小学生でも分かる実用新案法 / B. 出願・登録・評価の手続 #13
実用新案は、審査官が中身を調べずに登録されます。だから登録のあとで「請求の範囲が広すぎた」「書きまちがえた」と気づくことがあります。そこで実用新案法は、登録のあとに明細書・実用新案登録請求の範囲・図面を「訂正」する道を用意しました。ただし特許の訂正審判とはちがい、中身を直す訂正は1回限りで、できる時期も限られています。一方で、請求項を削除するだけの訂正は、回数の制限なくできます。この記事では、第14条の2(全13項)と第14条の3(訂正に係る補正命令)を、特許法第126条(訂正審判)・第134条の2(訂正の請求)と対比しながら整理します。
レベル2条文の骨格 ― 第14条の2の13項を「時期・目的・範囲・手続・効果」に分けて読む
レベル3要件・例外・試験での問われ方 ― 第1項訂正と第7項訂正の分岐図、特許法第126条・第134条の2との対比
LEVEL 1イメージでつかむ
実用新案は「中身をチェックせずに登録」される
学校で自由研究のノートを提出するところを思いうかべてください。特許は、先生(審査官)がノートの中身をしっかり読んでから「合格」を出します。でも実用新案は、名前や書き方などの形だけをたしかめて、中身は読まずにすぐ「登録」します。
そのため、登録されたあとで「書きたかったことより広く書きすぎた」「字をまちがえた」と気づくことがあります。そこで、登録のあとにノートを直せるしくみが訂正(ていせい)です。
「書き直し券」は1枚だけ。「ページを破る」のは何回でも
ただし、何回も何回も書き直せるとしたら、まわりの人は「このノートはいったいどれが本当なの?」とこまってしまいます。だから実用新案法は、こう決めました。
- 中身を直す訂正(せまくする、まちがいを直す、分かりにくいところをはっきりさせる)は、「書き直し券」1枚だけ。しかも使える時期が決まっている。
- 請求項(ノートの「主張のページ」)をまるごと消すだけの訂正は、券なしで何回でもできる。ただし例外あり。
図は左右にスクロールできます。
中身を直す訂正(第14条の2第1項)
請求項を消すだけの訂正(同条第7項)
目的/回数/時期左右で同じ見出しをそろえて比べる
【図1】2つの訂正を左右同じ形で比べた図。「中身を直す訂正」(第14条の2第1項)は1回限りで時期の制限つき、「請求項を消すだけの訂正」(同条第7項)は回数の制限なし。※説明の都合上、左の「時期」は第1項第1号(評価書の謄本の送達から2月)だけを書き、第2号(無効審判の最初の答弁書提出期間)は省略した(→【図2】)。※どちらも訂正書を提出して行い(第9項)、権利が消えたあとでもできる(第8項・例外あり)。どちらにも例外がある(→レベル2・レベル3)。
なぜ「せまくする」方向にしか直せないの?
訂正でノートの内容を広げることはできません。もし広げられたら、登録のときには書いていなかったことまで、あとから「これも私のもの」と言えてしまい、まわりの人が不意打ちをくらうからです。「せまくする」「まちがいを直す」「はっきりさせる」の3つ(+引用関係をほどくこと)だけが、直してよい目的です。
- 実用新案は中身の審査なしで登録されるので、登録のあとに「訂正」で直せる。
- 中身を直す訂正は「1回だけ」で、できる時期も決まっている(第14条の2第1項)。
- 請求項を消すだけの訂正は、回数の制限なくできる(第14条の2第7項)。
- 広げる方向には直せない。「せまくする・まちがいを直す・はっきりさせる」だけ。
※「いつまでにできるか」「どこまで直せるか」「例外」は、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。
LEVEL 2条文の骨格
第14条の2は全13項。5つのかたまりに分けて読む
第14条の2は項が13もあり、一気に読むと迷子になります。「時期」「目的・範囲」「請求項削除の訂正」「手続」「効果・準用」の5つのかたまりに分けると見通しがよくなります。
| かたまり | 項 | 内容(要旨) |
|---|---|---|
| A. 中身を直す訂正の「回数・時期」 | 第1項 | 実用新案権者は、明細書・実用新案登録請求の範囲・図面の訂正を一回に限りできる。ただし第1号・第2号の場合(期間経過後)を除く |
| 第5項 | 第1項第1号の期間に特許法第4条(遠隔・交通不便の地にある者のための期間延長)を準用 | |
| 第6項 | 責めに帰することができない理由で第1項第1号の期間内に訂正できなかったときの救済(理由がなくなった日から14日〔在外者は2月〕以内、かつ期間経過後6月以内) | |
| B. 中身を直す訂正の「目的・範囲」 | 第2項 | 目的は4つに限る(減縮/誤記の訂正/明瞭でない記載の釈明/引用関係の解消) |
| 第3項 | 願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内(誤記の訂正は「最初に添付した」明細書等の範囲内) | |
| 第4項 | 実質上、請求の範囲を拡張・変更してはならない | |
