小学生でも分かる意匠法 / B. 出願・審査・登録の手続 #12
特許なら「明細書と特許請求の範囲」が発明の中身を説明します。意匠には文章で書く「請求の範囲」がありません。そのかわり、願書に添付した図面(または写真・ひな形・見本)に現れたものが、そのまま出願した意匠の中身になり、登録後の権利範囲(意匠法第24条第1項)もそれで決まります。意匠法第6条は、その願書と図面等に何をどう書くかを定めた条文です。
レベル2条文の骨格 ― 第1項(願書・図面)、第2項(写真・ひな形・見本)、第3項(材質・大きさ)、第4項(動くもの)、第5項・第6項(色の省略)、第7項(透明)
レベル3要件・例外・試験での問われ方 ― 施行規則の要件、記載不備が「拒絶理由」になる経路、第24条第1項との関係、特許法・実用新案法との対比
LEVEL 1イメージでつかむ
「申込書」と「設計図」をセットで出す
あなたが、持ち手が波の形をしたコップのデザインを登録してほしいとします。特許庁に出すのは2つです。1つ目は願書(がんしょ)。これは「だれが」「どんな物の」デザインを申し込むのかを書いた申込書です。2つ目は図面。これはコップをいろいろな向きから見た絵で、「どんなデザインか」を見せる設計図です。
意匠のおもしろいところは、「どんなデザインか」を文章では説明しないことです。文章で「波の形の持ち手」と書いても、波の高さや数は人によって想像がちがいます。だから、絵(図面)で見せます。図面がうまく描けていれば、だれが見ても同じデザインが分かります。
図は左右にスクロールできます。
【図1】意匠登録出願は「願書+図面」のセット。図面のかわりに「写真」「ひな形(模型)」「見本(本物)」を出せる場合もある(意匠法第6条第2項)。※願書には、必要に応じて材質・大きさ(同条第3項)、彩色を省略した旨(同条第6項)、透明であること(同条第7項)も記載する(→レベル2)。※図中のコップの絵は模式的なもので、意匠法施行規則 様式第6が定める正投影図法による作図例ではない。線は実線1種類に統一し、寸法線・陰影・中心線は省略している。(2026年9月時点の法令による)
図面が「権利の広さ」まで決める
図面は、出願のときだけ使うものではありません。登録されたあと、「このコップは私の意匠のまねだ」と言えるかどうかも、願書に書いたことと図面に描いたデザインをもとに決めます。図面に描いていないデザインは、あとから「本当はこういうつもりだった」と言っても守ってもらえません。だから、図面はとても大事です。
図は左右にスクロールできます。
【図2】同じ「願書+図面等」が、出願時の意匠の特定と、登録後の権利範囲の両方の土台になる。
願書に書き足すことがある場合
開いたり回ったりして形が変わる物で、変わる前後を守ってほしいとき → そのことと動き方を書く
色をつけた図面で、白か黒のどちらか1色だけ塗らないとき → 塗らなかったことを書く
ガラスのコップのように透明なとき → 透明なことを書く
- 意匠の出願は「願書(申込書)+図面(設計図)」をセットで特許庁長官に出す。
- 意匠の中身は文章ではなく図面で見せる。図面のかわりに写真・ひな形・見本を出せる場合もある。
- 図面は登録後の権利の広さも決めるので、とても大事。
※写真・ひな形・見本を出せる場合の条件、材質・大きさ・色・透明を書かなければならない場合の条件は、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。
LEVEL 2条文の骨格
第1項 ― 願書の記載事項と図面の添付
意匠登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書に意匠登録を受けようとする意匠を記載した図面を添付して特許庁長官に提出しなければならない。
一 意匠登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 意匠の創作をした者の氏名及び住所又は居所
三 意匠に係る物品又は意匠に係る建築物若しくは画像の用途
| 号 | 記載事項 | 意味 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 第1号 | 意匠登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所 | だれが出願するか | 法人なら「名称」 |
| 第2号 | 意匠の創作をした者の氏名及び住所又は居所 | だれが創作したか | 創作者は自然人のみ(「名称」がない) |
