による逸失利益に当たる部分で、許諾をし得たと認められない場合は除かれる、と説明しています。 |
| 第4項 | 侵害があったことを前提として交渉した場合に決まるであろう対価を考慮できる旨を明記したもの、と説明しています。 |
| 他法への波及 | 産業財産権四法で統一されていることが望ましいとして、実用新案法・意匠法・商標法でも同旨の改正をした、と説明しています。 |
〔表7〕令和元年法律改正解説書の説明の要約。出典:特許庁「令和元年法律改正(令和元年法律第3号)解説書」第1部第1章(特許庁ウェブサイト、ページ更新日2020年5月12日)、2026年9月参照。逐条解説・改正解説書は立法担当者の説明であり、条文解釈の確定根拠ではありません。
損害の額とすることができるで、「推定する」と書かれているのは第2項だけです。第1項でも、
販売することができないとする事情に当たる数量(特定数量)は第1号の計算から控除されます。この事情をだれが主張立証するかは条文に明記されておらず、解釈・裁判例の問題です(本記事では立ち入りません)。
3. 第5項 ― 取得及び維持に通常要する費用に相当する額(商標法固有)
第5項は、特許法第102条・実用新案法第29条・意匠法第39条に対応する項がない、商標法固有の規定です。要件を条文から分解します。
| 要件・効果 | 条文の文言 | 注意点(条文上の帰結) |
|---|---|---|
| 主体 | 商標権者又は専用使用権者 | 第1項〜第3項と同じ |
| 主観的要件 | 故意又は過失により侵害した者 | 過失は商標法第39条が準用する特許法第103条で推定される |
| 侵害の態様 | その侵害が指定商品又は指定役務についての登録商標の使用によるものであるとき | 登録商標(社会通念上同一と認められる商標を含む)を、指定商品・指定役務に使用する侵害に限られる。類似の範囲(商標法第37条第1号)の侵害は、文言上この項の対象に入らない |
| 効果 | その商標権の取得及び維持に通常要する費用に相当する額を、損害の額とすることができる | 譲渡数量や利益率の立証を要しない形の道具 |
| 上限か | 第6項:これらの規定に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない | 第5項の額は上限ではない。軽過失の参酌の対象にもなる |
〔表8〕商標法第38条第5項の要件と効果。条文を本記事作成者が整理したもの。
第五十条において同じ。とあります。不使用による取消審判(講学上・実務上「不使用取消審判」と呼ばれます)の商標法第50条は、この括弧書を受けて読むことになります。括弧書が挙げる例は、①書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、②平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、③外観において同視される図形からなる商標、④その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標、です。
逐条解説〔第22版〕商標法第38条の解説1689頁〜1690頁。本項を追加した改正法は青本掲記の改正沿革により平成28年法律第108号。
4. 第3項と「損害不発生の抗弁」 ― 小僧寿し事件(通称)
第3項は、侵害と故意又は過失があれば、使用料相当額を損害の額として請求できるとする規定です。では、侵害者は「損害はそもそも発生していない」と主張して、賠償を免れることができるでしょうか。
この点を判断したのが、最高裁判所第三小法廷 平成9年3月11日判決(平成6年(オ)第1102号、民集51巻3号1055頁。通称「小僧寿し事件」。通称であり判決文上の名称ではありません)です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 裁判要旨(四) | 商標権者からの商標法三八条二項に基づく損害賠償請求に対して、侵害者は、損害の発生があり得ないことを抗弁として主張立証して、損害賠償の責めを免れることができる。(裁判所ウェブサイト掲載の裁判要旨) |
| 判決理由の一般論 | 判決は、商標権は特許権や実用新案権等のようにそれ自体が財産的価値を有するものではないとしたうえで、登録商標に類似する標章を第三者が商標として使用した場合であっても、当該登録商標に顧客吸引力が全く認められず、登録商標に類似する標章を使用することが第三者の商品の売上げに全く寄与していないことが明らかなときは、得べかりし利益としての実施料相当額の損害も生じていないというべきであると述べています。 |
| 項番号の注意 | 判決当時の「商標法38条2項」は、使用料相当額(判決文の表現では「実施料相当額」)の請求の規定です。内容からみて現行の商標法第38条第3項に当たります(本記事作成者による対応付け。判決文に「現行第3項」との記載があるわけではありません)。 |
| 射程 | 判旨は、顧客吸引力が「全く」認められず、売上げに「全く」寄与していないことが「明らか」な場合についてのものです。顧客吸引力が小さいというだけで賠償を免れるとまで述べたものではありません。 |