| C. 請求項削除の訂正 | 第7項 | 第1項の訂正のほか、請求項の削除を目的とするものに限り訂正できる。ただし無効審判で審理終結の通知があった後は不可 |
| D. 手続 | 第9項 | 第1項・第7項の訂正には訂正書を提出 |
| 第10項 | 第1項の訂正では、訂正書に訂正した明細書等を添付 | |
| 第12項 | 訂正があったときは実用新案公報に掲載(第1項訂正は内容を、第7項訂正はその旨を) | |
| E. 効果・準用 | 第8項 | 第1項・第7項の訂正は実用新案権の消滅後もできる。ただし無効審判で無効にされた後は不可 |
| 第11項 | 訂正後の明細書等により出願・設定登録がされたものとみなす(遡及効) | |
| 第13項 | 特許法第127条(専用実施権者等の承諾)・第132条第3項(共有者全員で)を準用 |
〔表1〕実用新案法第14条の2の全13項の構造(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。
A. 中身を直す訂正は「1回限り」、しかも時期が決まっている(第1項)
実用新案権者は、次に掲げる場合を除き、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正を一回に限りすることができる。
一 第十三条第三項の規定による最初の実用新案技術評価書の謄本の送達があつた日から二月を経過したとき。
二 実用新案登録無効審判について、第三十九条第一項の規定により最初に指定された期間を経過したとき。
ポイントは2つです。
- 「一回に限り」。中身を直す訂正は、実用新案権の一生のあいだに1回だけです。
- 「次に掲げる場合を除き」。第1号・第2号のどちらかの期間を過ぎてしまうと、もうできません。第1号は「最初の実用新案技術評価書の謄本の送達から2月」、第2号は「無効審判で最初に指定された答弁書提出期間」です。
第1号の「第十三条第三項」は技術評価書の謄本の送達を定める規定、第2号の「第三十九条第一項」は無効審判の請求書副本の送達と答弁書提出期間の指定を定める規定です。
審判長は、審判の請求があつたときは、請求書の副本を被請求人に送達し、相当の期間を指定して、答弁書を提出する機会を与えなければならない。
%%{init: {"theme":"base","themeVariables":{"doneTaskBkgColor":"#E6F5F3","doneTaskBorderColor":"#1F8A83","critBkgColor":"#FFF3E8","critBorderColor":"#D9782D","taskTextDarkColor":"#22303F","taskTextOutsideColor":"#22303F","sectionBkgColor":"#FFFFFF","altSectionBkgColor":"#F4F1E8","gridColor":"#DCD7CC"}} }%%
gantt
title 中身を直す訂正(第14条の2第1項)ができる期間とできない期間
dateFormat YYYY-MM-DD
axisFormat %m月
todayMarker off
section 第1号
◆ 最初の実用新案技術評価書の謄本の送達(第13条第3項・起算点) :milestone, m1, 2026-04-01, 0d
○ 第1項の訂正ができる 送達の日から2月 :done, a1, 2026-04-01, 2026-06-01
× できない 2月の経過後(第1項第1号) :crit, a2, 2026-06-01, 2026-09-01
section 第2号
◆ 無効審判の請求書副本の送達・答弁書提出期間の指定(第39条第1項・起算点) :milestone, m2, 2026-05-01, 0d
○ 第1項の訂正ができる 最初に指定された答弁書提出期間 :done, b1, 2026-05-01, 2026-06-15
× できない その期間の経過後(第1項第2号) :crit, b2, 2026-06-15, 2026-09-01
図は左右にスクロールできます。
○ 第1項の訂正ができる期間
× できない期間
◆期間の起算点となる出来事
【図2】第14条の2第1項第1号・第2号の期間。どちらか一方でも期間が経過すれば、第1項の訂正はできない。※第2号の期間は審判長が指定する「相当の期間」であり、長さは事案による(図の長さは説明用の例)。※時間軸は縮尺なし。※第5項(特許法第4条の準用)・第6項の救済は第1号の期間にのみ及ぶ(→本文)。(2026年9月時点)
期間を過ぎてしまったときの救済が第5項・第6項です。
特許法第四条の規定は、第一項第一号に規定する期間に準用する。
第一項の訂正をする者がその責めに帰することができない理由により同項第一号に規定する期間を経過するまでにその訂正をすることができないときは、同号の規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から十四日(在外者にあつては、二月)以内でその期間の経過後六月以内にその訂正をすることができる。
