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小学生でも分かる特許法|特許法第2条 発明の定義・実施の定義 ― そもそも「発明」って何?「実施」って何?

小学生でも分かる特許法:発明の定義・実施の定義(特許法第2条)

小学生でも分かる特許法 / A. 特許要件・発明 #1

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特許法はいちばん最初に「発明とは何か」を決めています。この定義に当てはまらないものは、どんなにすごくても特許の対象になりません。あわせて、特許権が及ぶ行為である「実施」の中身も、ここで決まっています。

条文:特許法第2条(第1項〜第4項)審査基準:第III部 第1章「発明該当性及び産業上の利用可能性」参照時点:2026年9月

LEVEL 1イメージでつかむ

「発明」と「発見」はちがう

ニュートンはリンゴが落ちるのを見て「万有引力」を発見しました。でも、万有引力はニュートンが作ったものではありません。もともと自然にあったものを「見つけた」だけです。こういう「見つけただけ」のものは、特許の世界では発明とはいいません。

一方で、「万有引力を使って、水を高いところから落として水車を回す」という作り方の工夫を考えたら、それは発明です。自然のしくみ(自然法則)を使って、何かを作る工夫(技術的思想)を考え出す(創作)こと――これが発明です。

自然法則を 自然のしくみ 利用した 使っている 技術的思想の 作り方の工夫 創作 考え出したもの + + + 発明(のうち高度のもの) 「高度」は実用新案(考案)と分けるための言葉(→レベル3)

【図1】発明の4つの部品。どれか一つでも欠けると「発明」ではない。

発明にならないものの例

万有引力の法則そのもの(自然法則自体) 新しい鉱石を見つけた(単なる発見) 永久機関(自然法則に反する) ゲームのルール(人が決めた約束) 計算のしかた(数学の公式) フォークボールの投げ方(個人の技能) 絵や彫刻(美しさの創作)

「実施」=発明を使うこと

特許をとると、その発明を「実施」する権利を独り占めできます。「実施」とは、発明を使うことです。ただし、発明には「物」「方法」「物を作る方法」の3種類があって、それぞれ「使う」の中身がちがいます。たとえば「物の発明」なら、作る・使う・売る・輸入する……が全部「実施」です。

レベル1のまとめ
  • 発明=自然のしくみを使った、作り方の工夫を、考え出したもの。「見つけただけ」「人が決めたルール」「個人のわざ」は発明ではない。
  • 実施=発明を使うこと。発明の種類(物・方法・物を作る方法)で「使う」の中身がちがう。

※「高度」の意味、プログラムの扱い、「実施」に含まれる行為の正確な一覧は、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第1項 ― 発明の定義

特許法第2条第1項(原文) この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。
要素意味これを欠くもの(審査基準 第III部 第1章 2.1 の類型)
自然法則を自然界の法則(物理・化学・生物の法則)自然法則自体(2.1.1)、自然法則に反するもの(2.1.3)、自然法則を利用していないもの(2.1.4)
利用した自然法則を「使って」いること経済法則、人為的取決め、数学上の公式、人間の精神活動のみを利用するもの(2.1.4)
技術的思想の一定の目的を達成するための具体的手段についての、客観的に伝達できる考え技能、情報の単なる提示、単なる美的創造物(2.1.5)
創作新しく作り出すこと単なる発見(2.1.2)
のうち高度のもの実用新案法の「考案」との区別特許要件の進歩性とは別の文言(青本17頁)

〔表1〕第2条第1項の5つの要素と、対応する「発明に該当しないもの」。

根拠と補足:「高度のもの」は主として実用新案法の「考案」との区別のための文言で、特許要件としての進歩性を示すものではありません。青本第22版・17頁「字句の解釈4」。審査基準第III部第1章2.1は、発明に該当しない類型として自然法則自体、単なる発見などを挙げています。

第2項 ― 特許発明

特許法第2条第2項(原文) この法律で「特許発明」とは、特許を受けている発明をいう。

「発明」と「特許発明」は別の言葉です。特許を受けている(登録されている)発明だけが「特許発明」で、第68条(特許権の効力)などで使われます。

第3項 ― 実施の定義

特許法第2条第3項(原文) この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。
一 物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあつては、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為
二 方法の発明にあつては、その方法の使用をする行為
三 物を生産する方法の発明にあつては、前号に掲げるもののほか、その方法により生産した物の使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。第2条第3項柱書を含め、2026年9月20日の施行済み条文と照合。
行為 \ 発明のカテゴリー物の発明
(第1号)
方法の発明
(第2号)
物を生産する方法の発明
(第3号)
その物の生産○――(方法の使用として捕捉)
その方法の使用―○○(第2号を含む)
(生産した)物の使用○―○
譲渡等(譲渡・貸渡し。プログラム等なら電気通信回線を通じた提供を含む)○―○
輸出○―○
輸入○―○
譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む)○―○