| 第3号 | 意匠に係る物品又は意匠に係る建築物若しくは画像の用途 | 何の意匠か | 令和元年改正で建築物・画像が追加(→ 現行と改正前の区別は下記) |
| (柱書) | 意匠登録を受けようとする意匠を記載した図面 | どんな意匠か | 願書に「添付」。図面が原則、写真等は第2項の例外 |
〔表1〕第1項の分解。願書の3つの記載事項と、図面の添付。
第6条第1項第3号の旧文言は「意匠に係る物品」です(2020年1月1日時点の条文)。この改正は2020年4月1日施行で、令和元年法律第3号附則第2条第1項により、同日以後の出願には改正後、それより前の出願には従前の規定が適用されます。
第2項 ― 図面に代えて写真・ひな形・見本
経済産業省令で定める場合は、前項の図面に代えて、意匠登録を受けようとする意匠を現わした写真、ひな形又は見本を提出することができる。
この場合は、写真、ひな形又は見本の別を願書に記載しなければならない。
「経済産業省令で定める場合」の中身は、意匠法施行規則が定めています。
意匠法第六条第二項の規定により同条第一項の図面に代えて写真を提出することができる場合は、写真により意匠が明瞭に現される場合とする。
写真を提出するときは、様式第七によらなければならない。
意匠法第六条第二項の規定により同条第一項の図面に代えてひな形又は見本を提出することができる場合は、そのひな形又は見本が次の各号に該当するものである場合とする。
一 こわれにくいもの又は容易に変形し若しくは変質しないもの
二 取扱い又は保存に不便でないもの
三 次項の規定により袋に納めた場合において、その厚さが七ミリメートル以下のもの
四 その大きさが縦二十六センチメートル、横十九センチメートル以下のもの。ただし、薄い布地又は紙地を用いるときは、縦横それぞれ一メートル以下の大きさのものとすることを妨げない。
第3項 ― 材質・大きさの記載
第一項第三号の意匠に係る物品若しくは意匠に係る建築物の用途の記載又は願書に添付した図面、写真若しくはひな形によつてはその意匠の属する分野における通常の知識を有する者がその意匠に係る物品又は建築物の材質又は大きさを理解することができないためその意匠を認識することができないときは、その意匠に係る物品又は建築物の材質又は大きさを願書に記載しなければならない。
第4項 ― 機能に基づいて変化する意匠(動的意匠)
意匠に係る物品の形状、模様若しくは色彩、建築物の形状、模様若しくは色彩又は画像がその物品、建築物又は画像の有する機能に基づいて変化する場合において、その変化の前後にわたるその物品の形状等、建築物の形状等又は画像について意匠登録を受けようとするときは、その旨及びその物品、建築物又は画像の当該機能の説明を願書に記載しなければならない。
第5項・第6項 ― 彩色の省略
第一項又は第二項の規定により提出する図面、写真又はひな形にその意匠の色彩を付するときは、白色又は黒色のうち一色については、彩色を省略することができる。
前項の規定により彩色を省略するときは、その旨を願書に記載しなければならない。
第7項 ― 透明な意匠
第一項の規定により提出する図面に意匠を記載し、又は第二項の規定により提出する写真若しくはひな形に意匠を現す場合において、その意匠に係る物品、建築物又は画像の全部又は一部が透明であるときは、その旨を願書に記載しなければならない。
| 項 | テーマ | いつ | 何をする | 対象 |
|---|---|---|---|---|
| 第1項 | 願書・図面 | 常に | 3事項を記載した願書に図面を添付して提出 | 物品・建築物・画像 |
| 第2項 | 写真・ひな形・見本 | 経済産業省令で定める場合(任意) | 図面に代えて提出できる。その別を願書に記載(必須) | ― |
| 第3項 | 材質・大きさ | 当業者が材質・大きさを理解できず意匠を認識できないとき | 材質又は大きさを願書に記載(必須) | 物品・建築物(画像は対象外) |
| 第4項 | 機能に基づく変化 | 変化の前後にわたる形状等・画像について登録を受けようとするとき(任意) | その旨と当該機能の説明を願書に記載(必須) | 物品・建築物・画像 |
| 第5項 | 彩色の省略 | 図面・写真・ひな形に色彩を付するとき(任意) | 白色又は黒色のうち一色の彩色を省略できる | 図面・写真・ひな形(見本は対象外) |
