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小学生でも分かる特許法|特許法第41条・第42条 国内優先権 ― 日本の「先の出願」を土台に、1年以内に出し直す

小学生でもわかる特許法:国内優先権(特許法第41条・第42条)

小学生でも分かる特許法 / A. 特許要件・発明 #13

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いったん出願した後で、改良や追加のデータが出てくることはよくあります。国内優先権は、先の出願から1年以内なら、その内容を取り込んだ新しい出願をして、先の出願に書いてあった部分については先の出願日を基準にしてもらえる制度です。かわりに、先の出願は一定期間後に取り下げたものとみなされます。

条文:特許法第41条、第42条関連:第43条(パリ優先)、第44条(分割)参照時点:2026年9月

LEVEL 1イメージでつかむ

出願した後で「もっといい発明」ができたら

4月1日に「新しい消しゴム」を出願したとします。その後、研究を続けたら「消しゴムの角を丸くするともっと消しやすい」という改良が見つかりました。改良を追加したいけれど、出願した書類に新しい話を足すことはできません(補正のルール)。かといって別の出願をすると、最初の消しゴムの部分まで「2回目の出願日」で判断されてしまいます。

「下書き」を「清書」に置きかえる

そこで国内優先権です。4月1日の出願(先の出願)を「下書き」だと思ってください。1年以内に、改良を足した「清書」(後の出願)を出します。清書のうち、下書きに書いてあった部分は「4月1日に出した」ものとして扱われ、改良の部分は「清書を出した日」で判断されます。そして、下書きはしばらくして自動的に取り下げられます。

先の出願(下書き) 4月1日 発明A:消しゴム 1年以内 後の出願(清書) 翌年2月1日 発明A:消しゴム → 4月1日を基準に判断 発明B:角を丸くした改良 → 2月1日を基準に判断 下書きはあとで取り下げたことになる 1つの出願に まとまる

【図1】国内優先権のイメージ。先の出願にあった発明Aは先の出願日、追加した発明Bは後の出願日で判断される。

パリ条約の優先権と似ている

外国での出願を土台にするのがパリ条約の優先権(第43条の記事)、日本での出願を土台にするのが国内優先権です。「1年以内」「土台の出願日で判断」は共通ですが、国内優先権では土台の出願(下書き)が取り下げられる点が違います。

レベル1のまとめ
  • 先の出願から1年以内なら、内容を追加した後の出願をして、先の出願に書いてあった部分は先の出願日で判断してもらえる(国内優先権)。
  • 追加した部分は後の出願日で判断される。先の出願はあとで取り下げたことになる。

※主張できない場合(先の出願が分割出願のときなど)、先の出願が取り下げられる時期、主張の取下げなどは、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第41条の構造

項役割内容(要旨)
第1項柱書だれが・何を基礎に特許を受けようとする者は、自分が特許・実用新案登録を受ける権利を有する先の特許出願・実用新案登録出願の当初明細書等に記載された発明に基づいて優先権を主張できる。ただし先の出願に仮専用実施権者があるときはその承諾が必要
第1項第1号〜第5号主張できない場合①先の出願の日から1年を過ぎた(故意でなく省令期間内の場合を除く)、②先の出願が分割・変更・実用新案登録に基づく特許出願等である、③先の出願が放棄・取下げ・却下されている、④先の出願について査定・審決が確定している、⑤先の出願について実用新案権の設定登録がされている
第2項効果後の出願の発明のうち、先の出願の当初明細書等に記載された発明については、列挙された規定(第29条、第29条の2本文、第30条第1項・第2項、第39条第1項〜第4項など)の適用について、先の出願の時にされたものとみなす
第3項拡大先願の効果先の出願の当初明細書等に記載された発明は、後の出願について出願公開・特許掲載公報の発行がされた時に、先の出願について出願公開等がされたものとみなして、第29条の2本文等を適用する
第4項手続その旨と先の出願の表示を記載した書面を、経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出

〔表1〕第41条の項ごとの内容(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。

第42条の構造 ― 先の出願の運命

項内容(要旨)
第1項先の出願は、その出願の日から経済産業省令で定める期間を経過した時に取り下げたものとみなす。ただし、先の出願がすでに放棄・取下げ・却下されている場合、査定・審決が確定している場合、実用新案権の設定登録がされている場合、または先の出願に基づくすべての優先権の主張が取り下げられている場合は除く
第2項後の出願の出願人は、先の出願の日から省令で定める期間を経過した後は、優先権の主張を取り下げることができない
第3項後の出願が先の出願の日から省令で定める期間内に取り下げられたときは、同時に優先権の主張も取り下げられたものとみなす

