小学生でも分かる実用新案法 / C. 実用新案権の効力・実施権・侵害 #19
実用新案権は「自分だけが業として使える権利」ですが、権利者は他人に「使う権利」(実施権)を貸すことができます。貸し切りの専用実施権、複数の人に出せる通常実施権、まちがった特許が消えたあとも続けられる中用権、そしてお金を借りるときの担保にする質権。この記事では、実用新案法がこれらをどう定め、特許法の条文をどう借りている(準用している)かを整理します。
レベル2条文の骨格 ― 第18条・第19条・第20条・第24条・第25条を項ごとに読む
レベル3要件・例外・試験での問われ方 ― 準用関係・移転の可否・特許法との対応表
LEVEL 1イメージでつかむ
「自分の考案」を人に使わせる3つの方法
Aさんが「開けやすい筆箱」の考案(アイデア)で実用新案権をもっているとします。実用新案権があると、その筆箱を商売として作ったり売ったりできるのは、原則としてAさんだけです(例外あり)。
でも、Aさんは工場をもっていません。そこで、筆箱を作れる会社に「使う権利」を貸すことにしました。貸し方には、大きく3つあります。
- 貸し切り(専用実施権):「B社だけが使っていい。Aさん自身も、その範囲では使わない」という強い貸し方。学校の体育館を1つのクラブが「貸し切り」にするイメージです。
- 使ってもいいよ(通常実施権):「C社も、D社も使っていいよ」と、何人にも出せるゆるい貸し方。図書館の本を「みんなが借りていい」のと同じです。
- 担保(質権):Aさんがお金を借りるとき、「返せなかったらこの権利をお金に変えていいよ」と約束する使い方。お金を借りる「質屋(しちや)」の「質」です。
図は左右にスクロールできます。
実用新案権者 A
専用実施権者 B社
通常実施権者 C社・D社
質権者 E銀行
実用新案権者が直接する設定・許諾
実用新案権者の承諾が必要な許諾
①矢印の番号(説明用)
【図1】実用新案権をめぐる4人の登場人物の相関図(2026年9月時点)。実用新案権者が①設定・②許諾・③質権設定の3つの方法で他人に権利を分け与える。④のようにB社(専用実施権者)が通常実施権を出すには、実用新案権者の承諾が必要(実用新案法第18条第3項で準用する特許法第77条第4項)。※貸し切りにした範囲では、A自身も業として実施できない(→レベル3)。※説明の都合上、質権の目的とした場合の実施の制限(第25条第2項・第3項)と登録の要否は省略した。
まちがった特許が消えたあとも続けていい「中用権」
もう1つ、ちょっと変わった「使う権利」があります。Fさんが同じ筆箱のアイデアで「特許」をもらっていたとします。ところが、あとでその特許は「本当はもらえないものだった」と分かり、取り消されました(無効)。Aさんの実用新案権だけが残ります。
Fさんは、自分の特許がまちがいだとは知らずに、もう工場を動かしていました。「今日から全部やめなさい」と言われたら、Fさんも働いている人も困ります。そこで実用新案法は、「Fさんは今の事業の範囲でそのまま続けていい。ただしAさんにお金(対価)を払う」という決まりを置いています。これを中用権(ちゅうようけん)と呼びます(実用新案法第20条)。
- 実用新案権者は、他人に「使う権利」を貸せる。貸し切り=専用実施権、使ってもいいよ=通常実施権。
- 権利をお金を借りる担保にもできる=質権。質権者は、約束がなければ考案を自分で使うことはできない。
- まちがった特許が消えたあとも、知らずに事業をしていた人は続けられる=中用権。ただしお金を払う。
※「貸し切り」には登録が必要、「使ってもいいよ」の権利は勝手に他人に譲れない、など正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。
LEVEL 2条文の骨格
第18条(専用実施権)
| 項 | 内容(要旨) | ポイント |
|---|---|---|
| 第1項 | 実用新案権者は、その実用新案権について専用実施権を設定できる | 設定するかどうかは権利者の自由 |
| 第2項 | 専用実施権者は、設定行為で定めた範囲内で、業として登録実用新案を実施する権利を専有する | 「専有」=独占。範囲は契約(設定行為)で決める |
| 第3項 | 特許法第77条第3項〜第5項(移転等)、第97条第2項(放棄)、第98条第1項第2号・第2項(登録の効果)を準用 | 移転の制限、質権・通常実施権の設定、共有、放棄、登録が効力発生要件であることは特許法の条文を借りる |
〔表1〕実用新案法第18条の項ごとの内容(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。
実用新案権者は、その実用新案権について専用実施権を設定することができる。
