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小学生でも分かる実用新案法|実用新案法第7条 先願 ― 同じ考案が2つ来たら「先に出した人」が勝つ。特許出願とのあいだも本条で決める

小学生でもわかる実用新案法:先願(7条)

小学生でも分かる実用新案法 / A. 登録要件・考案(実体規定) #6

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同じ考案について2つ以上の実用新案登録出願があったら、いちばん先に出した人だけが登録を受けられます(実用新案法第7条第1項)。この「先願」のルールは特許法第39条とよく似ていますが、実用新案では同日出願のとき協議がなく「いずれも登録を受けられない」こと、特許出願との先後願も本条で処理すること、そして実用新案登録出願には「拒絶」がないので先願の地位を失う事由の書き方が特許法と違うことがポイントです。

条文:実用新案法第7条関連:実用新案法第37条第1項第2号、特許法第39条参照時点:2026年9月

目次

LEVEL 1イメージでつかむ

同じアイデアの応募が2つ届いたら?

学校の発明コンテストに、たまたま同じアイデアの応募が2つ届いたとします。どちらを表彰するか決めるには、ルールが必要です。実用新案法のルールはシンプルで、「先に受付をすませた人」が勝ちです。あとから出した人は、たとえ自分で考えたアイデアでも登録を受けられません。これを先願(せんがん)主義といいます。

では、2つの応募が同じ日に届いたらどうなるでしょう。特許のコンテストでは「2人で話し合って、どちらか1人に決めてください」と言われます(協議)。ところが実用新案のコンテストでは話し合いはなく、2人とも登録を受けられません。青本は、実体審査をしないため協議命令を行えず、平成5年改正で協議の仕組みを廃止したと説明しています。条文に「話し合い」の決まりがない、という点をまず覚えてください。

同じ考案の出願が2つあるときの4つの場面 ちがう日に出した 同じ日に出した 実用新案 と実用新案 実用新案 と特許 ○ 先に出した人だけ登録 第7条第1項 × 2人とも登録できない 話し合いなし 第7条第2項 ○ 先に出したほうだけ 第7条第3項・特許法第39条第3項 △ 話し合いで1人に決める まとまらなければ2人ともダメ 特許法第39条第4項・第7条第6項 凡例 ○ 登録を受けられる人がいる × だれも登録を受けられない △ 話し合い(協議)の結果しだい 「同じ日」の場面だけ、相手が実用新案か特許かで結果が変わる

図は左右にスクロールできます。

【図1】同じ考案の出願が2つあるときの4つの場面。「ちがう日」なら先に出した人が勝ち。「同じ日」の実用新案どうしは話し合いなしで両方ダメ、実用新案と特許なら話し合い。※説明の都合上、出願が3つ以上ある場合、出願人が同一の場合は省略した。(2026年9月時点)

相手が「特許」でも同じルール

同じアイデアが、ある人は「実用新案」で、別の人は「特許」で出されることもあります。このときも、ちがう日なら「先に出したほう」が勝ちです。同じ日なら、話し合いで1人に決めます。話し合いがまとまらないと、実用新案の人も特許の人も、どちらも登録や特許を受けられません。

取り下げた応募は「なかったこと」に

先に応募した人が「やっぱりやめます」と応募を取り下げたら、その応募は最初からなかったことになります。だから、あとから出した人が勝てるようになります。

レベル1のまとめ

  • 同じ考案の出願が2つあったら、先に出した人だけが登録を受けられる(先願主義)。
  • 同じ日に出した実用新案どうしは、話し合いなしで2人とも登録できない。
  • 相手が特許出願でも、先に出したほうが勝ち。同じ日なら話し合い。
  • 取り下げた出願は「最初からなかった」ことになる。

※「なかったことになる」出願の範囲には例外があり、特許出願が拒絶になった場合の扱いも細かく決まっています。正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。


LEVEL 2条文の骨格

第7条の構造(第1項〜第6項)

e-Gov法令検索で取得した実用新案法第7条は6項構成です。第1項・第2項が「実用新案どうし」、第3項と第6項が「特許出願との関係」、第4項・第5項が「なかったものとみなす出願」を定めています。