〔表2〕第42条の項ごとの内容。

根拠と補足:第42条の取下げ擬制・主張取下げに関する期間は先の出願の日から1年4月(施行規則第28条の4)です。これと主張書面の提出期限は別で、第41条第4項の書面は原則として優先日から1年4月と後の出願日から4月のいずれか遅い日までです。分割・変更等には新出願から1月の特則があり、出願審査又は出願公開の請求後の期間は除かれます。施行規則第27条の4の2第3項・第28条の4。
timeline
    title 国内優先権のタイムライン(第41条・第42条)
    先の出願 : 発明Aを出願
    1年以内 : 後の出願(発明A+B)で優先権を主張(第41条第1項第1号)
    先の出願の日から省令期間(1年4月) : 先の出願は取り下げたものとみなす(第42条第1項)/優先権の主張の取下げはここまで(第42条第2項)/後の出願を取り下げると主張も取下げ(第42条第3項)
    後の出願の出願公開 : 先の出願の内容も公開されたものとみなす(第41条第3項)

【図2】国内優先権のタイムライン。「1年」(主張の期限)と「1年4月」(先の出願の取下げ擬制・主張取下げの期限)を区別する。

レベル2のまとめ
  • 第41条第1項:自分の先の出願の当初明細書等に記載された発明に基づき、1年以内に主張できる。5つの除外事由。
  • 第41条第2項:先の出願に記載された発明は、新規性・進歩性・拡大先願・先願などについて先の出願の時にされたものとみなす。第3項:拡大先願の引用としての効果。
  • 第42条:先の出願は1年4月(省令)で取下げ擬制。主張の取下げも1年4月まで。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 主張できない5つの場合(第41条第1項各号)

flowchart TB
  A["先の出願に基づく国内優先権を主張したい"] --> Q1{"第1号
先の出願の日から1年以内か?"} Q1 -- "1年超で回復要件も満たさない" --> N1["主張できない"] Q1 -- "1年以内/1年超だが回復要件を満たす" --> Q2{"第2号
先の出願は分割・変更・
実用新案登録に基づく特許出願等か?"} Q2 -- "そうである" --> N2["主張できない
(遡及した出願日をさらに土台にすることを防ぐ)"] Q2 -- "通常の出願" --> Q3{"第3号
先の出願は放棄・取下げ・却下されているか?"} Q3 -- "されている" --> N3["主張できない"] Q3 -- "係属中" --> Q4{"第4号
先の出願の査定・審決は確定しているか?"} Q4 -- "確定" --> N4["主張できない"] Q4 -- "未確定" --> Q5{"第5号
先の出願(実用新案登録出願)は設定登録されているか?"} Q5 -- "登録済み" --> N5["主張できない"] Q5 -- "未登録" --> OK["主張できる
(仮専用実施権者がいれば承諾要)"] style OK fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style N1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N2 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N3 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N4 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N5 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

【図3】第41条第1項各号の分岐図。第3号〜第5号は「その特許出願の際に」が基準時。

第1号括弧書き(優先期間徒過の救済)後の出願が「故意に」1年以内にされなかったものでないと認められ、かつ省令で定める期間内に省令の定めに従ってされた場合は、1年を過ぎていても主張できます。パリ優先の第43条の2と同じ「故意でない」基準です(令和3年改正)。期間は1年の優先期間経過後2月です(施行規則第27条の4の2第1項)。

2. 第2項の効果 ― 何について「先の出願の時」とみなすか

列挙された規定意味
第29条新規性・進歩性の基準時が先の出願の時になる
第29条の2本文拡大先願で「守られる側」として先の出願の日が基準。ただし書(出願人同一)は列挙外
第30条第1項・第2項新規性喪失の例外の「1年以内」を先の出願で判断
第39条第1項〜第4項先願の判断で先の出願の日が基準
第69条第2項第2号、第72条、第79条、第81条、第82条第1項、第104条、第126条第7項特許権の効力の例外・利用抵触・先使用権・法定通常実施権・生産方法の推定・訂正の独立特許要件などの基準時
実用新案法・意匠法・商標法の関連規定他法域での先後関係の基準時

〔表3〕第41条第2項の列挙規定。第30条第3項の手続と審査請求の原則3年は後願が基準。翻訳文・出願公開の起算は別途第36条の2第2項・第64条第1項により優先日が基準。

根拠と補足:第41条第2項は新規性・進歩性・拡大先願・第30条第1項/第2項・先願等の列挙された規定に限って先の出願時に遡らせます。翻訳文と出願公開の起算は、第36条の2第2項括弧書き及び第64条第1項により優先日を用います。一方、審査請求の原則3年は第48条の3第1項により後の出願日からです。第41条第2項・第36条の2第2項・第64条・第48条の3。