どちらも第1号(技術評価書ルート)の期間だけが対象で、第2号(無効審判ルート)には及びません。第2号の期間は審判長が「相当の期間」を指定するものだからと考えられますが、条文上はっきりしているのは「第5項・第6項は第1項第1号の期間についてのみ」という点です。
B. 目的は4つに限られ、広げる方向には直せない(第2項〜第4項)
前項の訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 実用新案登録請求の範囲の減縮
二 誤記の訂正
三 明瞭でない記載の釈明
四 他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。
第一項の訂正は、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面(前項第二号に掲げる事項を目的とする訂正の場合にあつては、願書に最初に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面)に記載した事項の範囲内においてしなければならない。
第一項の訂正は、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものであつてはならない。
| 要件 | 条文 | 内容 | 「範囲内」の基準となる書面 |
|---|---|---|---|
| 目的の制限 | 第2項 | 減縮/誤記の訂正/明瞭でない記載の釈明/引用関係の解消 の4つのみ | ― |
| 新規事項の禁止 | 第3項 | 明細書等に「記載した事項の範囲内」で行う | 原則:願書に添付した明細書等(=登録時のもの) 誤記の訂正(第2項第2号):願書に最初に添付した明細書等 |
| 実質的な拡張・変更の禁止 | 第4項 | 実質上、請求の範囲を拡張・変更するものであってはならない | ― |
〔表2〕第1項の訂正に課される3つの要件(第2項〜第4項)。第3項の「範囲内」は、誤記の訂正のときだけ「最初に添付した」書面が基準になる点に注意。
C. 請求項を消すだけなら、回数制限なし(第7項)
実用新案権者は、第一項の訂正をする場合のほか、請求項の削除を目的とするものに限り、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正をすることができる。ただし、実用新案登録無効審判が特許庁に係属している場合において第四十一条において準用する特許法第百五十六条第一項の規定による通知があつた後(同条第三項の規定による審理の再開がされた場合にあつては、その後更に同条第一項の規定による通知があつた後)は、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正をすることができない。
第7項の本文には「一回に限り」の文言も、第1項第1号・第2号のような期間も書かれていません。つまり請求項の削除を目的とする訂正は、回数・時期の制限なくできるのが原則です(例外あり)。例外がただし書で、無効審判が特許庁に係属していて、特許法第156条第1項(実用新案法第41条で準用)の審理終結の通知があった後は、訂正できません。審理が再開されたときは、再開後にもう一度審理終結の通知があった後、ふたたびできなくなります。
審判長は、特許無効審判以外の審判においては、事件が審決をするのに熟したときは、審理の終結を当事者及び参加人に通知しなければならない。
e-Gov で確認したところ、実用新案法第41条には、特許法第156条第1項中「特許無効審判以外の審判においては、事件が」を「事件が」と読み替える旨の規定があります。したがって実用新案登録無効審判でも「審理終結の通知」がされ、それが第7項ただし書の基準時になります。
D・E. 手続と効果(第8項〜第13項)
第一項及び前項の訂正は、実用新案権の消滅後においても、することができる。ただし、実用新案登録無効審判により無効にされた後は、この限りでない。
第一項又は第七項の訂正をするには、訂正書を提出しなければならない。
第一項の訂正をするときは、訂正書に訂正した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面を添付しなければならない。
第一項又は第七項の訂正があつたときは、その訂正後における明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面により実用新案登録出願及び実用新案権の設定の登録がされたものとみなす。
第一項又は第七項の訂正があつたときは、第一項の訂正にあつては訂正した明細書及び実用新案登録請求の範囲に記載した事項並びに図面の内容を、第七項の訂正にあつてはその旨を、実用新案公報に掲載しなければならない。
特許法第百二十七条及び第百三十二条第三項の規定は、第一項及び第七項の場合に準用する。
flowchart LR
