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小学生でも分かる実用新案法|特許法第46条の2(実用新案法第12条・第39条第5項) 実用新案登録に基づく特許出願 ― 実用新案の側から見た「乗り換え」のルール

小学生でもわかる実用新案法:実用新案登録に基づく特許出願(特許法第46条の2)

小学生でも分かる実用新案法 / B. 出願・登録・評価の手続 #16

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いったん登録された実用新案を「やっぱり特許にしたい」ときの道が、特許法第46条の2です。特許法シリーズの記事では特許側の要件を扱いました。この記事では、実用新案法の側に置かれた規定 ― 実用新案権を手放すこと、技術評価の請求との関係(実用新案法第12条第3項・第7項)、無効審判との関係(同法第39条第5項)― に絞って、「いつまでなら乗り換えられるか」を分岐図で整理します。

条文:特許法第46条の2、実用新案法第12条、第39条第5項関連:実用新案法第3条の2、第14条の2第1項、特許法第29条の2参照時点:2026年9月

目次

LEVEL 1イメージでつかむ

実用新案は「早く建てられる小さい家」

実用新案は、特許庁が中身をくわしく調べずに、早く登録してくれる権利です。「小さい家」を早く建てられるようなものです。でも、守ってもらえる期間は特許より短く、権利を使うときには「技術評価書(ぎじゅつひょうかしょ)」という成績表を見せなければならない、といったルールがあります。

あとから「このアイデアはもっと大事だった。しっかり調べてもらって、大きい家(特許)にしたい」と思うことがあります。そのときに使えるのが、実用新案登録に基づく特許出願です。

土地=実用新案登録出願の日 実用新案権 小さい家(早く建つ) 乗り換え 同じ土地=同じ出願日を使える 特許出願 大きい家(しっかり調べてから建つ) 小さい家は「放棄」する(手放す) 大きい家を建て直す

図は左右にスクロールできます。

凡例
実用新案(小さい家)
特許(大きい家)
乗り換え(必ず実用新案権を放棄する)

【図1】実用新案登録に基づく特許出願のイメージ。小さい家(実用新案権)は手放すが、土地(出願日)は原則そのまま使える。※乗り換えられるのは決められた時期までで、すぎるとできない(→【図2】)。※「同じ土地」(出願日をさかのぼって扱うこと)が使えない場合もある(→レベル3)。※説明の都合上、手続の細部は省略した。

乗り換えには「しめ切り」と「できなくなる出来事」がある

乗り換えは、いつでもできるわけではありません。出願した日から3年というしめ切りがあります。それだけでなく、次のような出来事があると、3年以内でも乗り換えられなくなります。

  • 自分で「成績表(技術評価書)をください」と特許庁にたのんだとき。
  • ほかの人が成績表をたのみ、「たのまれましたよ」と知らせが来てから30日がすぎたとき。
  • ほかの人から「この登録は無効だ」という審判を起こされ、最初の反論のしめ切りがすぎたとき。

「成績表を見て、悪かったから特許に逃げる」「無効だと言われてから逃げる」のを防ぐためのルールです。

レベル1のまとめ

  • 登録された実用新案をもとに、特許出願をすることができる(特許法第46条の2)。そのとき実用新案権は手放す。
  • 出願日は原則そのまま使える。
  • 出願から3年というしめ切りのほかに、「自分で成績表をたのんだ」「ほかの人の成績表の知らせから30日」「無効審判の最初の反論期限」がすぎると乗り換えられない。

※「出願日がそのまま」には例外があり、「手放す」にも承諾が必要な人がいます。正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。


LEVEL 2条文の骨格

特許法第46条の2の構造(実用新案側から読む)

