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小学生でも分かる特許法|特許法第123条 特許無効審判 ― いったん成立した特許を「なかったこと」にする手続

小学生でもわかる特許法:特許無効審判(特許法第123条)

小学生でも分かる特許法 / D. 審判・訴訟 #41

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審査を通って登録された特許でも、本当は特許にすべきでなかったものがあります。特許無効審判は、利害関係人が特許庁に「この特許を無効にしてほしい」と請求する手続で、無効審決が確定すると特許権は初めから存在しなかったものとみなされます。

条文:特許法第123条、第125条関連:第113条(異議申立て)、第134条・第134条の2(答弁・訂正の請求)、第104条の3、第167条、第178条参照時点:2026年9月

LEVEL 1イメージでつかむ

審査官も間違えることがある

特許庁の審査官は、世界中の先行技術を全部調べられるわけではありません。「本当は昔からあった技術」に特許が出てしまうこともあります。そんな特許が残っていると、他の人はその技術を使えず、困ります。

そこで特許法は、特許になった後でも「この特許はおかしい」と特許庁に訴える手続を用意しています。それが特許無効審判です。

登録された特許 特許権者 利害関係人が請求 「この特許は無効だ」 審判官の合議体 両者の言い分を聞く 無効審決 or 維持審決 不服なら裁判所へ 無効審決が確定すると、特許権は「初めからなかった」ことになる

【図1】特許無効審判のイメージ。請求人と特許権者が対立する「当事者系」の手続。

「初めからなかった」ことになる

無効審決が確定すると、その特許権は「登録された時にさかのぼって、初めからなかった」ことになります。だから、過去に「特許侵害だ」と言われて払ったお金の問題にも影響します。

レベル1のまとめ
  • 登録された特許でも、利害関係人は特許庁に無効審判を請求できる。
  • 無効審決が確定すると、特許権は初めからなかったことになる。

※無効にできる理由のリスト、誰が請求できるか、特許権者の反撃(訂正)、後発的な無効理由の例外などは、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第123条第1項 ― 無効理由のリスト

特許法第123条第1項柱書(原文)特許が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許を無効にすることについて特許無効審判を請求することができる。この場合において、二以上の請求項に係るものについては、請求項ごとに請求することができる。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。
号無効理由(要旨)性格
第1号第17条の2第3項(新規事項追加)に違反する補正をした出願に対する特許(外国語書面出願を除く)原始的
第2号第25条・第29条・第29条の2・第32条・第38条・第39条第1項〜第4項に違反した特許(第38条違反は、第74条第1項の移転登録があったときを除く)原始的
第3号条約に違反した特許原始的
第4号第36条第4項第1号(実施可能要件)または第6項(第4号を除く)の要件を満たさない出願に対する特許原始的
第5号外国語書面出願で、明細書等の記載事項が外国語書面の範囲内にない原始的
第6号特許を受ける権利を有しない者の出願に対する特許(冒認。第74条第1項の移転登録があったときを除く)原始的
第7号特許後に、特許権者が第25条により特許権を享有できない者になった、または特許が条約に違反することとなった後発的
第8号訂正が第126条第1項ただし書・第5項〜第7項等に違反してされた訂正要件違反

〔表1〕第123条第1項各号(e-Gov、2026年9月参照)。第7号だけが「後発的」な無効理由。

第2項〜第4項と第125条

特許法第123条第2項(原文)特許無効審判は、利害関係人(前項第二号(特許が第三十八条の規定に違反してされたときに限る。)又は同項第六号に該当することを理由として特許無効審判を請求する場合にあつては、特許を受ける権利を有する者)に限り請求することができる。
条・項内容
第123条第2項請求人は利害関係人に限る。ただし第38条違反・冒認(第6号)を理由とする場合は特許を受ける権利を有する者に限る
第123条第3項特許権の消滅後でも請求できる
第123条第4項審判長は、請求があった旨を専用実施権者その他登録した権利を有する者に通知する
第125条本文無効審決が確定したときは、特許権は初めから存在しなかったものとみなす
第125条ただし書第7号(後発的無効理由)の場合は、その事由に該当するに至った時から存在しなかったものとみなす

〔表2〕請求人・時期・通知・効果。

flowchart LR
  A["利害関係人が請求
(請求項ごとに可)"] --> B["審判長:請求書副本を特許権者に送達
答弁書提出の機会(第134条第1項)"] B --> C["特許権者:答弁書+訂正の請求(第134条の2)"] C --> D["審理(口頭審理が原則:第145条第1項)"] D --> E{"審決"} E -- "無効理由あり" --> F["無効審決 → 確定で特許権は初めから不存在(第125条)"] E -- "無効理由なし" --> G["請求不成立(維持)審決"] F --> H["審決取消訴訟(第178条、30日)"] G --> H style F fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style G fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

【図2】特許無効審判の流れ。第134条の2・第145条・第178条の条文番号は各記事で確認。

レベル2のまとめ
  • 無効理由は第1項第1号〜第8号に限定列挙。請求項ごとに請求できる。
  • 請求人は利害関係人(第38条違反・冒認は特許を受ける権利を有する者)。特許権消滅後も請求可。
  • 無効審決確定で特許権は初めから不存在(後発的理由は該当時から)。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 拒絶理由・異議申立て理由・無効理由の比較