A["実用新案権者が訂正書を提出(第9項)"] --> B{"第1項の訂正か第7項の訂正か"}
B -->|"第1項(中身を直す)"| C["訂正した明細書等を添付(第10項)"]
C -. "記載に不備があるとき" .-> D["特許庁長官の補正命令(第14条の3)"]
C --> E["訂正の内容を実用新案公報に掲載(第12項)"]
D -. "指定期間内に補正" .-> E
D -. "指定期間内に補正しない" .-> N["手続を却下できる(第2条の3)"]
B -->|"第7項(請求項の削除)"| F["訂正した旨を実用新案公報に掲載(第12項)"]
E --> G["訂正後の明細書等で出願・設定登録されたものとみなす(第11項)"]
F --> G
style C fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
style E fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
style F fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F
style G fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F
図は左右にスクロールできます。
第1項の訂正(中身を直す)のルート
第7項の訂正(請求項の削除)のルート
どちらにも共通する効果
必ず行われる手続
場合によって行われる手続(補正命令)
【図3】訂正書の提出から公報掲載・遡及効までの流れ。第14条の3の補正命令は「第1項の訂正に係る訂正書」に限られ、記載が同条各号に当たるときに命ずることができるもの(点線)。
第14条の3:訂正書に対する「補正命令」
特許庁長官は、訂正書(前条第一項の訂正に係るものに限る。)の提出があつた場合において、その訂正書に添付した訂正した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の記載が次の各号のいずれかに該当するときは、相当の期間を指定して、その訂正書に添付した訂正した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面について補正をすべきことを命ずることができる。
一 その訂正書に添付した訂正した実用新案登録請求の範囲に記載されている事項により特定される考案が物品の形状、構造又は組合せに係るものでないとき。
二 その訂正書に添付した訂正した実用新案登録請求の範囲に記載されている事項により特定される考案が第四条の規定により実用新案登録をすることができないものであるとき。
三 その訂正書に添付した訂正した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の記載が第五条第六項第四号又は第六条に規定する要件を満たしていないとき。
四 その訂正書に添付した訂正した明細書、実用新案登録請求の範囲若しくは図面に必要な事項が記載されておらず、又はその記載が著しく不明確であるとき。
| 号 | 補正命令の事由(要旨) | 対応する「基礎的要件」 |
|---|---|---|
| 第1号 | 訂正後の考案が物品の形状、構造又は組合せに係るものでない | 実用新案法第1条・第3条第1項柱書の保護対象 |
| 第2号 | 訂正後の考案が第4条により登録できないもの(公序良俗・公衆衛生) | 実用新案法第4条 |
| 第3号 | 第5条第6項第4号(請求項の記載形式)又は第6条(単一性)の要件を満たさない | 実用新案法第5条第6項第4号、第6条 |
| 第4号 | 必要な事項が記載されておらず、又は記載が著しく不明確 | 実用新案法第6条の2第4号と同趣旨 |
〔表3〕第14条の3各号の補正命令事由。出願時の基礎的要件審査(第6条の2)と同じ種類のチェックを、訂正書に対しても行う構造になっている。「対応する基礎的要件」欄は本記事作成者の整理。
- 第1項の訂正(中身を直す):一回に限り。技術評価書の謄本送達から2月、または無効審判の最初の答弁書提出期間を過ぎるとできない。目的は4つ(第2項)、新規事項禁止(第3項)、実質的拡張・変更禁止(第4項)。
- 第7項の訂正(請求項の削除):回数・時期の制限なし。ただし無効審判の審理終結通知後は不可。
- どちらも訂正書で行い(第9項)、公報に掲載され(第12項)、訂正後の内容で出願・登録がされたものとみなされる(第11項)。権利消滅後もできるが、無効にされた後は不可(第8項)。
- 第14条の3:第1項の訂正に係る訂正書に基礎的要件違反があれば補正命令。
LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方
1. 分岐図:その訂正はどの条文で、できるのか
flowchart TD
S["登録後に明細書等を直したい"] --> Q1{"中身を直す訂正か
(請求項の削除だけが目的ではないか)"}
Q1 -->|"はい(中身を直す)"| P1["第1項の訂正"]