項 内容(要旨) 実用新案法とのつながり
第1項柱書 実用新案権者は、次の場合を除き、省令で定めるところにより、自己の実用新案登録に基づいて特許出願ができる。この場合、その実用新案権を放棄しなければならない 放棄の主体は実用新案権者
第1項第1号 実用新案登録出願の日から3年を経過したとき 実用新案権の存続期間(第15条)内の前半
第1項第2号 出願人または実用新案権者自身が実用新案技術評価(実用新案法第12条第1項)の請求をしたとき 実用新案法第12条第1項
第1項第3号 出願人・実用新案権者でない者がした技術評価請求に係る実用新案法第13条第2項の最初の通知を受けた日から30日を経過したとき 実用新案法第13条第2項の通知
第1項第4号 実用新案登録無効審判(実用新案法第37条第1項)について、同法第39条第1項により最初に指定された期間(答弁書提出期間)を経過したとき 実用新案法第37条・第39条第1項
第2項 明細書等に記載した事項が基礎とされた実用新案登録の明細書等に記載した事項の範囲内にあるものに限り、実用新案登録出願の時にしたものとみなす。ただし、第29条の2の他の特許出願・実用新案法第3条の2の特許出願に該当する場合の適用、第30条第3項・第36条の2第2項ただし書・第48条の3第2項の適用は除く 実用新案法第3条の2(拡大先願)
第3項 第1号・第3号の期間を責めに帰することができない理由で守れないときは、理由がなくなった日から14日(在外者2月)以内で期間経過後6月以内に出願できる 第2号・第4号には救済なし
第4項 専用実施権者、質権者、一定の通常実施権者があるときは、その承諾を得た場合に限り出願できる 実用新案法第11条第3項・第18条第3項・第19条第1項
第5項 第44条第3項・第4項を準用 提出書面のみなし提出等

〔表1〕特許法第46条の2の項ごとの内容(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。特許側の詳細は特許法シリーズの記事を参照。

特許法第46条の2第1項柱書実用新案権者は、次に掲げる場合を除き、経済産業省令で定めるところにより、自己の実用新案登録に基づいて特許出願をすることができる。この場合においては、その実用新案権を放棄しなければならない。
特許法第46条の2第1項第1号その実用新案登録に係る実用新案登録出願の日から三年を経過したとき。
特許法第46条の2第1項第2号その実用新案登録に係る実用新案登録出願又はその実用新案登録について、実用新案登録出願人又は実用新案権者から実用新案法第十二条第一項に規定する実用新案技術評価(次号において単に「実用新案技術評価」という。)の請求があつたとき。
特許法第46条の2第1項第3号その実用新案登録に係る実用新案登録出願又はその実用新案登録について、実用新案登録出願人又は実用新案権者でない者がした実用新案技術評価の請求に係る実用新案法第十三条第二項の規定による最初の通知を受けた日から三十日を経過したとき。
特許法第46条の2第1項第4号その実用新案登録について請求された実用新案法第三十七条第一項の実用新案登録無効審判について、同法第三十九条第一項の規定により最初に指定された期間を経過したとき。
flowchart TD
  S["実用新案権者が特許出願をしたい"] --> Q1{"実用新案登録出願の日から3年を経過していないか 第1号"}
  Q1 -- "はい" --> Q2{"自分(出願人・実用新案権者)が技術評価を請求していないか 第2号"}
  Q1 -- "いいえ" --> NG1["× できない 第1号
第3項の救済あり"] Q2 -- "はい" --> Q3{"他人がした技術評価請求に係る実用新案法第13条第2項の最初の通知から30日を経過していないか 第3号"} Q2 -- "いいえ" --> NG2["× できない 第2号
救済なし"] Q3 -- "はい" --> Q4{"無効審判で実用新案法第39条第1項により最初に指定された答弁書提出期間を経過していないか 第4号"} Q3 -- "いいえ" --> NG3["× できない 第3号
第3項の救済あり"] Q4 -- "はい" --> Q5{"専用実施権者・質権者・一定の通常実施権者の承諾があるか 第4項"} Q4 -- "いいえ" --> NG4["× できない 第4号
救済なし"] Q5 -- "はい" --> OK["○ 特許出願できる
実用新案権は放棄"] Q5 -- "いいえ" --> NG5["× できない 第4項
承諾がない"] NG1 -. "責めに帰することができない理由 第3項" .-> R["期限の救済。ほかの除外事由がなく、必要な承諾を得た場合に出願できる
理由がなくなった日から14日 在外者2月 以内で期間経過後6月以内"] NG3 -. "責めに帰することができない理由 第3項" .-> R style OK fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style R fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style NG1 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F style NG2 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F style NG3 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F style NG4 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F style NG5 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

凡例
○ 特許出願できる
× 特許出願できない(除外事由)
原則の判断の流れ
例外の救済ルート(第3項)

【図2】「どの時点まで実用新案登録に基づく特許出願ができるか」の分岐図(特許法第46条の2第1項・第3項・第4項、2026年9月時点)。判断は「はい」なら下へ進み、「いいえ」なら右の除外事由(第1号〜第4号)へ抜ける。第3項の救済は第1号・第3号にだけ用意されている。※説明の都合上、救済を受けるための手続(第3項の書面の提出など)は省略した。