| 第6項 | 省略の記載 | 第5項で省略するとき | その旨を願書に記載(必須) | ― |
| 第7項 | 透明 | 全部又は一部が透明であるとき | その旨を願書に記載(必須) | 物品・建築物・画像(図面・写真・ひな形。見本は対象外) |
〔表2〕第1項〜第7項の一覧。「任意」は出願人が選べること、「必須」は選んだ場合や該当する場合に願書への記載が義務になること。
flowchart TB
A["意匠登録を受けようとする者"] --> B["願書(第1項第1号〜第3号を記載)"]
B --> C{"意匠を何で現すか"}
C -- "原則" --> D["図面を添付(第1項)
様式第6(施行規則第3条)"]
C -- "写真で意匠が明瞭に現される場合
(施行規則第4条)" --> E["写真(第2項)
様式第7"]
C -- "施行規則第5条第1項の各号に該当する場合" --> F["ひな形又は見本(第2項)
袋に納め様式第8の用紙をはり付け"]
E --> G["写真・ひな形・見本の別を願書に記載(第2項後段)"]
F --> G
D --> H["必要に応じて願書に追加記載
第3項 材質・大きさ/第4項 変化と機能の説明/
第6項 彩色省略の旨/第7項 透明の旨"]
G --> H
H --> I["特許庁長官に提出"]
style I fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
図は左右にスクロールできます。
【図3】意匠法第6条と意匠法施行規則第2条〜第5条による出願書類の組立て。凡例:緑=手続の到達点(特許庁長官への提出)。分岐は三択のため「はい/いいえ」ではなく選択肢をそのまま示した。(2026年9月時点の法令による)
図面等が「登録意匠の範囲」を決める ― 意匠法第24条第1項
登録意匠の範囲は、願書の記載及び願書に添附した図面に記載され又は願書に添附した写真、ひな形若しくは見本により現わされた意匠に基いて定めなければならない。
- 第1項:出願人・創作者・物品等の用途を記載した願書に、意匠を記載した図面を添付して特許庁長官に提出する。
- 第2項:経済産業省令(意匠法施行規則第4条・第5条)で定める場合は、図面に代えて写真・ひな形・見本を提出できる。その別を願書に記載する。
- 第3項〜第7項:材質・大きさ、機能に基づく変化、彩色の省略、透明について、該当する場合は願書に記載する。
- 願書の記載と図面等に現された意匠が、登録意匠の範囲を決める(第24条第1項)。
LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方
1. 願書・図面等の位置づけ(審査基準 第II部 第1章)
意匠審査基準 第II部 第1章「意匠登録出願に係る意匠の認定」1. 概要は、出願された意匠の認定は、願書の記載及び願書に添付した図面等により表された意匠に基づいて、その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて総合的に行う、としています。また、「参考図」として表された図における、他の図と異なる形状、模様又は色彩は、出願の意匠の形状等の認定において考慮しない旨を説明しています。
2. 意匠法施行規則が定める様式と代用の要件
| 書類 | 根拠 | 様式 | 要件 |
|---|---|---|---|
| 願書(通常の出願) | 施行規則第2条第1項 | 様式第2 | ― |
| 願書(分割出願:意匠法第10条の2第1項) | 施行規則第2条第2項 | 様式第3 | 別記事 #14 |
| 願書(変更出願:意匠法第13条第1項・第2項) | 施行規則第2条第3項 | 様式第4 | 別記事 #15 |
| 願書(補正後の新出願:意匠法第17条の3第1項) | 施行規則第2条第4項 | 様式第5 | 別記事 #13 |
| 図面 | 施行規則第3条 | 様式第6 | 備考8〜12・15等:十分な数の図、投影図の代用、部分の特定、追加図 |
| 写真 | 施行規則第4条 | 様式第7 | 写真により意匠が明瞭に現される場合 |
| ひな形・見本 | 施行規則第5条 | 様式第8(袋にはり付ける用紙) | ①こわれにくい又は容易に変形・変質しない、②取扱い・保存に不便でない、③袋に納めて厚さ7mm以下、④縦26cm・横19cm以下(薄い布地・紙地は縦横各1m以下も可。7mm以下に折りたたむ) |
〔表3〕意匠法施行規則第2条〜第5条の様式と要件(e-Gov法令検索、2026年9月参照)。