項 場面 内容(要旨)
第1項 実用新案どうし・異日 最先の実用新案登録出願人のみが登録を受けられる
第2項 実用新案どうし・同日 いずれも登録を受けられない(協議の規定はない)
第3項 実用新案と特許・異日 実用新案登録出願人は、特許出願人より先に出願した場合にのみ登録を受けられる
第4項 先願の地位(放棄・取下げ・却下) 放棄・取下げ・却下された実用新案登録出願・特許出願は、第1項〜第3項の適用上、初めからなかったものとみなす
第5項 先願の地位(特許出願の拒絶確定) 拒絶査定・審決が確定した特許出願は、第3項の適用上、初めからなかったものとみなす。ただし特許法第39条第2項後段(同日特許出願の協議不成立)による拒絶確定は除く
第6項 実用新案と特許・同日 特許法第39条第4項の協議が成立せず、または協議ができないときは、実用新案登録出願人は登録を受けられない

〔表1〕実用新案法第7条の項ごとの内容(e-Gov法令検索、2026年9月参照。「要旨」欄は本記事の整理)。

現行の第7条は第1項から第6項までです。平成23年改正で、冒認出願の先願の地位を否定していた旧第6項が削除されました。現在、特許出願との同日競合で協議不成立の場合を定めるのは第6項です。 実用新案法第7条 青本第22版968頁

原文

実用新案法第7条第1項同一の考案について異なつた日に二以上の実用新案登録出願があつたときは、最先の実用新案登録出願人のみがその考案について実用新案登録を受けることができる。
実用新案法第7条第2項同一の考案について同日に二以上の実用新案登録出願があつたときは、いずれも、その考案について実用新案登録を受けることができない。
実用新案法第7条第3項実用新案登録出願に係る考案と特許出願に係る発明とが同一である場合において、その実用新案登録出願及び特許出願が異なつた日にされたものであるときは、実用新案登録出願人は、特許出願人より先に出願をした場合にのみその考案について実用新案登録を受けることができる。
実用新案法第7条第4項実用新案登録出願又は特許出願が放棄され、取り下げられ、又は却下されたときは、その実用新案登録出願又は特許出願は、前三項の規定の適用については、初めからなかつたものとみなす。
実用新案法第7条第5項特許出願について拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定したときは、その特許出願は、第三項の規定の適用については、初めからなかつたものとみなす。ただし、その特許出願について特許法第三十九条第二項後段の規定に該当することにより拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定したときは、この限りでない。
実用新案法第7条第6項特許法第三十九条第四項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、実用新案登録出願人は、その考案について実用新案登録を受けることができない。

4つの場面の判定フロー

flowchart TD
  subgraph LB["レーン:特許庁長官"]
    MEI["協議をしてその結果を届け出るべき旨を命じる
特許法第39条第6項"] end subgraph LA["レーン:出願人(実用新案登録出願人・特許出願人)"] KYO["協議をする
特許法第39条第4項前段"] --> HAN{"協議は成立したか"} end subgraph KET["結論(同日・実用新案と特許)"] A4["○ 協議により定めた一の出願人のみが
特許又は実用新案登録を受けられる
特許法第39条第4項前段"] A5["× 実用新案登録出願人は登録を受けられない
第7条第6項"] end S["同一の考案について
他の出願がある"] --> Q1{"相手も
実用新案登録出願か"} Q1 -->|"はい"| Q2{"出願日は同日か"} Q1 -->|"いいえ(特許出願)"| Q3{"出願日は同日か"} Q2 -->|"はい(同日)"| A2["× いずれも登録を受けられない
第7条第2項"] Q2 -->|"いいえ(異日)"| A1["○ 最先の実用新案登録出願人のみ登録
第7条第1項"] Q3 -->|"はい(同日)"| MEI Q3 -->|"いいえ(異日)"| A3["○ 特許出願人より先に出願していれば登録
第7条第3項"] MEI --> KYO HAN -->|"はい(成立)"| A4 HAN -->|"いいえ(不成立・協議をすることができない)"| A5 style A1 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style A3 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style A4 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style A2 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F style A5 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