Q1 -->|"いいえ(削除だけが目的)"| P7["第7項の訂正"]
P1 --> Q2{"第1項の訂正をまだしていないか"}
Q2 -->|"はい(していない)"| Q3{"評価書謄本送達から2月も、
無効審判の最初の答弁書提出期間も、
まだ経過していないか"}
Q2 -->|"いいえ(すでにした)"| N1["× 訂正できない(一回に限り)"]
Q3 -->|"はい(経過していない)"| Q5{"目的が第2項の4つのいずれかで、
第3項・第4項も満たすか"}
Q3 -->|"いいえ(経過した)"| Q4{"無効審判の最初の答弁期間は未経過で、
評価書送達後2月について
第5項の延長・第6項の救済に当たるか"}
Q4 -->|"はい(当たる)"| Q5
Q4 -->|"いいえ(当たらない)"| N2["× 訂正できない"]
Q5 -->|"はい(満たす)"| Y1["○ 訂正できる"]
Q5 -->|"いいえ(満たさない)"| N3["× 要件違反。訂正されても無効理由(第37条第1項第7号)"]
P7 --> Q7{"無効審判が特許庁に係属し、
かつ審理終結通知後か
(再開時は再度の終結通知後)"}
Q7 -->|"いいえ"| Y7["○ 訂正できる。回数制限なし"]
Q7 -->|"はい"| N7["× 訂正できない(第7項ただし書)"]
style Y1 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
style Y7 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
style N1 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F
style N2 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F
style N3 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F
style N7 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F
図は左右にスクロールできます。
○ 訂正できる
× 訂正できない・要件違反
はい下へ進む/いいえ右へ出る
【図4】第1項訂正(左のルート)と第7項訂正(右のルート)の分岐図。第8項(権利消滅後も可、無効後は不可)と第13項(承諾・共有者全員)は両方の訂正に共通してかかる。※説明の都合上、第9項〜第12項の手続・効果は【図3】に回した。
2. 第1項の訂正と第7項の訂正の対比
| 項目 | 第1項の訂正(中身を直す) | 第7項の訂正(請求項の削除) |
|---|---|---|
| 目的 | 減縮/誤記の訂正/明瞭でない記載の釈明/引用関係の解消(第2項) | 請求項の削除のみ |
| 回数 | 一回に限り | 制限の定めなし |
| 時期の制限 | 技術評価書謄本送達から2月経過後、または無効審判の最初の答弁書提出期間経過後は不可(第1項第1号・第2号) | 無効審判係属中に審理終結の通知があった後は不可(第7項ただし書) |
| 期間の延長・救済 | 第5項(特許法第4条準用)・第6項(責めに帰することができない理由)。いずれも第1号の期間のみ | ― |
| 新規事項・拡張変更の禁止 | 第3項・第4項 | 条文上の定めなし(削除のみが目的のため) |
| 訂正書への添付 | 訂正した明細書等を添付(第10項) | 添付の定めなし |
| 補正命令(第14条の3) | 対象 | 対象外(「前条第一項の訂正に係るものに限る」) |
| 公報掲載(第12項) | 訂正した明細書等の内容 | 訂正した旨 |
| 権利消滅後(第8項) | できる。ただし無効審判により無効にされた後は不可(共通) | |
| 遡及効(第11項) | 訂正後の明細書等により出願・設定登録がされたものとみなす(共通) | |
| 承諾・共有(第13項) | 特許法第127条(専用実施権者・質権者の承諾)、第132条第3項(共有者全員)を準用(共通) | |
| 要件違反の効果 | 第2項〜第4項違反は無効理由(第37条第1項第7号) | ―(第37条第1項第7号は「第十四条の二第二項から第四項まで」の違反のみ) |
〔表4〕第1項の訂正と第7項の訂正の対比(e-Gov法令検索、2026年9月参照)。
3. 訂正要件違反は無効理由になる(第37条第1項第7号)
実用新案登録が次の各号のいずれかに該当するときは、その実用新案登録を無効にすることについて実用新案登録無効審判を請求することができる。この場合において、二以上の請求項に係るものについては、請求項ごとに請求することができる。
その実用新案登録の願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正が第十四条の二第二項から第四項までの規定に違反してされたとき。