専用実施権者は、設定行為で定めた範囲内において、業としてその登録実用新案の実施をする権利を専有する。
特許法第七十七条第三項から第五項まで(移転等)、第九十七条第二項(放棄)並びに第九十八条第一項第二号及び第二項(登録の効果)の規定は、専用実施権に準用する。
第3項で借りてくる特許法第77条第3項〜第5項の内容は、次のとおりです(原文は特許法のもの。実用新案法では「特許権者」を「実用新案権者」と読み替えて使います)。
専用実施権は、実施の事業とともにする場合、特許権者の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。
専用実施権者は、特許権者の承諾を得た場合に限り、その専用実施権について質権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができる。
第七十三条の規定は、専用実施権に準用する。
第19条(通常実施権)
| 項 | 内容(要旨) | ポイント |
|---|---|---|
| 第1項 | 実用新案権者は、他人に通常実施権を許諾できる | 「設定」ではなく「許諾」という言葉を使う |
| 第2項 | 通常実施権者は、この法律の規定により又は設定行為で定めた範囲内で、業として登録実用新案を実施する権利を有する | 「専有」ではなく「有する」。独占ではない。「この法律の規定により」=法定・裁定の通常実施権も含む |
| 第3項 | 特許法第73条第1項(共有)、第97条第3項(放棄)、第99条(通常実施権の対抗力)を準用 | 登録なしで後から権利を取得した者にも対抗できる(当然対抗) |
〔表2〕実用新案法第19条の項ごとの内容(要旨)。
実用新案権者は、その実用新案権について他人に通常実施権を許諾することができる。
通常実施権者は、この法律の規定により又は設定行為で定めた範囲内において、業としてその登録実用新案の実施をする権利を有する。
特許法第七十三条第一項(共有)、第九十七条第三項(放棄)及び第九十九条(通常実施権の対抗力)の規定は、通常実施権に準用する。
通常実施権は、その発生後にその特許権若しくは専用実施権又はその特許権についての専用実施権を取得した者に対しても、その効力を有する。
flowchart LR J18["実用新案法第18条第3項
専用実施権"] --> P77["特許法第77条第3項〜第5項
移転・質権・通常実施権の許諾・共有"] J18 --> P97b["特許法第97条第2項
放棄には通常実施権者等の承諾"] J18 --> P98["特許法第98条第1項第2号・第2項
設定・移転等は登録が効力発生要件"] J19["実用新案法第19条第3項
通常実施権"] --> P73["特許法第73条第1項
共有持分の譲渡・質権に同意"] J19 --> P97c["特許法第97条第3項
放棄には質権者の承諾"] J19 --> P99["特許法第99条
当然対抗"] style J18 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style J19 fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F
図は左右にスクロールできます。
専用実施権(第18条第3項)が準用する条文
通常実施権(第19条第3項)が準用する条文
準用の関係(左が準用する側)
【図2】第18条第3項・第19条第3項が準用する特許法の条文(e-Gov法令検索、2026年9月参照)。準用先の内容は要旨(特許法第97条第2項・第3項を照合し、専用実施権と通常実施権の放棄に必要な承諾を区別した)。※説明の都合上、準用にともなう読替え(「特許権」→「実用新案権」等)は図では省略した。
第20条(無効審判の請求登録前の実施による通常実施権=中用権)
| 項・号 | 内容(要旨) |
|---|---|
| 第1項柱書 | 次の各号に当たる者で、特許無効審判の請求の登録前に、特許が無効理由に当たることを知らないで、日本国内でその発明の実施である事業をしている者・事業の準備をしている者は、その実施・準備をしている発明及び事業の目的の範囲内で、特許を無効にした場合の実用新案権又はその際現に存する専用実施権について通常実施権を有する |
| 第1号 | 登録実用新案の考案と特許発明が同一である場合に、特許を無効にした場合の原特許権者 |
| 第2号 | 特許を無効にして、その発明と同一の考案について正当権利者に実用新案登録をした場合の原特許権者 |
| 第3号 | 前2号の場合に、特許無効審判の請求の登録の際に、無効にした特許権について専用実施権・通常実施権をもっていた者 |
| 第2項 | 実用新案権者又は専用実施権者は、第1項の通常実施権者から相当の対価を受ける権利を有する |