凡例
○ 特許・実用新案登録を受けられる
× 受けられない
必須の手続

【図2】実用新案法第7条の判定フロー。分岐は「はい」を下、「いいえ」を右に統一し、終端の結論をそろえた。同日の場合だけ、相手が実用新案か特許かで結論の出し方が変わる。協議の手続は特許法第39条第4項・第6項が定め、実用新案法第7条第6項はその結果だけを受ける。※説明の都合上、特許庁長官が指定した期間内に届出がないときは協議が成立しなかったものとみなすことができること(特許法第39条第7項)は図から省略した。(2026年9月時点)

「初めからなかったものとみなす」出願(第4項・第5項)

先願の地位を失う事由は、第4項と第5項に分かれています。実用新案登録出願は実体審査がなく「拒絶」がないので、第5項は特許出願だけを対象にしています。

flowchart TD
  S["先にされた出願(実用新案登録出願・特許出願)"] --> Q1{"その出願は
放棄・取下げ・却下されたか"} Q1 -->|"はい"| B1["× 先願の地位を失う
初めからなかったものとみなす
第7条第4項(前三項に適用)"] Q1 -->|"いいえ"| Q2{"特許出願について拒絶をすべき旨の
査定又は審決が確定したか"} Q2 -->|"はい"| Q3{"その拒絶の根拠は
特許法第39条第2項後段か"} Q2 -->|"いいえ"| B4["◎ 先願の地位はそのまま"] Q3 -->|"はい(同日の特許出願どうしで協議不成立)"| B3["○ 先願の地位が残る
第7条第5項ただし書"] Q3 -->|"いいえ"| B2["× 先願の地位を失う
初めからなかったものとみなす
第7条第5項本文(第三項に適用)"] style B1 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F style B2 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F style B3 fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F style B4 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

凡例
× 先願の地位を失う(初めからなかったものとみなす)
○ みなし規定の例外で先願の地位が残る
◎ そもそもみなし規定にあたらない

【図3】先願の地位を失う事由の整理。第4項は「前三項」に、第5項は「第三項」にだけ効く点に注意。※実用新案登録出願には実体審査がなく「拒絶」がないため、第5項の対象は特許出願だけである。※説明の都合上、特許法第39条第5項(特許法側の先願の地位)は図から省略した。(2026年9月時点)

レベル2のまとめ

  • 第1項 異日の実用新案どうし=最先のみ。第2項 同日の実用新案どうし=いずれも不可(協議なし)。
  • 第3項 異日の実用新案と特許=先に出したほうのみ。第6項 同日の実用新案と特許=特許法第39条第4項の協議で決め、不成立なら実用新案側は不可。
  • 第4項 放棄・取下げ・却下は初めからなかったものとみなす(前三項に適用)。第5項 特許出願の拒絶確定も同じ(第3項に適用)。ただし特許法第39条第2項後段による拒絶確定は除く。


LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 特許法第39条との対比

特許法第39条は7項構成、実用新案法第7条は6項構成です。対応関係を表にすると、「同日出願の協議」の有無と「先願の地位」の書き分けが違いとして浮かび上がります。

場面 特許法第39条 実用新案法第7条 違い
同種の出願・異日 第1項:最先の特許出願人のみ 第1項:最先の実用新案登録出願人のみ 同じ構造
同種の出願・同日 第2項:協議により定めた一の出願人のみ。協議不成立・不能ならいずれも不可 第2項:いずれも不可 実用新案には協議がない
異種の出願・異日 第3項:特許出願人が実用新案登録出願人より先なら特許 第3項:実用新案登録出願人が特許出願人より先なら登録 鏡合わせの規定
異種の出願・同日 第4項:協議により定めた一の出願人のみ。協議不成立・不能なら特許出願人は不可 第6項:特許法第39条第4項の協議不成立・不能なら実用新案登録出願人は不可 協議は特許法第39条第4項に一本化。実用新案法側は結果だけを規定
先願の地位(放棄・取下げ・却下) 第5項本文:第1項〜第4項の適用上、初めからなかったものとみなす 第4項:前三項の適用上、初めからなかったものとみなす 実用新案法では第6項の場面には及ばない(条文上「前三項」)
先願の地位(拒絶確定) 第5項本文:特許出願の拒絶査定・審決確定も同じ。ただし第2項後段・第4項後段による拒絶確定は除く 第5項:特許出願の拒絶確定は第3項の適用上、初めからなかったものとみなす。ただし特許法第39条第2項後段による拒絶確定は除く 実用新案法のただし書は「特許法第39条第2項後段」のみを挙げる(第4項後段を挙げていない)
協議命令・届出 第6項:特許庁長官が協議結果の届出を命じる。第7項:届出がなければ協議不成立とみなすことができる (対応する項なし) 特許法第39条第6項が「第二項又は第四項の場合」の出願人に命じる

〔表2〕特許法第39条と実用新案法第7条の項の対応(両条文はe-Gov法令検索、2026年9月参照)。「違い」欄は条文の文言にもとづく本記事の整理。

特許法第39条第4項特許出願に係る発明と実用新案登録出願に係る考案とが同一である場合(第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願(第四十四条第二項(第四十六条第六項において準用する場合を含む。)の規定により当該特許出願の時にしたものとみなされるものを含む。)に係る発明とその実用新案登録に係る考案とが同一である場合を除く。)において、その特許出願及び実用新案登録出願が同日にされたものであるときは、出願人の協議により定めた一の出願人のみが特許又は実用新案登録を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、特許出願人は、その発明について特許を受けることができない。
特許法第39条第5項特許出願若しくは実用新案登録出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、又は特許出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したときは、その特許出願又は実用新案登録出願は、第一項から前項までの規定の適用については、初めからなかつたものとみなす。ただし、その特許出願について第二項後段又は前項後段の規定に該当することにより拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定したときは、この限りでない。
特許法第39条第6項特許庁長官は、第二項又は第四項の場合は、相当の期間を指定して、第二項又は第四項の協議をしてその結果を届け出るべき旨を出願人に命じなければならない。
特許法第39条第7項特許庁長官は、前項の規定により指定した期間内に同項の規定による届出がないときは、第二項又は第四項の協議が成立しなかつたものとみなすことができる。
同日の「特許出願 vs 実用新案登録出願」は2つの法律で分担 特許法第39条(手続を定める側) ① 第6項:特許庁長官が協議・届出を命じる ② 第4項前段:協議で一の出願人に決める ③ 第4項後段:不成立なら特許出願人は不可 ※ 第7項:届出なし=不成立とみなせる 「出願人」=特許出願人・実用新案登録出願人の両方 実用新案法第7条(結果を受ける側) ④ 第6項:特許法第39条第4項の協議が   不成立・協議をすることができないとき   実用新案登録出願人は登録を受けられない 協議そのものの手続は定めず、結果だけを受ける 参照 実用新案登録は無審査なので、協議不成立の実用新案登録は登録後に無効理由(第37条第1項第2号)として争われる 凡例 ①〜④=手続の順番  枠の色:紫=特許法第39条/緑=実用新案法第7条

図は左右にスクロールできます。

【図4】同日の異種出願における特許法第39条と実用新案法第7条の役割分担。協議の手続(命令・届出・不成立のみなし)は特許法第39条第4項・第6項・第7項が担い、実用新案法第7条第6項はその結果を受ける。(2026年9月時点)

これに対して異日の異種出願は協議を経ません。実用新案法第7条第3項と特許法第39条第3項は鏡合わせの規定で、結論は「先に出願したほうだけ」です。2本の時間線を同じ目盛りの上に並べると、条文の対応関係が見えます。