〔表2〕実施行為のマトリクス。方法の発明は「使用」だけ。物を生産する方法の発明は「方法の使用」+「生産した物についての行為」。

flowchart LR
  subgraph C1["物の発明"]
    A1["生産"] --- A2["使用"] --- A3["譲渡等"] --- A4["輸出・輸入"] --- A5["譲渡等の申出"]
  end
  subgraph C2["方法の発明"]
    B1["方法の使用"]
  end
  subgraph C3["物を生産する方法の発明"]
    D1["方法の使用"] --> D2["生産した物の
使用・譲渡等・輸出・輸入・譲渡等の申出"] end

【図2】3つのカテゴリーと実施行為の相関図。第3号は「方法の使用」から「生産した物」へと効力が伸びる。

第4項 ― プログラム等

特許法第2条第4項(原文) この法律で「プログラム等」とは、プログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下この項において同じ。)その他電子計算機による処理の用に供する情報であつてプログラムに準ずるものをいう。

第3項第1号の「物」には「プログラム等」が含まれます。プログラムは物の発明として扱われ、その「譲渡等」には電気通信回線を通じた提供(ネット配信)が含まれます。

レベル2のまとめ
  • 第1項:発明=自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの。5要素に分解して覚える。
  • 第2項:特許発明=特許を受けている発明。
  • 第3項:実施=物/方法/物を生産する方法の3カテゴリーごとに列挙された行為。〔表2〕のマトリクス。
  • 第4項:プログラム等の定義。プログラムは「物」の発明。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 発明該当性の判断の分岐図

flowchart TB
  A["請求項に係るもの"] --> B{"自然法則自体か?
単なる発見か?"} B -- "はい" --> N1["発明でない(2.1.1/2.1.2)"] B -- "いいえ" --> C{"自然法則に反するか?
(永久機関など)"} C -- "はい" --> N2["発明でない(2.1.3)"] C -- "いいえ" --> D{"自然法則を利用しているか?
(経済法則・人為的取決め・
数学上の公式・精神活動のみでないか)"} D -- "利用していない" --> N3["発明でない(2.1.4)"] D -- "利用している" --> E{"技術的思想か?
(技能・情報の単なる提示・
単なる美的創造物でないか)"} E -- "技術的思想でない" --> N4["発明でない(2.1.5)"] E -- "技術的思想" --> F{"示された手段で課題を解決することが
明らかに不可能ではないか"} F -- "明らかに不可能" --> N5["発明でない(2.1.6)"] F -- "そうでない" --> Y["発明に該当
→ 次に産業上の利用可能性(第29条第1項柱書)"] style Y fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style N1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N2 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N3 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N4 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N5 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

【図3】発明該当性の分岐図(審査基準 第III部 第1章 2.1 の6類型をフロー化)。順番は説明の便宜で、審査基準が順序を定めているわけではない。

類型審査基準の例(要旨)補足
2.1.1 自然法則自体エネルギー保存の法則、万有引力の法則
2.1.2 単なる発見鉱石などの天然物、自然現象の発見天然物から人為的に単離した化学物質は「創作」に当たり発明に該当しうる
2.1.3 自然法則に反するもの永久機関
2.1.4 自然法則を利用していないもの経済法則、ゲームのルール等の人為的取決め、数学上の公式、人間の精神活動、これらのみを利用するものビジネス方法そのものはここに当たる。ただしソフトウエアで具体的に実現されていれば別(下記2.)
2.1.5 技術的思想でないもの技能(個人の熟練)、情報の単なる提示(マニュアル、画像データ)、単なる美的創造物(絵画、彫刻)
2.1.6 課題を解決することが明らかに不可能なもの手段は示されているが、その手段では課題を解決できないことが明らかなもの

〔表3〕発明に該当しないものの6類型(審査基準 第III部 第1章 2.1 の要旨)。

2. ソフトウエア関連発明(審査基準 第III部 第1章 2.2)

審査基準は、ソフトウエア関連発明について次の2段階で発明該当性を判断すると説明しています(要旨)。

段階内容(要旨)
(1) 機器等の制御・物理的性質に基づく情報処理炊飯器の制御など、機器の制御または制御に伴う処理を具体的に行うもの、対象の物理的・化学的性質等に基づく情報処理を具体的に行うものは、全体として自然法則を利用しており、発明に該当する
(2) それ以外(ビジネス・ゲーム・数式計算など)「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」場合に、自然法則を利用した技術的思想の創作に該当する