実用新案法第12条:技術評価の請求と特許出願の関係

項 内容(要旨) 特許出願との関係
第1項 何人も、出願または登録について、第3条第1項第3号・第2項、第3条の2、第7条第1項〜第3項・第6項に係る技術的な評価(実用新案技術評価)を請求できる。請求項ごとの請求も可 自分の請求→第2号、他人の請求→第3号の起点
第2項 実用新案権の消滅後も請求できる。ただし無効審判で無効にされた後は不可 消滅後も請求できるが、第3項により特許出願がされた後は不可
第3項 第1項・第2項にかかわらず、特許法第46条の2第1項の特許出願がされた後は、請求できない 特許出願後の新規請求は封じられる
第4項 請求があったときは審査官に技術評価書を作成させる
第5項 特許法第47条第2項を準用
第6項 請求は取り下げることができない 自分で請求した後は撤回して第2号を免れることはできない
第7項 出願人・実用新案権者でない者の請求の後に特許出願がされたときは、その請求はされなかったものとみなす。特許庁長官は請求人に通知 他人の請求が特許出願で失効する

〔表2〕実用新案法第12条の項ごとの内容(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。

実用新案法第12条第3項前二項の規定にかかわらず、第一項の規定による請求は、その実用新案登録に基づいて特許法第四十六条の二第一項の規定による特許出願がされた後は、することができない。
実用新案法第12条第7項実用新案登録出願人又は実用新案権者でない者から第一項の規定による請求があつた後に、その請求に係る実用新案登録(実用新案登録出願について同項の規定による請求があつた場合におけるその実用新案登録出願に係る実用新案登録を含む。)に基づいて特許法第四十六条の二第一項の規定による特許出願がされたときは、その請求は、されなかつたものとみなす。この場合において、特許庁長官は、その旨を請求人に通知しなければならない。

実用新案法第39条第5項:無効審判の請求人への通知

実用新案法第39条第5項審判長は、実用新案登録無効審判の請求があつた場合において、その請求後にその実用新案登録に基づいて特許法第四十六条の二第一項の規定による特許出願がされたときは、その旨を請求人及び参加人に通知しなければならない。

無効審判が請求されたあとでも、第39条第1項の最初の答弁書提出期間が経過するまでは特許出願ができます(特許法第46条の2第1項第4号の反対解釈)。そのとき実用新案権は放棄されるため、審判長は請求人と参加人に「特許出願がされた」ことを知らせます。

sequenceDiagram
    participant X as 無効審判請求人
    participant J as 審判長
    participant U as 実用新案権者
    participant P as 特許庁長官
    X->>J: 実用新案登録無効審判の請求 実用新案法第37条第1項
    J->>U: 請求書副本の送達と答弁書提出期間の指定 第39条第1項
    U->>P: 他の要件も満たし、答弁書提出期間の経過前に実用新案登録に基づく特許出願 特許法第46条の2第1項
    Note over U: 実用新案権を放棄
    J->>X: 特許出願がされた旨を請求人・参加人に通知 第39条第5項
    Note over X,J: 答弁書提出期間の経過後は特許出願できない 第46条の2第1項第4号

図は左右にスクロールできます。

凡例
縦線3者(請求人・審判長・実用新案権者)の時間の流れ
条文上必ず行われる請求・送達・通知
上→下時間の進む向き(期間の長さは表さない)

【図3】無効審判と実用新案登録に基づく特許出願の順序(実用新案法第39条第1項・第5項、特許法第46条の2第1項第4号)。上から下へ時間が進むが、※時間軸は縮尺なし。放棄後も無効審判は続き得る(第37条第3項)。

レベル2のまとめ

  • 特許法第46条の2第1項:実用新案権者は自己の実用新案登録に基づいて特許出願でき、そのとき実用新案権を放棄する。除外事由は「3年経過」「自分の技術評価請求」「他人の技術評価請求の最初の通知から30日経過」「無効審判の最初の答弁書提出期間経過」の4つ。
  • 実用新案法第12条第3項:特許出願後は技術評価を請求できない。第7項:他人の請求は特許出願で「されなかったものとみなす」。第6項:請求は取り下げられない。
  • 実用新案法第39条第5項:無効審判請求後に特許出願がされたら、審判長が請求人・参加人に通知。


LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 4つの除外事由の整理

号 事由 起点となる行為の主体 第3項の救済 実用新案法側の対応規定
第1号 実用新案登録出願の日から3年経過 ―(時の経過) あり 第15条(存続期間10年)の前半
第2号 出願人・実用新案権者自身の技術評価請求 自分 なし 第12条第1項・第6項(取下げ不可)
第3号 他人の技術評価請求について第13条第2項の最初の通知から30日経過 他人(何人も) あり 第12条第1項・第7項、第13条第2項
第4号 無効審判について第39条第1項で最初に指定された期間の経過 他人(審判請求人) なし 第37条第1項、第39条第1項・第5項

〔表3〕除外事由と実用新案法側の対応規定。第2号・第4号に第3項の救済がないのは条文の文言(「第一号又は第三号に規定する期間」)による。

4つの除外事由の理由3年の制限は特許の審査請求期間を実質的に延ばさないためです。自分で評価を請求した後の禁止は二重の審査を避けるため、他人の請求後の30日は本人に選択の機会を残すためです。無効審判の最初の答弁期間後の禁止は、請求人の負担と二重の審理を避けるためです。青本第22版・特許法46条の2(201〜202頁)。

2. 技術評価請求と特許出願のタイミング関係

技術評価の請求は「だれが」「いつ」したか 自分が請求 その時点で 特許出願は不可 特許法第46条の2第1項第2号 請求の取下げもできない 実用新案法第12条第6項 他人が請求(出願前) 最初の通知から 30日以内なら出願可 特許法第46条の2第1項第3号 出願すれば他人の請求は されなかったものとみなす 特許出願の後 だれも技術評価を 請求できない 実用新案法第12条第3項 出願前の他人の請求は 実用新案法第12条第7項 この30日以内は特許出願できる 実用新案登録出願 他人の請求に係る最初の通知 特許出願(この例) 30日の経過 出願日から3年

図は左右にスクロールできます。

凡例
自分(出願人・実用新案権者)の請求
他人の請求と30日の期間
実用新案登録に基づく特許出願
●時点(丸)/帯=期間

【図4】技術評価請求と特許出願の前後関係(特許法第46条の2第1項第2号・第3号、実用新案法第12条第3項・第6項・第7項、2026年9月時点)。※時間軸は縮尺なし。※説明の都合上、第3項の救済と第4号(無効審判)は【図2】に譲り、この図では省略した。※実用新案権は放棄されるが、実用新案掲載公報は設定登録後に発行される(特許出願時点で未発行の場合もある)。

場面 特許出願はできるか 技術評価請求はどうなるか 根拠
自分が技術評価を請求した後 できない 請求は有効に進む(取下げ不可) 特許法第46条の2第1項第2号、実用新案法第12条第6項
他人が請求し、最初の通知から30日以内 できる 特許出願がされると、されなかったものとみなす(請求人に通知) 特許法第46条の2第1項第3号、実用新案法第12条第7項
他人が請求し、最初の通知から30日経過後 できない(責めに帰することができない理由があれば第3項の救済) 請求は有効に進む 特許法第46条の2第1項第3号・第3項
特許出願がされた後 ― 新たな請求はできない(何人も) 実用新案法第12条第3項
実用新案権の消滅後で、特許出願がされていない場合 ― 請求できる(無効審判で無効にされた後は不可) 実用新案法第12条第2項

〔表4〕技術評価請求と特許出願のタイミング別マトリクス。「されなかったものとみなす」の対象は他人の請求だけ(実用新案法第12条第7項の主語)。

審査基準 第X部第2章(実用新案技術評価)は、実用新案法第12条第2項について「無効審判により無効にされた後は、実用新案技術評価の請求ができない」と説明しています。第12条第3項により、その登録に基づく特許出願後は新たな評価請求ができません。

3. 無効審判との関係

時点 特許出願 審判の扱い(条文で確認できる範囲) 根拠
無効審判請求前 できる(他の除外事由がなければ) ― 特許法第46条の2第1項
請求後、第39条第1項の最初の答弁書提出期間内 できる 審判長が請求人・参加人に通知 特許法第46条の2第1項第4号、実用新案法第39条第5項
最初の答弁書提出期間の経過後 できない(第3項の救済もない) 審判が進む 特許法第46条の2第1項第4号・第3項