| 同判決のほかの要旨 | 商標法第26条第1項第1号の「自己の名称」や商標の類否に関する判示を含みます(→関連記事 商標法第26条、商標法第4条第1項第11号)。 |
〔表9〕最高裁判所第三小法廷 平成9年3月11日判決(平成6年(オ)第1102号)の整理。出典:裁判所ウェブサイト 裁判例結果詳細および判決全文、2026年9月参照。
flowchart TB A["商標権者:第3項に基づき
使用料相当額を請求"] --> B["商標権者が主張立証
侵害の事実・受けるべき金銭の額"] B --> C{"侵害者が
損害の発生があり得ないことを
抗弁として主張立証したか"} C -- "できた
顧客吸引力が全くなく
売上げに全く寄与しないことが明らか" --> E["損害賠償の責めを免れる"] C -- "できない" --> D["使用料相当額の賠償"] style D fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style E fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F
図は左右にスクロールできます。
- 緑の箱:使用料相当額の賠償が認められる結論
- 赤の箱:賠償が認められない結論(侵害者が責めを免れる)
【図6】損害不発生の抗弁の位置づけ。最高裁判所第三小法廷 平成9年3月11日判決の裁判要旨・判決理由をもとに本記事作成者がフロー化したもの。
損害の発生があり得ないことです。「不使用」という事実だけで当然に免責されるとは述べていません。判決理由のあてはめでは、登録商標の顧客吸引力や、侵害者の標章の使用が売上げに寄与しているかが検討されています。不使用の事実がこの判断にどう影響するかは事案ごとの評価の問題で、判旨を超えて一般化しないよう注意が必要です。
5. 4つのルートの比較と選び方
| 第1項 | 第2項 | 第3項 | 第5項 | |
|---|---|---|---|---|
| 算定の基礎 | 譲渡数量 × 権利者の単位数量当たりの利益 + 使用料相当額 | 侵害者が受けた利益の額 | 使用料相当額 | 取得及び維持に通常要する費用相当額 |
| 条文の結び | 損害の額とすることができる | 損害の額と推定する | 請求することができる | 損害の額とすることができる |
| 場面の限定 | 侵害の行為を組成した商品を譲渡したとき | 侵害の行為により利益を受けているとき | (条文上の場面の限定なし) | 指定商品・指定役務についての登録商標(社会通念上同一を含む)の使用による侵害 |
| 減額につながる事情 | 使用の能力、販売することができないとする事情(第1号)、許諾をし得たと認められない場合(第2号) | 推定を覆す事情 | 損害不発生の抗弁(上記最高裁判決) | (条文上の定めなし) |
| 第4項(考慮要素) | 第2号の額に適用 | ― | 適用 | ― |
| 第6項(超える請求・軽過失の参酌) | 対象外 | 対象外 | 対象 | 対象 |
| 特許法の対応項 | 特許法第102条第1項 | 同第2項 | 同第3項 | なし |
〔表10〕損害額算定の4ルート比較表。条文を本記事作成者が整理したもの。民法の原則どおりに実際の損害額を立証して請求する道が別にあることは、第6項の超える損害の賠償の請求を妨げない
という文言からも分かります。
flowchart TB S["商標権侵害+故意又は過失
(過失は推定)"] --> Q1{"侵害品の譲渡数量と
自分の単位利益を示せるか"} Q1 -- "はい" --> R1["第1項
販売できた利益+使用料相当額"] Q1 -- "いいえ" --> Q2{"侵害者の利益の額を
示せるか"} Q2 -- "はい" --> R2["第2項
侵害者利益を損害の額と推定"] Q2 -- "いいえ" --> Q3{"登録商標と同一
(社会通念上同一を含む)を
指定商品・役務に使用する侵害か"} Q3 -- "はい" --> R5["第3項 または 第5項"] Q3 -- "いいえ(類似範囲)" --> R3["第3項
使用料相当額"] style R1 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style R2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style R3 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style R5 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
図は左右にスクロールできます。
- 緑の箱:その場面で使える算定の規定(この図での結論)
【図7】各項の適用場面を整理するための分岐図。条文の要件を本記事作成者がフロー化した学習用のもので、実務上の請求の順序や優劣を示すものではありません(複数の項を選択的・予備的に主張することの可否など、訴訟上の扱いには立ち入りません)。