〔表3〕実用新案法第20条の構造(要旨)。各号はいずれも「特許を無効にした場合」を対象としている点に注意。
次の各号のいずれかに該当する者であつて、特許法第百二十三条第一項の特許無効審判(以下この項において単に「特許無効審判」という。)の請求の登録前に、特許が同条第一項各号のいずれかに規定する要件に該当することを知らないで、日本国内において当該発明の実施である事業をしているもの又はその事業の準備をしているものは、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許を無効にした場合における実用新案権又はその際現に存する専用実施権について通常実施権を有する。
一 実用新案登録に係る考案と特許に係る発明とが同一である場合において、特許を無効にした場合における原特許権者
二 特許を無効にしてその発明と同一の考案について正当権利者に実用新案登録をした場合における原特許権者
三 前二号に掲げる場合において、特許無効審判の請求の登録の際現にその無効にした特許に係る特許権についての専用実施権又はその特許権若しくは専用実施権についての通常実施権を有する者
当該実用新案権者又は専用実施権者は、前項の規定により通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有する。
flowchart TB
A["F:同一の発明について特許を取得"] --> B["特許無効審判の請求の登録"]
B --> C{"登録前に、無効理由を知らずに
日本国内で事業または準備をしていたか"}
C -- はい --> D["○ 特許が無効になった後も
A の実用新案権について通常実施権(中用権)"]
C -- いいえ --> E["× 中用権なし"]
D --> F["A(実用新案権者・専用実施権者)は
相当の対価を受ける権利(第20条第2項)"]
style D fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
style E fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F
図は左右にスクロールできます。
○ 中用権が生まれる
× 中用権が生まれない
流れ(「はい」は下、「いいえ」は右)
【図3】実用新案法第20条(中用権)の発生の流れ。無効理由を「知らないで」実施・準備していたこと、範囲が「実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内」に限られることが条文上の要件。※説明の都合上、第1項第1号〜第3号のうち代表的な場面(第1号)だけを図にした。
第24条(通常実施権の移転等)
| 項 | 内容(要旨) | 対象となる通常実施権 |
|---|---|---|
| 第1項 | 通常実施権は、①実施の事業とともにする場合、②実用新案権者(専用実施権についての通常実施権では実用新案権者及び専用実施権者)の承諾を得た場合、③相続その他の一般承継の場合に限り、移転できる | 裁定による通常実施権を除く一般の通常実施権 |
| 第2項 | 通常実施権者は、実用新案権者(専用実施権についての通常実施権では実用新案権者及び専用実施権者)の承諾を得た場合に限り、通常実施権に質権を設定できる | 裁定による通常実施権を除く |
| 第3項 | 第21条第2項(不実施)・第23条第2項(公共の利益)の裁定による通常実施権は、実施の事業とともにする場合に限り移転できる | 裁定通常実施権 |
| 第4項 | 第22条第3項、特許法第92条第3項、意匠法第33条第3項の裁定による通常実施権は、通常実施権者の実用新案権・特許権・意匠権が実施の事業とともに移転したときはこれに従って移転し、事業と分離して移転したとき又は消滅したときは消滅する | 利用関係の裁定(本権側) |
| 第5項 | 第22条第4項の裁定による通常実施権は、通常実施権者の実用新案権・特許権・意匠権に従って移転し、それらが消滅したときは消滅する | 利用関係の裁定(相手方側) |
〔表4〕実用新案法第24条の項ごとの内容(要旨)。第3項〜第5項の裁定通常実施権の詳細は次の記事(実用新案法第21条〜第23条 裁定実施権)で扱う。
通常実施権は、第二十一条第二項、第二十二条第三項若しくは第四項若しくは前条第二項、特許法第九十二条第三項又は意匠法第三十三条第三項の裁定による通常実施権を除き、実施の事業とともにする場合、実用新案権者(専用実施権についての通常実施権にあつては、実用新案権者及び専用実施権者)の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。