〔表5〕無効審判と実用新案登録に基づく特許出願。答弁書提出期間は第39条第1項で審判長が「相当の期間を指定」するもので、日数は条文にない。

実用新案権を放棄しても審判は続く実用新案法37条3項は権利消滅後の無効審判を認めています。したがって、特許出願に伴う放棄だけで係属中の無効審判が当然に終了することはありません。基礎とした実用新案登録が後に無効となっても、そのこと自体は特許出願に影響しません。実用新案法37条3項・39条5項/青本・特許法204頁の参考1。

4. 訂正(実用新案法第14条の2第1項)との対比

実用新案法第14条の2第1項の訂正も「次に掲げる場合を除き」と定め、技術評価・無効審判との関係で時期的制限を置いています。特許法第46条の2と並べると、起点と期間が微妙に違うことが分かります。

実用新案法第14条の2第1項第1号第十三条第三項の規定による最初の実用新案技術評価書の謄本の送達があつた日から二月を経過したとき。
実用新案法第14条の2第1項第2号実用新案登録無効審判について、第三十九条第一項の規定により最初に指定された期間を経過したとき。
論点 実用新案登録に基づく特許出願(特許法第46条の2第1項) 訂正(実用新案法第14条の2第1項)
技術評価との関係の起点 他人の請求に係る第13条第2項の最初の通知を受けた日 第13条第3項の最初の技術評価書の謄本の送達があった日
期間 30日 2月
自分の技術評価請求 請求があった時点で不可(第2号) 第1号は請求者を区別していない(謄本送達から2月)
無効審判との関係 第39条第1項の最初に指定された期間の経過で不可(第4号) 同じ(第2号)
時の経過による制限 出願日から3年(第1号) 回数制限(一回に限り)。請求項削除目的の訂正は別(第7項)

〔表6〕実用新案登録に基づく特許出願と訂正の時期的制限の対比(e-Gov法令検索、2026年9月参照)。

5. 実用新案掲載公報が「引用」になる(第2項ただし書)

特許法第46条の2第2項本文により、特許出願は実用新案登録出願の時にしたものとみなされます(明細書等の記載事項の範囲内に限る)。ただし書は、この特許出願が特許法第29条の2の「他の特許出願」や実用新案法第3条の2の「特許出願」に該当する場合には、遡及を適用しないとしています。

特許法第46条の2第2項前項の規定による特許出願は、その願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が当該特許出願の基礎とされた実用新案登録の願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にあるものに限り、その実用新案登録に係る実用新案登録出願の時にしたものとみなす。ただし、その特許出願が第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案法第三条の二に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用並びに第三十条第三項、第三十六条の二第二項ただし書及び第四十八条の三第二項の規定の適用については、この限りでない。

ここで注意したいのは、基礎となった実用新案登録については、すでに実用新案掲載公報が発行されている点です。実用新案法第3条の2および特許法第29条の2は、先の実用新案登録出願について「実用新案掲載公報の発行」がされたことを要件の一つにしています(各条の記事を参照)。したがって、実用新案登録に基づく特許出願が「攻める側(後願を排除する側)」になるときは、この特許出願自体の日ではなく、元の実用新案登録出願と実用新案掲載公報が第3条の2・第29条の2の引用として機能し、特許出願自体は現実の出願日で扱われる、という構造になります。

flowchart LR
  subgraph A["実用新案登録に基づく特許出願が『守られる側』"]
    direction TB
    A1["新規性・進歩性・先願などの判断"] --> A2["○ 実用新案登録出願の時にしたものとみなす 第2項本文"]
  end
  subgraph B["同じ特許出願が『攻める側』"]
    direction TB
    B1["第29条の2の他の特許出願・実用新案法第3条の2の特許出願として"] --> B2["× 遡及しない 第2項ただし書"]
    B2 --> B3["元の実用新案登録出願が、公報発行等の拡大先願の要件を満たせば引用となる"]
  end
  style A2 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
  style B2 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

凡例
○ 出願日がさかのぼる(第2項本文)
× さかのぼらない(第2項ただし書)

【図5】第2項本文とただし書の役割分担。左右の2つのレーンは、同じ1つの特許出願を「守られる側」「攻める側」から見たもの。ただし書の対象には第30条第3項、第36条の2第2項ただし書、第48条の3第2項も含まれる(本文で列挙)。※説明の都合上、この図では第29条の2・実用新案法第3条の2に関する部分だけを示した。