3. 部分優先・複合優先

類型内容基準日
部分優先後の出願に、先の出願に記載された発明Aと、新たな発明Bを含めるA=先の出願の日、B=後の出願の日(第41条第2項「先の出願の……に記載された発明……については」)
複合優先複数の先の出願(A、B)を基礎に1つの後の出願(A+B+C)をするA、Bはそれぞれの先の出願の日、Cは後の出願の日。「1年以内」は各先の出願ごとに判断
パリ優先との併用外国出願を基礎とするパリ優先と、日本の先の出願を基礎とする国内優先を同時に主張それぞれの基礎出願の日。第43条第2項の「最先の日」の起算に注意

〔表4〕部分優先・複合優先の整理。

4. 「先の出願に記載された発明」の範囲 ― 実施例補充型の落とし穴

第2項の効果は、先の出願の当初明細書等に記載された発明に限られます。後の出願で実施例やデータを追加した結果、請求項に係る発明が先の出願の記載から拡張されている場合、先の出願の開示を超えた部分には先の出願日の利益が認められません(いわゆる実施例補充型の国内優先権主張の論点)。

根拠と補足:人工乳首事件の東京高裁2003年10月8日判決(平成14年(行ケ)第539号)です。後願で補充した実施例によって発明の技術的事項が先願の開示を超える場合、その超えた部分には優先権の効果を認めないと判断しました。単なる請求項の文字の一致ではなく、技術的事項を対比します。判決・第5の1(1)。

5. 第42条 ― 先の出願の取下げ擬制とその例外

flowchart TB
  A["先の出願の日から省令期間(1年4月)が経過"] --> B{"先の出願はすでに…
放棄・取下げ・却下?
査定・審決確定?
実用新案権の設定登録?
すべての優先権主張が取り下げ済み?"} B -- "いずれかに該当" --> K["取下げ擬制は働かない(ただし書)"] B -- "いずれにも該当しない" --> T["先の出願は取り下げたものとみなす(第42条第1項本文)"] style T fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

【図4】第42条第1項の分岐図。先の出願を「二重に生かす」ことを防ぐ規定。

6. パリ優先・分割との比較

国内優先権(第41条・第42条)パリ条約による優先権(第43条)分割(第44条)
土台日本の先の出願(当初明細書等)外国の最初の出願原出願(当初明細書等)
新しい内容の追加できる(追加部分は後の出願日)できる(追加部分は日本の出願日)できない(原出願の範囲内)
土台の出願の運命1年4月で取下げ擬制影響なし原出願は残る
期限先の出願から1年最初の出願から12月補正できる時期など
証明書類不要(書面のみ)必要(1年4月以内)不要

〔表5〕3つの制度の比較。

7. 試験での問われ方

試験種別問われ方の傾向気をつける点
短答式「実用新案登録出願を基礎にできるか(できる)」「分割出願を基礎にできるか(できない)」「先の出願が取り下げられる時期」「優先権主張の取下げの期限」「パリ優先との重複主張」「前置審査中に先の出願が設定登録されたら」第1項第2号〜第5号、第42条の1年4月、第41条第2項の列挙
論文式発明A・Bのタイムラインで、各発明の基準日と先行技術との関係を論じさせる。実施例補充型の論点〔表4〕で部分優先を整理し、【図2】で取下げ擬制の時期を確認
口述「国内優先権を主張できない場合を挙げよ」「先の出願はどうなるか」【図3】【図4】

〔表6〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

根拠と補足:令和8年度短答式(特許・実用新案)問9では、実用新案登録に基づく特許出願を基礎にできるか、削除済み事項を含む当初開示、優先権の累積、前置審査と設定登録、主張の削除が扱われています。問9全体の公式正解は5です。公式問題/公式解答。問3肢ニは代理人による国内優先権主張の特別授権を扱い、問3全体の公式正解は2です。
レベル3のまとめ
  • 主張できない5類型:1年超で回復要件も満たさない/先の出願が分割・変更・実用新案登録に基づく特許出願等/放棄・取下げ・却下/査定・審決確定/実用新案権の設定登録。
  • 第2項の効果は列挙規定に限られ、先の出願の当初明細書等に記載された発明の範囲に限られる(部分優先)。実施例補充で請求項が拡張されると利益を受けられないことがある。
  • 第42条:先の出願は1年4月で取下げ擬制(例外あり)。主張の取下げも1年4月まで。後の出願の取下げは主張の取下げとみなす。

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