通常実施権者は、第二十一条第二項、第二十二条第三項若しくは第四項若しくは前条第二項、特許法第九十二条第三項又は意匠法第三十三条第三項の裁定による通常実施権を除き、実用新案権者(専用実施権についての通常実施権にあつては、実用新案権者及び専用実施権者)の承諾を得た場合に限り、その通常実施権について質権を設定することができる。
第二十一条第二項又は前条第二項の裁定による通常実施権は、実施の事業とともにする場合に限り、移転することができる。
第二十二条第三項、特許法第九十二条第三項又は意匠法第三十三条第三項の裁定による通常実施権は、その通常実施権者の当該実用新案権、特許権又は意匠権が実施の事業とともに移転したときはこれらに従つて移転し、その実用新案権、特許権又は意匠権が実施の事業と分離して移転したとき、又は消滅したときは消滅する。
第二十二条第四項の裁定による通常実施権は、その通常実施権者の当該実用新案権、特許権又は意匠権に従つて移転し、その実用新案権、特許権又は意匠権が消滅したときは消滅する。
第25条(質権)
| 項 | 内容(要旨) | ポイント |
|---|---|---|
| 第1項 | 実用新案権・専用実施権・通常実施権を目的として質権を設定したとき、質権者は、契約で別段の定めをした場合を除き、登録実用新案を実施できない | 原則「使えない」、契約で「使える」にできる |
| 第2項 | 特許法第96条(物上代位)を準用 | 対価や実施で得る金銭等にも質権が及ぶ。払渡・引渡前の差押が必要 |
| 第3項 | 特許法第98条第1項第3号・第2項(登録の効果)を、実用新案権・専用実施権を目的とする質権に準用 | 実用新案権・専用実施権への質権は登録が効力発生要件。通常実施権への質権は第3項の対象外 |
〔表5〕実用新案法第25条の項ごとの内容(要旨)。
実用新案権、専用実施権又は通常実施権を目的として質権を設定したときは、質権者は、契約で別段の定をした場合を除き、当該登録実用新案の実施をすることができない。
特許法第九十六条(物上代位)の規定は、実用新案権、専用実施権又は通常実施権を目的とする質権に準用する。
特許法第九十八条第一項第三号及び第二項(登録の効果)の規定は、実用新案権又は専用実施権を目的とする質権に準用する。
特許権、専用実施権又は通常実施権を目的とする質権は、特許権、専用実施権若しくは通常実施権の対価又は特許発明の実施に対しその特許権者若しくは専用実施権者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行うことができる。ただし、その払渡又は引渡前に差押をしなければならない。
- 第18条:専用実施権の設定・専有の効力。移転・質権・通常実施権の許諾・共有・放棄・登録の効果は特許法第77条第3項〜第5項、第97条第2項、第98条第1項第2号・第2項を準用。
- 第19条:通常実施権の許諾・効力。共有・放棄・対抗力(当然対抗)は特許法第73条第1項、第97条第3項、第99条を準用。
- 第20条:特許無効審判の請求登録前に無効理由を知らずに事業・準備をしていた原特許権者等に、無効後に残る実用新案権についての通常実施権(中用権)。実用新案権者側は相当の対価を受ける。
- 第24条:通常実施権の移転(事業とともに/承諾/一般承継)と質権設定(承諾)。裁定通常実施権には第3項〜第5項の特則。
- 第25条:質権者は契約がなければ実施できない。物上代位(特許法第96条)と登録の効果(特許法第98条第1項第3号・第2項)を準用。
LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方
1. 特許法との対応表 ― 「本文で書く」条文と「準用で借りる」条文
実用新案法のこの分野は、特許法とほぼ同じ内容を、一部は自前の条文で、一部は特許法の準用で実現しています。どちらの方式かを押さえておくと、条文番号の混同を防げます。
| 内容 | 実用新案法 | 特許法(対応条文) | 実用新案法での方式 |
|---|---|---|---|
| 専用実施権の設定・効力 | 第18条第1項・第2項 | 第77条第1項・第2項 | 自前の条文 |
| 専用実施権の移転・質権・通常実施権の許諾・共有 | 第18条第3項 | 第77条第3項〜第5項 | 準用 |
| 通常実施権の許諾・効力 | 第19条第1項・第2項 | 第78条第1項・第2項 | 自前の条文 |
| 通常実施権の対抗力(当然対抗) | 第19条第3項 | 第99条 | 準用 |
| 先使用による通常実施権 | 第26条(準用) | 第79条 | 準用(→実用新案法第26条の記事) |
| 中用権 | 第20条 | 第80条 | 自前の条文(ただし対象は「特許を無効にした場合」) |