6. 第38条の2 ― 特許法第104条の4との比較
商標法第38条の2は、特許法第104条の4(主張の制限)に対応する規定です。商標法第39条の準用列挙に特許法第104条の4は入っておらず、商標法は自前の条文を置いています。
| 特許法第104条の4 | 商標法第38条の2 | |
|---|---|---|
| 対象となる訴訟 | 特許権若しくは専用実施権の侵害、又は特許法第65条第1項若しくは第184条の10第1項に規定する補償金の支払の請求に係る訴訟 | 商標権若しくは専用使用権の侵害、又は商標法第13条の2第1項(商標法第68条第1項において準用する場合を含む。)に規定する金銭の支払の請求に係る訴訟 |
| 第1号 | 当該特許を取り消すべき旨の決定又は無効にすべき旨の審決 | 当該商標登録を無効にすべき旨の審決 |
| 第2号 | 当該特許権の存続期間の延長登録を無効にすべき旨の審決 | 当該商標登録を取り消すべき旨の決定 |
| 第3号 | 訂正をすべき旨の決定又は審決であって政令で定めるもの | なし(商標法に訂正の制度がない) |
| 効果 | 当該訴訟の当事者であった者は、終局判決に対する再審の訴え(括弧書の訴えを含む)において、審決・決定が確定したことを主張することができない | |
〔表11〕特許法第104条の4と商標法第38条の2の比較。出典:e-Gov法令検索、2026年9月参照。
特許庁「平成23年法律改正(平成23年法律第63号)解説書」第4章「再審の訴え等における主張の制限」(以下「平成23年改正解説書」)も同旨で、さらに出発点として、商標法第46条の2第1項により無効審決確定の効果が遡及し、商標法第43条の3第3項により取消決定確定の効果も遡及するため、商標権侵害訴訟等で認容判決が確定した後にこれらが確定すると、民事訴訟法第338条第1項第8号の再審事由に該当する可能性がある、と説明しています。
逐条解説〔第22版〕商標法第38条の2の解説1691頁。平成23年改正解説書 第4章 91頁〜92頁。
平成23年改正解説書 第4章 92頁、逐条解説〔第22版〕商標法第38条の2の解説1691頁。
7. 第39条 ― 準用されるもの・されないもの
図は左右にスクロールできます。
【図8】商標法第39条が準用する特許法の規定と、列挙にない規定。商標法第39条および特許法第4章第2節の条見出し(e-Gov法令検索、2026年9月参照)をもとに本記事作成者が作成。
| 特許法の規定 | 条見出し | 商標法第39条 | 商標法での読み方・注意 |
|---|---|---|---|
| 第103条 | 過失の推定 | 準用 | 他人の商標権又は専用使用権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があったものと推定される。第38条各項の「故意又は過失」の立証を助ける |
| 第104条 | 生産方法の推定 | 列挙なし | 物を生産する方法の発明についての規定 |
| 第104条の2 | 具体的態様の明示義務 | 準用 | 侵害を否認する相手方は、自己の行為の具体的態様を明らかにする |
| 第104条の3第1項・第2項 | 特許権者等の権利行使の制限 | 準用 | 商標登録が無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、権利を行使できない(講学上・実務上「無効の抗弁」と呼ばれます)。第2項は審理を不当に遅延させる目的の主張の却下 |
| 第104条の3第3項 | 同上 | 列挙なし | 特許法第123条第2項との関係を定める項。商標法第39条は「第一項及び第二項」と明記 |
| 第104条の4 | 主張の制限 | 列挙なし | 商標法第38条の2に自前の規定 |
| 第105条 | 書類の提出等 | 準用 | 侵害行為の立証・損害の計算のための書類提出命令等 |
| 第105条の2〜第105条の2の10 | 査証(査証人に対する査証の命令 ほか) | 列挙なし | 令和元年法律第3号で特許法に創設された制度(同改正解説書 第1部第2章「査証制度の創設」) |
| 第105条の2の11 | 第三者の意見 | 列挙なし | 実用新案法第30条は準用している(下の表13) |
| 第105条の2の12 | 損害計算のための鑑定 | 準用 | 列挙は「第百五条の二の十二から第百五条の六まで」 |
| 第105条の3 | 相当な損害額の認定 | 準用 | |
| 第105条の4 | 秘密保持命令 | 準用 | |
| 第105条の5 | 秘密保持命令の取消し | 準用 | |
| 第105条の6 | 訴訟記録の閲覧等の請求の通知等 | 準用 | |
| 第105条の7 | 当事者尋問等の公開停止 | 列挙なし | 実用新案法第30条は準用している |
| 第106条 | 信用回復の措置 | 準用 | 業務上の信用を害した者に対し、裁判所が信用を回復するのに必要な措置を命ずることができる |