〔表4〕ソフトウエア関連発明の発明該当性(審査基準 第III部 第1章 2.2 の要旨)。詳細は審査ハンドブック附属書B第1章。

根拠と補足:「ハードウエア資源を用いて具体的に実現」とは、CPU・メモリなどの装置とソフトウエアが協働し、使用目的に応じた情報処理を具体的に行うことです。「コンピュータを使う」と付け加えるだけで足りるわけではなく、請求項全体で判断します。審査基準第III部第1章2.2/特許庁・ソフトウエア関連発明の説明資料4頁。

3. 「発明該当性」と「産業上の利用可能性」の関係

第2条第1項の「発明」に当たるかどうか(発明該当性)と、第29条第1項柱書の「産業上利用することができる発明」かどうか(産業上の利用可能性)は別の要件ですが、どちらも拒絶理由としては第29条第1項柱書を根拠にします。審査基準 第III部 第1章が両者を一つの章で扱っているのはそのためです。

flowchart LR
  A["第2条第1項
発明の定義"] --> B["第29条第1項柱書
『産業上利用することができる発明をした者は…』"] C["審査基準 第III部 第1章 2.
発明該当性"] --> B D["審査基準 第III部 第1章 3.
産業上の利用可能性"] --> B B --> E["拒絶理由:第49条第2号(第29条第1項柱書)"]

【図4】第2条と第29条第1項柱書の関係。発明でないもの・産業上利用できないものは、いずれも第29条第1項柱書違反として扱われる。

産業上利用することができる発明に該当しないもの(3.1)例(要旨)
3.1.1 人間を手術、治療または診断する方法外科的処置、投薬、人体内での装置の使用、医療診断の工程を含む方法
3.1.2 業として利用できない発明個人的にのみ利用される発明、学術的・実験的にのみ利用される発明
3.1.3 実際上明らかに実施できない発明理論的には可能でも、実施が実際上考えられないもの

〔表5〕産業上利用することができる発明に該当しないもの(審査基準 第III部 第1章 3.1 の要旨)。医療行為の詳細は同章本文で確認。

4. 「実施」の定義が効いてくる場面

条文「実施」がどう使われるか
第68条 特許権の効力特許権者は業として特許発明の実施をする権利を専有する
第79条 先使用権出願の際現に日本国内で発明の実施である事業をしている者等
第101条 間接侵害「物の生産にのみ用いる物」「方法の使用にのみ用いる物」など、第2条第3項の行為類型を前提に構成
第29条第1項第2号 新規性「公然実施をされた発明」の「実施」
第48条の3第8項、第79条の2など「実施である事業」「事業の準備」

〔表6〕第2条第3項の「実施」が参照される主な条文。条文番号は各記事で確認。

5. プログラムの発明 ― 第3項第1号・第4項の整理

論点結論根拠
プログラムはどのカテゴリーか「物」の発明(物にプログラム等を含む)第2条第3項第1号括弧書き
ネット配信は実施か「譲渡等」に電気通信回線を通じた提供を含むので、実施に当たる第2条第3項第1号括弧書き
「プログラム等」の範囲プログラム+電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの第2条第4項
「プログラム」の定義電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたもの第2条第4項括弧書き

〔表7〕プログラムに関する定義規定の整理(平成14年改正で導入)。

6. 試験での問われ方

試験種別問われ方の傾向気をつける点
短答式「プログラムは物の発明か」「方法の発明の実施に生産は含まれるか」「物を生産する方法の発明で生産した物の輸出は実施か」「譲渡等の申出に展示は含まれるか」の正誤〔表2〕のマトリクス。方法の発明=使用のみ。「輸出」は平成18年改正で追加
論文式侵害事例で、被疑侵害者の行為が第2条第3項のどの実施行為に当たるかを特定させるカテゴリー(物/方法/物を生産する方法)を先に確定してから行為を当てはめる
口述「発明の定義を述べよ」「実施の定義を述べよ」第1項は原文どおり暗唱。第3項は3カテゴリー×行為で言えるように

〔表8〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

根拠と補足:平成14年改正は「物」にプログラム等を含むこととネットワークによる提供が実施に当たることを明確にし、第4項の定義を新設しました。平成18年改正は、侵害品の国際取引に対応するため「輸出」を実施行為に追加しました。青本第22版・15〜16頁。
根拠と補足:令和8年度短答式(特許・実用新案)問3では、肢イでプログラムの発明と物の発明の関係が扱われています。問3全体の公式正解は2です。公式問題/公式解答。肢イは第2条第3項第1号により正しい記述です。
レベル3のまとめ
  • 発明該当性は審査基準 第III部 第1章 2.1 の6類型で判断。ソフトウエアは「ハードウエア資源を用いて具体的に実現」が鍵(2.2)。
  • 発明該当性も産業上の利用可能性も、拒絶理由の根拠は第29条第1項柱書。
  • 実施の定義は3カテゴリー×行為のマトリクス。プログラムは物の発明で、ネット配信も譲渡等に含まれる。

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