| 通常実施権の移転・質権設定 | 第24条第1項・第2項 | 第94条第1項・第2項 | 自前の条文 |
| 裁定通常実施権の移転の特則 | 第24条第3項〜第5項 | 第94条第3項以下 | 自前の条文(特許法第94条第3項〜第5項に対応) |
| 質権者の実施制限 | 第25条第1項 | 第95条 | 自前の条文 |
| 物上代位 | 第25条第2項 | 第96条 | 準用 |
| 専用実施権・質権の登録の効果 | 第18条第3項、第25条第3項 | 第98条第1項第2号・第3号、第2項 | 準用 |
〔表6〕実用新案法と特許法の対応表。特許法第94条第3項〜第5項との対応を条文で確認した。特許法側の内容は特許法シリーズの各記事を参照。
2. 専用実施権・通常実施権・質権の「できる/できない」一覧
| 行為 | 専用実施権 | 通常実施権(許諾によるもの) | 根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 効力の発生に登録が必要か | 必要(設定は登録しなければ効力を生じない) | 不要(条文上、登録を効力要件とする規定なし) | 実用新案法第18条第3項で準用する特許法第98条第1項第2号 |
| 後から実用新案権・専用実施権を取得した者への対抗 | 登録により対抗(登録が効力発生要件) | 登録なしで対抗できる(当然対抗) | 実用新案法第19条第3項で準用する特許法第99条 |
| 移転 | 実施の事業とともに/実用新案権者の承諾/一般承継 | 実施の事業とともに/実用新案権者(+専用実施権者)の承諾/一般承継 | 特許法第77条第3項(準用)、実用新案法第24条第1項 |
| 質権の設定 | 実用新案権者の承諾を得た場合 | 実用新案権者(+専用実施権者)の承諾を得た場合 | 特許法第77条第4項(準用)、実用新案法第24条第2項 |
| 通常実施権の許諾(サブライセンス) | 実用新案権者の承諾を得た場合 | 条文上の規定なし | 特許法第77条第4項(準用) |
| 質権者による実施 | 契約で別段の定めをした場合を除き、できない | 実用新案法第25条第1項 | |
| 質権の登録の効果 | 実用新案権・専用実施権を目的とする質権は登録が効力発生要件 | 通常実施権を目的とする質権は第25条第3項の準用対象外 | 実用新案法第25条第3項 |
〔表7〕専用実施権と通常実施権の比較(条文上の帰結)。「(+専用実施権者)」は、専用実施権についての通常実施権の場合に承諾が必要な者。
flowchart TB
S["通常実施権を他人に移転したい"] --> Q1{"裁定による通常実施権か"}
Q1 -- はい --> Q3{"どの裁定か"}
Q1 -- いいえ --> Q2{"次のどれかに当たるか
①実施の事業とともに
②実用新案権者等の承諾
③相続その他の一般承継"}
Q3 -- "第21条第2項・第23条第2項" --> R1["△ 実施の事業とともにする場合に限り移転(第24条第3項)"]
Q3 -- "第22条第3項 等" --> R2["△ 本権が事業とともに移転したときに従って移転/分離移転・消滅で消滅(第24条第4項)"]
Q3 -- "第22条第4項" --> R3["△ 本権に従って移転/本権消滅で消滅(第24条第5項)"]
Q2 -- はい --> OK1["○ 移転できる(第24条第1項)"]
Q2 -- いいえ --> NG["× 移転できない"]
style OK1 fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F
style NG fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F
style R1 fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F
style R2 fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F
style R3 fill:#ECEBF8,stroke:#4A4F9C,color:#22303F
図は左右にスクロールできます。
○ 移転できる
× 移転できない
△ 裁定による通常実施権に特有の扱い
流れ(「はい」は下、「いいえ」は右)
①選択肢の番号(説明用)
【図4】実用新案法第24条による通常実施権の移転の分岐図(e-Gov法令検索、2026年9月参照)。「第22条第3項 等」には特許法第92条第3項・意匠法第33条第3項の裁定も含まれる。※説明の都合上、通常実施権に質権を設定する場合(第24条第2項)は省略した。
3. 中用権(第20条)の要件と、特許法第80条との違い