図は左右にスクロールできます。
【図4】ひな形・見本を提出できる要件の模式図(意匠法施行規則第5条第1項)。寸法は袋に納めた状態のもの。凡例は図中に記載。出典:e-Gov法令検索(意匠法施行規則)、2026年9月参照。
3. 記載不備はどの経路で問題になるか
意匠法第6条は、拒絶理由を限定列挙した意匠法第17条各号に挙げられていません(第17条第1号が引用するのは第3条、第3条の2、第5条、第8条、第8条の2、第9条第1項・第2項、第10条第1項・第4項・第6項、第15条第1項で準用する特許法第38条、第68条第3項で準用する特許法第25条)。したがって第6条の不備は、次の2つの経路で扱われます。
flowchart TB
A["願書・図面等の不備"] --> B{"様式違反などの
形式的な不備か"}
B -- "はい" --> C["方式審査:補正命令
(意匠法第68条第2項で準用する
特許法第17条第3項)"]
C --> C2["応じなければ手続却下
(意匠法第68条第2項で準用する
特許法第18条)"]
B -- "いいえ(図面等から意匠が
具体的に特定できない)" --> D["実体審査:意匠が具体的でない
→ 意匠法第3条第1項柱書の
「工業上利用することができる意匠」に該当しない"]
D --> D2["拒絶理由通知(意匠法第17条第1号「第三条」)
→ 補正で対応(要旨変更に注意:意匠法第9条の2、第17条の2)"]
style C fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
style D fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F
図は左右にスクロールできます。
【図5】願書・図面等の不備が扱われる2つの経路。実体面は第3条第1項柱書に吸収される。意匠法第68条第2項は「特許法第六条から第九条まで、第十一条から第十六条まで、第十七条第三項及び第四項、第十八条から第二十四条まで並びに第百九十四条(手続)の規定は、意匠登録出願、請求その他意匠登録に関する手続に準用する。」と定めており、特許法第17条第3項(補正命令)と第18条(手続の却下)がいずれも準用の対象に含まれます(出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125・334AC0000000121)、2026年9月参照)。凡例:緑=方式面(手続の形式)の経路/赤=実体面(意匠の特定)の経路。色は経路の別を示すもので、結論の有利・不利を表すものではない。(2026年9月時点の法令による)
| 意匠法第6条の項 | 不備の例 | 審査基準 第III部 第1章 3.2 の類型(要約) | 拒絶の根拠 |
|---|---|---|---|
| 第1項第3号 | 意匠に係る物品等が不明 | 3.2.20 意匠に係る物品等が不明、3.2.1 物品の使用目的・使用状態が不明 | 意匠法第3条第1項柱書(意匠が具体的でない)→ 第17条第1号 |
| 第1項(図面) | 図面相互が不整合、図面が不鮮明、必要な図がない、正投影図法によらない | 3.2.2、3.2.3、3.2.10、3.2.14 | |
| 第3項 | 材質又は大きさの記載が必要なのにない | 3.2.5 | |
| 第4項 | 変化する意匠で変化の状態が分かる図がない | 3.2.6 | |
| 第5項・第6項 | 着色図に無着色部分があり説明がない | 3.2.7 | |
| 第7項 | 透明なのにその旨の記載がない | 3.2.8 | |
| (部分意匠) | どの部分について出願か、位置・大きさ・範囲、境界が不明 | 3.2.21〜3.2.25 |
〔表4〕第6条各項の不備と、審査基準 第III部 第1章 3.2 の「意匠が具体的でない」類型との対応(第III部第1章3.2.5〜3.2.8等の本文と対応を確認)。
4. 各項の論点整理
| 項 | 論点 | 整理 |
|---|---|---|
| 第1項 | 図面は「添付」書類 | 願書本体ではなく添付書類。しかし意匠の内容を決めるのは図面であり、第24条第1項でも「願書に添附した図面に記載され…た意匠」が範囲の基礎。特許の明細書・特許請求の範囲に相当する役割 |
| 第2項 | 写真・ひな形・見本は「代えて」 | 図面との併用ではなく代用。要件は施行規則第4条(写真)・第5条(ひな形・見本)。「別」の願書記載は義務 |