異日の先後願(第7条第3項/特許法第39条第3項) 場面A 実用新案登録出願が先 実用新案登録出願 ①先 特許出願 ②後 ○ 実用新案登録を受けられる 第7条第3項 × 特許を受けられない 特許法第39条第3項 X日 Y日(X日より後) 場面B 特許出願が先 実用新案登録出願 ②後 特許出願 ①先 × 実用新案登録を受けられない 第7条第3項 ○ 特許を受けられる 特許法第39条第3項 X日 Y日(X日より後) 凡例 ●=出願をした日(時点) ──▶=時間の流れ ①②=出願の前後 ○=受けられる ×=受けられない

図は左右にスクロールできます。

【図5】異日の先後願を2本の時間線で比べた図。場面A・場面Bは同じ目盛り(X日・Y日)の上に置いてあり、変わるのは「どちらの線に●が先に来るか」だけ。第7条第3項と特許法第39条第3項は鏡合わせの規定で、先に出願したほうだけが権利を受けられる。※時間軸は縮尺なし。※説明の都合上、同日出願(第7条第6項・特許法第39条第4項)と先願の地位のみなし(第7条第4項・第5項)は図から省略した。(2026年9月時点)

2. 先願の地位の細かい違い

事由 特許法第39条第5項 実用新案法第7条第4項・第5項 備考
放棄・取下げ・却下(両種の出願) 初めからなかったものとみなす(第1項〜第4項に適用) 初めからなかったものとみなす(第4項、前三項に適用) 実用新案法第7条第6項の場面は「前三項」に含まれない
特許出願の拒絶査定・審決の確定 初めからなかったものとみなす(第1項〜第4項に適用) 初めからなかったものとみなす(第5項、第3項に適用) 実用新案登録出願には拒絶がないので、第5項は特許出願のみ
例外:協議不成立による拒絶確定 第2項後段・第4項後段による拒絶確定は除く 特許法第39条第2項後段による拒絶確定は除く 実用新案法側のただし書は特許法第39条第4項後段を挙げていない(条文どおり)
実用新案登録の無効確定 (規定なし) (規定なし) 登録後の無効は先願の地位に影響しない(条文上の帰結)

〔表3〕先願の地位に関する両法の書き分け(条文の文言にもとづく整理)。

青本は、同一発明の同日特許出願が協議不成立で拒絶確定した場合、第三者や協議不成立となった当事者が後の実用新案登録出願で権利を得ることを防ぐため、先願の地位を残したと説明しています。第7条第5項ただし書が挙げるのは特許法第39条第2項後段です。異種出願の第39条第4項後段で拒絶された場合にも同じ例外がある、と広げて読むことはできません。 青本第22版968頁 実用新案法第7条第5項

3. 実用新案登録に基づく特許出願との関係

特許法第39条第4項のかっこ書は、実用新案登録に基づく特許出願(特許法第46条の2第1項)に係る発明と、そのもとになった実用新案登録に係る考案とが同一である場合を、同日出願の協議の対象から除いています。審査基準 第III部第4章「先願」も、実用新案登録に基づく特許出願に係る発明とその実用新案登録に係る考案とが同一であっても第39条を適用しないことを明記しています。もとの実用新案登録と自分の特許出願が「同じ考案」でぶつかるのは当然なので、先願の規定でふるい落とさないという整理です。詳細は特許法シリーズの記事(特許法第46条・第46条の2 出願の変更)を参照してください。

4. 無効理由(第37条第1項第2号)

実用新案法第37条第1項第2号(抜粋)その実用新案登録が第二条の五第三項において準用する特許法第二十五条、第三条、第三条の二、第四条、第七条第一項から第三項まで若しくは第六項又は第十一条第一項において準用する同法第三十八条の規定に違反してされたとき(その実用新案登録が同項において準用する同法第三十八条の規定に違反してされた場合にあつては、第十七条の二第一項の規定による請求に基づき、その実用新案登録に係る実用新案権の移転の登録があつたときを除く。)。
第7条の項 無効理由か 理由(条文上の整理)
第1項(異日・実用新案どうし) 該当 「第七条第一項から第三項まで」に含まれる
第2項(同日・実用新案どうし) 該当 同上
第3項(異日・実用新案と特許) 該当 同上
第4項・第5項(先願の地位) 該当しない 「初めからなかったものとみなす」というみなし規定であり、登録要件を定めた規定ではない
第6項(同日・実用新案と特許、協議不成立) 該当 「若しくは第六項」として明記