| 観点 | 実用新案法第20条 | 特許法第80条 |
|---|---|---|
| 無効にされる権利 | 特許(特許法第123条第1項の特許無効審判) | 特許 |
| 中用権が発生する権利 | 特許を無効にした場合の実用新案権又はその際現に存する専用実施権 | 特許を無効にした場合の特許権又はその際現に存する専用実施権 |
| 第1号 | 登録実用新案の考案と特許発明が同一で、特許を無効にした場合の原特許権者 | 同一の発明についての二以上の特許のうち、その一を無効にした場合の原特許権者 |
| 第2号 | 特許を無効にして、同一の考案について正当権利者に実用新案登録をした場合の原特許権者 | 特許を無効にして同一の発明について正当権利者に特許をした場合の原特許権者 |
| 第3号 | 無効にした特許権についての専用実施権者・通常実施権者 | 同左 |
| 主観的要件・時期 | 無効審判の請求の登録前に、無効理由に該当することを知らないで、日本国内で事業又はその準備をしていること | |
| 範囲 | 実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内 | |
| 対価 | 権利者・専用実施権者は相当の対価を受ける権利を有する(第2項) | |
〔表8〕実用新案法第20条と特許法第80条の対比(取得した条文に基づく整理)。
4. 準用条文の読み方 ― 「準用」で何が変わるか
実用新案法第18条第3項・第19条第3項・第25条第2項・第3項は、特許法の条文を「準用」します。準用とは、特許法の条文を「特許権→実用新案権」「特許発明→登録実用新案」のように読み替えて、そのまま使うことです。試験では「実用新案法第○条で準用する特許法第△条」という形で問われるため、〔表6〕【図2】の組み合わせを対で覚える必要があります。
とくに注意したいのは、実用新案法第19条第3項が特許法第99条(当然対抗)を準用している点です。取得した特許法第99条は「通常実施権は、その発生後にその特許権若しくは専用実施権又はその特許権についての専用実施権を取得した者に対しても、その効力を有する。」とだけ定めており、登録を対抗要件とはしていません。したがって、実用新案権が第三者に譲渡されても、通常実施権者は登録なしにその譲受人に通常実施権を主張できます。
5. 試験での問われ方
| 試験種別 | 問われ方の傾向 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 短答式 | 専用実施権の登録の要否、通常実施権の当然対抗、通常実施権の移転・質権設定に必要な承諾者、質権者の実施の可否、中用権の要件(知らないで/請求の登録前/対価)が、特許法・実用新案法を横断して正誤形式で問われる | 「実用新案権者及び専用実施権者」の承諾が必要な場面(専用実施権についての通常実施権)と、実用新案権者のみの承諾で足りる場面を区別する。裁定通常実施権は第24条第1項・第2項の適用除外 |
| 論文式 | ライセンス契約後に実用新案権が譲渡された事例で、通常実施権者・専用実施権者の地位を論じさせる形が考えられる | 専用実施権は登録が効力発生要件(特許法第98条第1項第2号の準用)、通常実施権は当然対抗(特許法第99条の準用)と、根拠条文を「実用新案法第○条で準用する特許法第△条」の形で示す |
| 口述 | 「実用新案法における中用権は、どのような場合に発生するか」「質権者は登録実用新案を実施できるか」など、条文の要件を口頭で述べさせる形が考えられる | 実用新案法第20条の各号がすべて「特許を無効にした場合」であることを条文どおりに述べる |
〔表9〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。
- 専用実施権(第18条):設定は登録が効力発生要件(特許法第98条第1項第2号の準用)。移転・質権・通常実施権の許諾には実用新案権者の承諾等(特許法第77条第3項・第4項の準用)。
- 通常実施権(第19条):登録なしで、後から実用新案権・専用実施権を取得した者にも対抗できる(特許法第99条の準用)。
- 中用権(第20条):「特許を無効にした場合」の原特許権者等に、残った実用新案権についての通常実施権。要件は「請求の登録前」「知らないで」「事業又は準備」。対価は相当の対価。
- 移転・質権(第24条):一般の通常実施権は事業とともに/承諾/一般承継で移転、承諾で質権設定。裁定通常実施権は第3項〜第5項の特則。
- 質権(第25条):質権者は契約がなければ実施不可。物上代位(特許法第96条)、登録の効果(特許法第98条第1項第3号・第2項)を準用。
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