| 第3項 | 材質・大きさは常に書くのではない | 「当業者が材質又は大きさを理解することができないためその意匠を認識することができないとき」に限り義務。画像は対象外(物品・建築物のみ) |
| 第4項 | 変化の前後にわたる保護は出願人の選択 | 「変化の前後にわたる…形状等…について意匠登録を受けようとするとき」に、その旨と機能の説明を記載。変化の一態様のみで出願することもできる(例外あり) |
| 第5項 | 省略できるのは「白色又は黒色のうち一色」 | 両方ではなく一色。対象は図面・写真・ひな形(見本は列挙されていない) |
| 第6項 | 省略は願書に記載 | 記載がないと、着色図の無着色部分の扱いが不明になり具体性を欠く(審査基準 3.2.7) |
| 第7項 | 透明の記載 | 「全部又は一部が透明」なときは記載義務。図面・写真・ひな形が対象(見本は列挙されていない) |
〔表5〕各項の論点整理。第5項・第7項で「見本」が列挙されていない点は条文の文言どおりです。
4-2. 逐条解説(青本)が説明する第6条各項の趣旨
特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』1268頁は、本条は意匠登録出願の際に提出すべき書類について規定したものであるとしたうえで、第1項第1号・第2号は特許法第36条、実用新案法第5条と同様であり、第3号の「意匠に係る物品」とは意匠を現す具体的な物品のことである、と説明しています。
| 項 | 逐条解説の説明(要約) | 出典 |
|---|---|---|
| 第3項 (材質・大きさ) |
意匠に係る物品又は建築物の材質又は大きさが分からないため、その意匠がどのようなものかが不明である場合の規定。特殊な材質を用いた場合や特別な大きさにした場合などに実益がある。画像については、その材質又は大きさを考慮する必要がないことから、本項では規定していない | 青本〔第22版〕1269頁 |
| 第4項 (変化する意匠) |
玩具などには形状が変化するものが多く、例えば動物の形状をした玩具では四本足で立っている場合と後二本足で立っている場合とで形状が違ってくることがある。四本足の形状について意匠登録を受けていても、二本足の形状について他人に意匠登録を受けられるおそれがある。しかし形状の異なる状態ごとに出願するのでは煩わしさに耐えないので、本項を設けて変化する意匠について一出願で完全な権利が取れることにした | 青本〔第22版〕1269頁 |
| 第2項・第5項・ 第6項・第7項 |
これらは出願人の便宜のための規定である | 青本〔第22版〕1269頁 |
| 第5項 (彩色の省略) |
彩色を省略できることとしたのは、黒色の物品の上に模様が立体的に表現されている場合、全部を黒色にすると模様が現れないことになるので、模様のみを黒で表現し、地の黒色は省略できることとしたためである。白色についても同様の理由による | 青本〔第22版〕1269頁 |
〔表5-2〕逐条解説が説明する各項の趣旨(要約)。
〔字句の解釈〕として、青本〔第22版〕1269頁から1270頁は次の2点を挙げています。第1に、第1項第3号の「意匠に係る建築物若しくは画像の用途」は建築物又は画像の本来的な用途を指し、物品と異なり、単に建築物又は画像と記載されただけでは意匠を特定するうえで十分でない可能性があることから、その用途を願書の記載事項とすることとした、としています。第2に、第4項の「物品、建築物又は画像の有する機能に基づいて変化する」について、第5条第3号が物品の「機能」と区別して建築物の「用途」・画像の「用途」と規定したのに対し、第6条第4項では建築物の形状等や画像がこれらの用途に基づいて変化するというよりは機能に基づいて変化すると考えるのが妥当であるから、物品と同様に「機能に基づいて変化する」と規定している、と説明しています。
沿革については、青本〔第22版〕1268頁から1269頁が、平成8年改正で商標法条約が願書等の記載事項を簡素化し条約上の要件以外の要件を課すことを禁止していること(同条約第3条⑺)に対応して、第1項第1号のうち代理人の有無にかかわらず常に記載を義務付けていた法人の代表者の氏名を代理人がいる場合には不要とする趣旨で削除し、あわせて改正前第2号の「提出の年月日」も、願書を作成する際に出願人がその提出の年月日を確定できないこと、出願の年月日を認定するのは特許庁であること等の趣旨から削除した、と説明しています。また、平成10年改正では類似意匠制度の廃止に伴い旧第3項を削除した、としています。