〔表4〕実用新案法第37条第1項第2号における第7条各項の扱い(e-Gov法令検索、2026年9月参照)。

5. 「同一の考案」の判断 ― 審査基準 第III部第4章から

実用新案法第7条は無審査登録制度のもとでは出願時に判断されず、実用新案技術評価や無効審判の場面で問題になります。「同一」の判断手法については、特許・実用新案審査基準 第III部第4章「先願」が特許法第39条について整理しており、実用新案法第7条の「同一の考案」の解釈もこれを参考にするのが実務上の出発点です(実用新案技術評価の運用は実用新案法第12条の記事で扱います)。

審査基準の項目 内容(要旨)
同一性の判断 相違点がない場合のほか、周知技術・慣用技術の付加・削除・転換で新たな効果を奏しないもの、上位概念・下位概念の表現上の差異、物と方法の表現形式上の差異など「実質同一」の類型を示す
同日出願の対比 一方を先願と仮定した場合と他方を先願と仮定した場合の両方で同一であることを要する(双方向の対比)
協議の手続 特許庁長官が指定期間内に協議結果を届け出るよう命じる。出願人が同一の場合は協議の時間は不要
先願の地位 放棄・取下げ・却下、拒絶確定で初めからなかったものとみなす。ただし第39条第2項後段・第4項後段による拒絶確定は除く
実用新案登録に基づく特許出願 もとの実用新案登録に係る考案と同一でも第39条は適用されない

〔表5〕審査基準 第III部第4章「先願」の要点(特許庁、03_0400.pdf、2026年9月参照。すべて要旨)。

6. 試験での問われ方

試験種別 問われ方の傾向 気をつける点
短答式 同日の実用新案登録出願どうしで「協議により定めた一の出願人のみが登録を受けられる」とする誤り枝、特許出願と実用新案登録出願の先後願の結論、取下げ・却下・拒絶確定した出願の先願の地位 第2項に協議はない。第5項ただし書は「特許法第39条第2項後段」のみ。第4項は「前三項」、第5項は「第三項」に適用
論文式 特許出願と実用新案登録出願が同日に競合した事例で、特許法第39条第4項・第6項・第7項と実用新案法第7条第6項を組み合わせて結論を導く形 協議の手続は特許法側、実用新案側の帰結は実用新案法第7条第6項、登録後の攻撃は第37条第1項第2号
口述 「実用新案法第7条第2項に協議の規定がないのはなぜか」など、無審査登録制度との関係を問う形 実体審査を廃止したため協議命令を行えず、同日同一の考案の登録は双方が無効理由を有する制度とした(青本967頁)

〔表6〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

令和8年度短答式の問5(ロ)は、同日の同一発明についての特許出願2件が協議不成立により拒絶確定した後、後願の実用新案登録出願に先願の地位が及ぶかを扱います。実用新案法第7条第5項ただし書により、これらの特許出願は先願の地位を失わず、同(ロ)は正しい肢です。問5全体の公式正答は4です。 令和8年度問題 公式解答

レベル3のまとめ

  • 特許法第39条第2項の「協議」は実用新案法第7条第2項にはない。同日の実用新案登録出願どうしは、いずれも登録を受けられない。
  • 特許出願との同日競合は、特許法第39条第4項の協議で決め、不成立なら特許側は特許法第39条第4項後段、実用新案側は実用新案法第7条第6項で不可。協議命令・届出は特許法第39条第6項・第7項。
  • 先願の地位:第4項(放棄・取下げ・却下、前三項に適用)と第5項(特許出願の拒絶確定、第3項に適用。ただし特許法第39条第2項後段による拒絶確定は除く)。
  • 無効理由は第7条第1項〜第3項・第6項の違反(実用新案法第37条第1項第2号)。第4項・第5項はみなし規定で無効理由の対象ではない。

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