事由拒絶理由(第49条)異議申立て理由(第113条)無効理由(第123条)
新規事項追加(第17条の2第3項)○○○(第1号)
シフト補正(第17条の2第4項)○××
第25条・第29条・第29条の2・第32条・第39条○○○(第2号)
第38条(共同出願)○×○(第2号)
条約違反○○○(第3号)
第36条第4項第1号・第6項(第4号除く)○○○(第4号)
第36条第6項第4号・第37条・第36条第4項第2号○××
外国語書面の範囲外○○○(第5号)
冒認○×○(第6号)
後発的事由―×○(第7号)
訂正要件違反―×(訂正後の内容が第113条各号に該当する場合は別)○(第8号)

〔表3〕三者の比較(第123条は条文確認済み。第113条は異議申立ての記事で確認)。異議申立て理由は「公益的事由」に限られ、第38条・冒認・後発的事由は含まれない。

2. 「利害関係人」と請求人適格

無効理由請求できる者備考
原則(第1号〜第5号・第7号・第8号、第2号のうち第38条違反以外)利害関係人平成26年改正で「何人も」から「利害関係人」に戻された(異議申立て制度の復活とセット)。利害関係の有無は事案ごとに判断(同業者、警告を受けた者など)
第38条違反(第2号)・冒認(第6号)特許を受ける権利を有する者(真の権利者)第74条の移転請求と選択できる。移転登録があれば無効理由から外れる(各号括弧書き)

〔表4〕請求人適格。

平成26年改正では、特許権の早期安定化のため、誰でも申し立てられる特許異議申立制度を設け、無効審判は利害関係人の紛争解決を担う制度として整理しました。共同出願違反・冒認の請求人は特許を受ける権利を有する者に限られます。第113条・第123条第2項/特許庁・改正法の施行と異議制度。

3. 特許権者の防御 ― 訂正の請求(第134条の2)

無効審判の中で、特許権者は明細書・特許請求の範囲・図面の訂正を請求できます(第134条の2)。請求項を減縮して無効理由を回避するのが典型です。訂正審判(第126条)は無効審判係属中は請求できず、無効審判内の訂正の請求によります。詳細は第126条・第134条の2の記事で扱います。

4. 無効審決確定の効果

flowchart TB
  A["無効審決が確定"] --> B{"無効理由は第7号(後発的)か"}
  B -- "いいえ" --> C["特許権は初めから存在しなかったものとみなす(第125条本文)"]
  B -- "はい" --> D["該当するに至った時から存在しなかったものとみなす(第125条ただし書)"]
  C --> E["補償金請求権も初めから生じなかったものとみなす(第65条第5項)
既払いの実施料・損害賠償の扱いは民法(不当利得)等の問題"] D --> E2["該当前の期間の補償金請求権・侵害は影響を受けない"] A --> F["一事不再理(第167条):当事者・参加人は同一の事実・同一の証拠に基づく審判を再請求できない"] style C fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

【図3】無効審決確定の効果。第167条は一事不再理の記事で扱う。

5. 侵害訴訟との関係(第104条の3)

特許権侵害訴訟の被告は、無効審判を請求しなくても、「その特許は無効審判により無効にされるべきもの」と主張して権利行使を阻止できます(第104条の3第1項)。無効審判と侵害訴訟が並行する「ダブルトラック」の調整は、第104条の3・第104条の4・第168条で定められています(権利行使の制限の記事で扱う)。

6. 訂正審判・異議申立てとの比較

特許無効審判(第123条)特許異議の申立て(第113条〜)訂正審判(第126条)
誰が利害関係人(一部は真の権利者)何人も特許権者
いついつでも(消滅後も可)特許掲載公報発行の日から6月以内第126条第2項の禁止期間(異議・無効審判・審決取消訴訟中等)を除く。消滅後も第8項の範囲で可
構造当事者系(請求人 vs 特許権者)査定系(特許庁 vs 特許権者)査定系
審理口頭審理が原則書面審理書面審理
不服審決取消訴訟(当事者が原告・被告)取消決定に対してのみ訴え可(維持決定には不可)審決取消訴訟

〔表5〕三つの手続の比較。異議申立て・訂正審判の欄は各記事で条文確認。

7. 試験での問われ方

試験種別問われ方の傾向気をつける点
短答式「第37条違反は無効理由か」「冒認を理由に請求できる者」「特許権消滅後の請求」「後発的無効理由の効果」「請求項ごとの請求」「異議申立てとの違い」〔表1〕〔表3〕〔表4〕
論文式侵害警告を受けた者が取り得る手段(無効審判、第104条の3の抗弁、訂正への対応)を論じさせる【図2】【図3】
口述「無効審判を請求できる者は」「無効審決確定の効果は」第123条第2項、第125条

〔表6〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

問2は参加・審理終結・審決送達・認諾・請求人適格、問13(ハ)は条約違反、問14は参加・取消訴訟・閲覧、問20は無効理由・請求理由補正・証人・費用が論点です。 公式正解番号:問2=2、問13=5、問14=4、問20=2。 公式問題/公式正解。
レベル3のまとめ
  • 無効理由は限定列挙(第1号〜第8号)。異議申立て理由との差(第38条・冒認・後発的事由は無効理由のみ)、拒絶理由との差(シフト補正・第37条・第36条第6項第4号は無効理由でない)が頻出。
  • 請求人は利害関係人。第38条違反・冒認は真の権利者のみ。移転登録(第74条)があれば無効理由から外れる。
  • 確定の効果は遡及(第125条)。後発的理由は該当時から。侵害訴訟では第104条の3の抗弁がある。

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