拡大先願で使う出願を区別する46条の2第2項ただし書により、新しい特許出願自体を拡大先願として使う際は出願日がさかのぼりません。一方、元の実用新案登録出願は別の出願として残り、その当初明細書等、出願日、公報発行日、考案者・出願人など、3条の2又は29条の2の要件を満たす場合に後願を排除します。公報が発行されたというだけで、常に排除できるわけではありません。実用新案法3条の2/特許法29条の2・46条の2。

6. 特許法第46条(出願の変更)との違い

論点 出願の変更(特許法第46条第1項) 実用新案登録に基づく特許出願(特許法第46条の2)
基礎となるもの 係属中の実用新案登録出願 登録済みの実用新案登録(実用新案権)
主体 実用新案登録出願人 実用新案権者
元のものの扱い 元の出願は取り下げたものとみなす(第46条第4項、要旨) 実用新案権を放棄しなければならない(第46条の2第1項柱書)
時期的制限 出願日から3年(第46条第1項、要旨) 出願日から3年に加え、技術評価・無効審判に関する3つの除外事由
第三者の承諾 規定なし 専用実施権者・質権者・一定の通常実施権者の承諾(第4項)
実用新案掲載公報 登録前なので未発行 設定登録後に発行(特許出願時に未発行の場合もある)。第29条の2・第3条の2の引用になりうる

〔表7〕特許法第46条と第46条の2の対比。第46条の内容は特許法シリーズの記事「特許法第46条・第46条の2 出願の変更」を参照(本表では要旨のみ)。

特許庁の知的財産権制度入門テキスト(2025年版)第2節は、実用新案登録に基づく特許出願について、「出願人が評価請求をした場合、他人から評価請求があった旨の最初の通知から30日を経過した場合、無効審判における最初の答弁書提出期間を経過した場合のいずれかに該当したときはできない」と説明しています。

7. 試験での問われ方

試験種別 問われ方の傾向 気をつける点
短答式 4つの除外事由の主体と期間(自分の請求/他人の請求から30日/答弁書提出期間/3年)、第3項の救済が第1号・第3号だけであること、第12条第3項・第7項の効果、第39条第5項の通知の相手(請求人及び参加人) 「30日」と訂正の「2月」を混同しない。「されなかったものとみなす」のは他人の請求だけ
論文式 技術評価請求や無効審判が係属する事例で、実用新案権者がとりうる手段(特許出願・訂正・答弁)を時系列で整理させる問題 特許法第46条の2と実用新案法第14条の2の起点の違いを表で整理しておく
口述 実用新案権を放棄させる理由、第2項ただし書の趣旨 第三者の監視負担と二重審査を避けるための放棄。出願日の遡及には第2項ただし書の例外がある(青本200〜203頁)

〔表8〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

令和8年度短答の関連問題問16の肢4では、権利者が請求項1の技術評価を自ら請求済みです。その後に第三者が請求項2の評価を請求しても、請求項2だけを特許請求の範囲に記載して登録に基づく特許出願をすることはできません(特許法第46条の2第1項第2号)。この肢は誤りで、問16の公式正解は3です。 問題原文/公式正解。公式正解番号と、ここで示した肢の理由の条文照合は区別しています。
レベル3のまとめ

  • 実用新案権者は、4つの除外事由(3年経過/自分の技術評価請求/他人の技術評価請求の最初の通知から30日/無効審判の最初の答弁書提出期間経過)に当たらない限り、自己の実用新案登録に基づいて特許出願でき、実用新案権を放棄する。第3項の救済は第1号・第3号のみ。
  • 実用新案法第12条第3項:特許出願後は何人も技術評価を請求できない。第7項:他人の請求は特許出願で「されなかったものとみなす」(請求人に通知)。第6項:自分の請求は取り下げられない。
  • 実用新案法第39条第5項:無効審判請求後に特許出願がされたら審判長が請求人・参加人に通知。
  • 第2項ただし書により、この特許出願が第29条の2・第3条の2の「先の出願」側になるときは遡及せず、元の実用新案登録出願が、公報発行等の拡大先願の要件を満たせば引用となる構造(各出願につき拡大先願の要件を別に判断する)。
  • 訂正(実用新案法第14条の2第1項)の時期的制限は「評価書謄本送達から2月」で、特許出願の「最初の通知から30日」とは起点も期間も違う。

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