提出書類の役割:審査基準第II部第1章は、願書・図面等が出願意匠の認定と登録意匠の範囲を定める基礎になると説明しています。青本1269頁は写真・ひな形・見本による代用を出願人の便宜のための規定と説明します。第5項・第7項が見本を列挙していない理由は同頁に説明がないため、本記事では理由を推測せず、条文の適用対象を区別しています。
5. 特許法・実用新案法との対比
願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書を添付しなければならない。
願書には、明細書、実用新案登録請求の範囲、図面及び要約書を添付しなければならない。
| 観点 | 意匠法第6条 | 特許法第36条 | 実用新案法第5条 |
|---|---|---|---|
| 願書の記載事項 | 出願人、創作者、意匠に係る物品等の用途(第1項第1号〜第3号) | 出願人、発明者(第1項第1号・第2号) | 出願人、考案者(第1項第1号・第2号) |
| 権利の内容を示す書類 | 図面(写真・ひな形・見本で代用可) | 明細書・特許請求の範囲 | 明細書・実用新案登録請求の範囲 |
| 図面 | 必須(代用可) | 「必要な図面」(任意) | 必須 |
| 要約書 | なし | 必須 | 必須 |
| 権利範囲の基準 | 願書の記載及び図面等に現された意匠(意匠法第24条第1項) | 特許請求の範囲の記載(特許法第70条第1項「特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。」) | 実用新案登録請求の範囲の記載(実用新案法第26条が特許法第70条から第71条の2までを準用) |
| 「物品等の用途」の記載 | 願書に記載(第1項第3号) | なし(明細書で発明を特定) | なし |
〔表6〕三法の出願書類の対比。意匠法は文章の「請求の範囲」を持たず、図面等が権利内容を示す点が最大の違い。特許法第70条、実用新案法第26条の条文は e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121・334AC0000000123)で確認(2026年9月参照)。
6. 試験での問われ方
| 試験種別 | 学習で整理したい論点 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 短答式 | 「図面に代えて見本を提出する場合、その旨を願書に記載しなければならない」「材質・大きさは常に願書に記載しなければならない」等の正誤。第5項の「白色又は黒色のうち一色」。第3項の対象に画像が含まれない点 | 「できる/しなければならない」の区別、対象(物品・建築物・画像、図面・写真・ひな形・見本)の列挙の違いを条文どおりに覚える |
| 論文式 | 出願書類の作成・補正の事例で、図面の不備が第3条第1項柱書の拒絶理由となる経路、補正と要旨変更(意匠法第9条の2・第17条の2)の関係を論じさせる | 第6条自体は第17条の拒絶理由に列挙されていないことを明示して論じる |
| 口述 | 「図面に代えて提出できるものは」「登録意匠の範囲は何に基づいて定めるか」 | 第6条第2項と第24条第1項をセットで答える |
〔表7〕学習時の論点整理。実際の出題例は下記の過去問紹介に示しています。
出典:特許庁公表「令和8年度弁理士試験 短答式筆記試験 問題」(2026年9月参照)。枝の逐語は転記していません。本記事では正解は記載していません。
- 意匠は図面等で特定され、審査基準 第II部 第1章は願書の記載と図面等を総合して意匠を認定する(参考図の異なる形状等は考慮しない)。
- 写真は「意匠が明瞭に現される場合」(施行規則第4条)、ひな形・見本は施行規則第5条第1項各号(縦26cm・横19cm以下、袋に納めて厚さ7mm以下等)を満たす場合に図面に代えられる。
- 第6条は第17条の拒絶理由に列挙されていない。図面等から意匠が具体的に特定できない場合は第3条第1項柱書(工業上利用することができる意匠に該当しない)で拒絶される。
- 願書の記載と図面等に現された意匠が登録意匠の範囲を決める(第24条第1項)。特許法・実用新案法の「請求の範囲」に相当する。
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