実用新案の訂正には、特許の訂正審判のような「審判官による訂正要件の審理」がありません。回数・時期などの手続要件と基礎的要件を満たせば、訂正の実体的要件を審理せずに訂正が認められ、公報に掲載されます。そのかわり、目的(第2項)・新規事項(第3項)・実質的拡張変更(第4項)に違反した訂正は、あとから無効審判の理由になります。審査基準 第X部第2章も、技術評価書について「新規性、進歩性等の評価に関係しない事項(新規事項の有無(第2条の2第2項)、訂正の要件(第14条の2)等)については、明らかなものであっても評価書に記載しない」としています(審査基準 第X部第2章 4.1(5)、2026年9月参照)。訂正要件の適否を判断する場は、技術評価ではなく無効審判だということです。
なお、第37条第1項第7号が挙げるのは「第二項から第四項まで」の違反であり、第1項の「一回に限り」や時期の制限への違反は含まれていません。回数・時期の違反は、次に示す補正不能な手続の却下として処理されます。
%%{init: {"theme":"base","themeVariables":{"doneTaskBkgColor":"#E6F5F3","doneTaskBorderColor":"#1F8A83","critBkgColor":"#FFF3E8","critBorderColor":"#D9782D","taskTextDarkColor":"#22303F","taskTextOutsideColor":"#22303F","sectionBkgColor":"#FFFFFF","altSectionBkgColor":"#F4F1E8","gridColor":"#DCD7CC"}} }%%
gantt
title 実用新案権の一生と、2つの訂正ができる時期(一例)
dateFormat YYYY-MM-DD
axisFormat %m月
todayMarker off
section 出来事
◆ 出願(基礎的要件の審査のみ) :milestone, e1, 2026-01-01, 0d
◆ 設定の登録(権利の発生) :milestone, e2, 2026-03-01, 0d
◆ 最初の技術評価書の謄本の送達 :milestone, e3, 2026-04-01, 0d
◆ 無効審判の請求 :milestone, e4, 2026-07-01, 0d
◆ 審理終結の通知 :milestone, e5, 2026-10-01, 0d
◆ 無効審決の確定 :milestone, e6, 2026-12-01, 0d
section 第1項の訂正
○ できる 一回に限り :done, a1, 2026-03-01, 2026-06-01
× できない 送達から2月の経過後(第1項第1号) :crit, a2, 2026-06-01, 2026-12-01
section 第7項の訂正
○ できる 回数制限なし :done, b1, 2026-03-01, 2026-10-01
× できない 審理終結の通知の後(第7項ただし書) :crit, b2, 2026-10-01, 2026-12-01
図は左右にスクロールできます。
○ その訂正ができる期間
× できない期間
◆時期の区切りとなる出来事
【図5】権利の一生の中で、第1項訂正・第7項訂正がいつまでできるか。技術評価書の請求や無効審判は必ず起こるとは限らないため、時系列・日付は一例。※時間軸は縮尺なし。※第1項の訂正は、第1項第2号(無効審判の最初の答弁書提出期間の経過)でも終わる。図では第1号(送達から2月)が先に来る例を描いた。※第8項により、権利の消滅後も訂正できる(無効にされた後は不可)。(2026年9月時点)
4. 特許法の訂正審判・訂正の請求との対比
特許権者は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正をすることについて訂正審判を請求することができる。ただし、その訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 特許請求の範囲の減縮
二 誤記又は誤訳の訂正
三 明瞭でない記載の釈明
四 他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。
訂正審判は、特許異議の申立て又は特許無効審判が特許庁に係属した時からその決定又は審決(請求項ごとに申立て又は請求がされた場合にあつては、その全ての決定又は審決)が確定するまでの間は、請求することができない。
特許無効審判の被請求人は、前条第一項若しくは第二項、次条、第百五十三条第二項又は第百六十四条の二第二項の規定により指定された期間内に限り、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正を請求することができる。
| 項目 | 実用新案法第14条の2(訂正) | 特許法第126条(訂正審判) | 特許法第134条の2(訂正の請求) |
|---|---|---|---|
| 性質 | 実用新案権者が訂正書を提出する手続(審判ではない) | 特許権者が請求する審判 | 無効審判の被請求人が審判手続の中で行う請求 |