〔表12〕商標法第39条の準用の範囲。出典:e-Gov法令検索(商標法第39条、特許法第4章第2節)、2026年9月参照。秘密保持命令に違反した場合の罰則は別の条文です(本記事の範囲外)。
除斥期間経過後の「無効の抗弁」 ― エマックス事件(通称)の要点
商標法第47条第1項の期間(設定の登録の日から5年)が経過して無効審判を請求できなくなった後に、同じ無効理由を商標法第39条が準用する特許法第104条の3第1項の抗弁として主張できるか。最高裁判所第三小法廷 平成29年2月28日判決(平成27年(受)第1876号、民集71巻2号221頁。通称「エマックス事件」)は、商標法第4条第1項第10号該当を理由とする場合について、①不正競争の目的で受けた登録である場合を除き、この抗弁の主張は許されない、②ただし、自己の周知商標との関係で、商標権の行使が権利の濫用に当たるとの抗弁は、5年経過後でも主張が許される、と判断しています。要旨の表と相関図は、関連記事「商標法第47条 除斥期間」にあります。
8. 四法比較
| 特許法 | 実用新案法 | 意匠法 | 商標法 | |
|---|---|---|---|---|
| 損害の額の推定等 | 特許法第102条(全5項) | 実用新案法第29条(全5項) | 意匠法第39条(全5項) | 商標法第38条(全6項) |
| 取得及び維持に通常要する費用相当額 | なし | なし | なし | 第38条第5項 |
| 超える請求・軽過失の参酌 | 第102条第5項(第3項が対象) | 第29条第5項(第3項が対象) | 第39条第5項(第3項が対象) | 第38条第6項(第3項・第5項が対象) |
| 過失の推定 | 特許法第103条 | 実用新案法第30条の準用列挙に特許法第103条は含まれない | 意匠法第40条(ただし書:秘密意匠の例外) | 商標法第39条で特許法第103条を準用 |
| 主張の制限 | 特許法第104条の4 | 実用新案法第30条で準用(読替えあり) | 意匠法第41条で準用 | 商標法第38条の2(自前の規定) |
| 権利行使の制限(特許法第104条の3) | 第1項〜第3項 | 準用(第104条の2から第105条まで) | 準用(第104条の2から第105条まで) | 第1項・第2項のみ準用 |
| 第三者の意見(特許法第105条の2の11) | あり | 準用 | 列挙なし | 列挙なし |
| 当事者尋問等の公開停止(特許法第105条の7) | あり | 準用 | 列挙なし | 列挙なし |
| 信用回復の措置(特許法第106条) | あり | 準用 | 準用 | 準用 |
〔表13〕損害額の推定・侵害訴訟の特則の四法比較。出典:e-Gov法令検索(特許法第102条〜第106条、実用新案法第29条・第30条、意匠法第39条〜第41条、商標法第38条〜第39条)、2026年9月参照。実用新案法・意匠法の詳細は各シリーズの記事を参照してください。
9. 拒絶・異議・無効との関係
商標法第38条・第38条の2・第39条は、侵害訴訟における規定です。商標法第15条(拒絶理由)、第43条の2(登録異議の申立ての理由)、第46条第1項(無効理由)のいずれにも関係しません。第47条(除斥期間)とは、上記7のとおり、第39条が準用する特許法第104条の3第1項の抗弁の場面で接点があります。
試験での問われ方
| 形式 | 問われうる切り口(本記事作成者の整理。出題を予測するものではありません) |
|---|---|
| 短答式 | 第38条各項の要件の正誤(第5項の「指定商品又は指定役務についての登録商標の使用」の限定、第6項の対象が第3項・第5項であること)、損害不発生の抗弁の内容、第38条の2の各号、第39条の準用範囲(特許法第104条の3第3項や第105条の7が列挙にないこと) |
| 論文式 | 侵害事例で、差止請求(商標法第36条)とあわせて損害賠償請求の根拠・過失の推定・損害額の算定規定・相手方の抗弁を整理して述べる形 |
| 口述 | 条文の所在と文言(「第38条第5項は何を定めていますか」「過失の推定の根拠条文は」等)を順に答える形 |
〔表14〕試験形式ごとの切り口の整理。
- 商標法第38条は特許法第102条に対応するが、第5項(取得及び維持に通常要する費用相当額)が商標法固有で、最終項が第6項にずれる。第6項の対象は第3項と第5項。
- 第5項は、登録商標(社会通念上同一と認められる商標を含む)を指定商品・指定役務に使用する侵害に限られる。「社会通念上同一」の括弧書は第38条第5項にあり、第50条に及ぶ。
- 最高裁判所第三小法廷 平成9年3月11日判決(平成6年(オ)第1102号):使用料相当額の請求に対し、侵害者は損害の発生があり得ないことを抗弁として主張立証して賠償の責めを免れることができる。判決当時の第38条第2項は、現行の第3項に当たる内容。
- 第38条の2の各号は、無効にすべき旨の審決と、取り消すべき旨の決定。取消審判の審決は挙がっていない。
- 第39条は、特許法第104条の3のうち第1項・第2項のみを準用し、査証(特許法第105条の2〜第105条の2の10)、第三者の意見(同第105条の2の11)、当事者尋問等の公開停止(同第105条の7)は列挙にない。