| 回数 | 中身を直す訂正は一回に限り(第1項)。請求項削除は制限なし(第7項) | 回数制限の定めなし(第126条第1項) | 指定期間ごとに可能(第134条の2第1項) |
| 時期 | 技術評価書謄本送達から2月/無効審判の最初の答弁書提出期間(第1項各号) | 異議申立て・無効審判の係属開始から決定・審決の確定まで請求不可(取消訴訟中も含む。第126条第2項) | 答弁書提出期間等の指定された期間内に限る |
| 目的 | 減縮/誤記の訂正/明瞭でない記載の釈明/引用関係の解消(第2項) | 減縮/誤記又は誤訳の訂正/明瞭でない記載の釈明/引用関係の解消(第126条第1項ただし書) | 第126条第1項ただし書各号と同じ目的(第134条の2第1項ただし書) |
| 要件の審理 | 審理なし。要件違反は無効理由(第37条第1項第7号) | 審判官が審理し、審決 | 無効審判の中で審理 |
| 審理終結通知後 | 第7項訂正は不可(第7項ただし書) | ― | 審理終結通知はされない(第156条第2項)。訂正は第134条の2第1項の指定期間内に限る |
| 権利消滅後 | 可。無効にされた後は不可(第8項) | 可。ただし取消決定・無効審決による取消し・無効後は不可(第126条第8項) | ― |
〔表5〕実用新案の訂正と特許の訂正審判・訂正の請求の対比。「誤記の訂正」(実用新案)と「誤記又は誤訳の訂正」(特許)の文言の違いに注意。第134条の2第9項は第126条第8項も準用し、権利消滅後の訂正請求を認めている。
5. 準用される特許法の規定(第13項)
特許権者は、専用実施権者又は質権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、訂正審判を請求することができる。
特許権又は特許を受ける権利の共有者がその共有に係る権利について審判を請求するときは、共有者の全員が共同して請求しなければならない。
特許庁長官は、遠隔又は交通不便の地にある者のため、請求により又は職権で、第四十六条の二第一項第三号、第百八条第一項、第百二十一条第一項又は第百七十三条第一項に規定する期間を延長することができる。
| 準用元 | 準用する規定 | 実用新案の訂正での意味 |
|---|---|---|
| 第13項 | 特許法第127条 | 専用実施権者・質権者がいるときは、その承諾がなければ訂正(第1項・第7項とも)できない |
| 第13項 | 特許法第132条第3項 | 実用新案権が共有のときは、共有者全員で訂正しなければならない |
| 第5項 | 特許法第4条 | 遠隔・交通不便の地にある者のため、第1項第1号の「2月」を延長できる(第1項第2号の期間は対象外) |
〔表6〕第14条の2が準用する特許法の規定。第127条・第132条第3項は「審判を請求する」場面の規定だが、実用新案では「訂正をする」場面に読み替えて準用される(青本996〜997頁は、実施権者の承諾と共有者全員による訂正についての準用であると説明している)。
6. 試験での問われ方
| 試験種別 | 問われ方の傾向 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 短答式 | 「一回に限り」の回数制限、第1項第1号・第2号の時期、第7項の請求項削除訂正の例外(審理終結通知後)、第8項の権利消滅後・無効後、第37条第1項第7号の範囲 | 第7項には回数制限がないが時期制限があること、第5項・第6項が第1号の期間にしか及ばないこと、第37条第1項第7号が「第2項から第4項まで」であること |
| 論文式 | 技術評価書や無効審判を受けた実用新案権者が「どの訂正を、いつまでにできるか」を条文に即して論じる形。特許法第126条・第134条の2との対比 | 実用新案の訂正は「審判」ではなく訂正書の提出であること、要件違反は無効理由として処理されること |
| 口述 | 第1項訂正と第7項訂正の違い、訂正の効果(第11項の遡及効)、準用規定(第13項) | 条文番号・項を正確に言えるようにする |
〔表7〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。
- 第1項訂正:一回に限り。技術評価書謄本送達から2月(第4条準用・第6項救済あり)、無効審判の最初の答弁書提出期間内。目的4つ・新規事項禁止・実質的拡張変更禁止。
- 第7項訂正:請求項の削除に限り回数・時期の制限なし。ただし無効審判の審理終結通知後は不可。
- 共通:訂正書提出、公報掲載、遡及効、権利消滅後も可(無効後は不可)、承諾・共有者全員(特許法第127条・第132条第3項準用)。
- 要件違反(第2項〜第4項)は第37条第1項第7号の無効理由。訂正要件は技術評価書では判断されない。
- 第14条の3:第1項訂正の訂正書に基礎的要件違反があれば特許庁長官が補正命令。
- 特許との違い:審判ではなく訂正書、回数制限、時期の決め方、「誤記」に「誤訳」が含まれない文言。
関連記事
