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小学生でも分かる特許法|特許法第162条〜第164条 前置審査 ― 審判の前に、元の審査官がもう一度見る

小学生でもわかる特許法:前置審査(特許法第162条〜第164条)

小学生でも分かる特許法 / D. 審判・訴訟 #48

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拒絶査定不服審判の請求と同時に補正をすると、審判官の前に、まず元の審査官がその補正を審査します。これが前置審査です。「補正で拒絶理由が解消したなら、事件をよく知る審査官が早く特許にしてあげよう」という、審判の負担軽減と早期権利化のための制度です。

条文:特許法第162条、第163条、第164条関連:第121条、第17条の2第1項第4号、第159条、第44条第1項第2号参照時点:2026年9月

LEVEL 1イメージでつかむ

「直しました。もう一度見てください」

拒絶査定を受けた出願人が「不服です」と審判を請求するとき、同時に書類を直す(補正する)ことができます(第17条の2第1項第4号)。直した書類を、いきなり審判官(新しい先生)に見せるより、元の審査官(最初に採点した先生)に見せた方が話が早いことがあります。何がダメだったかを一番よく知っているからです。

そこで、審判請求と同時に補正があったときは、まず元の審査官が審査します。これが前置審査です。「審判の前に置く審査」という意味です。

拒絶査定 審査官 審判請求+補正 同時に書類を直す 前置審査 元の審査官が見る 直っている → 特許査定 直っていない → 報告して審判官へ

【図1】前置審査の流れ。審査官の出口は「特許査定」か「報告」の2つ。

審査官は「もう一度ダメ」とは言わない

前置審査で審査官が「直っていない」と思っても、もう一度拒絶査定を出すことはしません。「私はダメだと思います」と特許庁長官に報告して、あとは審判官に任せます。出願人がすでに「不服だ」と言っているのに、同じ審査官がまた「ダメ」と言っても意味がないからです。

レベル1のまとめ
  • 審判請求と同時に補正をすると、まず元の審査官が審査する(前置審査)。
  • 審査官は「特許査定」か「報告」のどちらか。もう一度拒絶査定はしない。

※前置審査で使われる審査のルール、特許査定をする場合を除く補正却下の禁止、拒絶理由通知の扱いなどは、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

特許法第162条(原文)特許庁長官は、拒絶査定不服審判の請求があつた場合において、その請求と同時にその請求に係る特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正があつたときは、審査官にその請求を審査させなければならない。
特許法第164条(原文)1 審査官は、第百六十二条の規定による審査において特許をすべき旨の査定をするときは、審判の請求に係る拒絶をすべき旨の査定を取り消さなければならない。
2 審査官は、前項に規定する場合を除き、前条第一項において準用する第五十三条第一項の規定による却下の決定をしてはならない。
3 審査官は、第一項に規定する場合を除き、当該審判の請求について査定をすることなくその審査の結果を特許庁長官に報告しなければならない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。
条・項役割内容
第162条開始要件拒絶査定不服審判の請求と同時に明細書等の補正があったとき、特許庁長官は審査官に審査させなければならない(義務)
第163条第1項準用①第48条(審査官の除斥)、第53条(補正の却下)、第54条(訴訟との関係)を準用。第53条は第159条第1項と同じ読み替え(第4号を追加、審判請求前の補正を除く)
第163条第2項準用②第50条・第50条の2を、査定の理由と異なる拒絶理由を発見した場合に準用(読み替えは第159条第2項と同じ)
第163条第3項準用③第51条(特許査定)・第52条(査定の方式)を、審判の請求を理由があるとする場合に準用
第164条第1項出口①特許査定をするときは、拒絶査定を取り消さなければならない
第164条第2項禁止特許査定をする場合を除き、補正却下の決定をしてはならない
第164条第3項出口②特許査定をする場合を除き、査定をすることなく審査の結果を特許庁長官に報告しなければならない

〔表1〕第162条〜第164条の内容(e-Gov、2026年9月参照)。

flowchart TB
  A["審判請求と同時に補正(第17条の2第1項第4号)"] --> B["特許庁長官が審査官に審査させる(第162条)"]
  B --> C{"補正は要件を満たすか(第53条準用)"}
  C -- "満たさない" --> D["特許査定をする場合を除き却下決定は不可(第164条第2項)
→ 補正を却下すべき旨を含めて報告"] C -- "満たす" --> E{"補正後の発明に拒絶理由はあるか"} E -- "ない" --> F["特許査定+拒絶査定の取消し(第164条第1項、第163条第3項)"] E -- "査定の理由と異なる拒絶理由を発見" --> G["拒絶理由通知(第163条第2項)→ 意見書・補正"] G --> E E -- "査定の理由が解消していない" --> H["査定をせず報告(第164条第3項)→ 審判官の審理へ(第159条以下)"] D --> H style F fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style H fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F

【図2】前置審査の分岐図。

レベル2のまとめ
  • 開始要件は「審判請求と同時の補正」。審査官には第48条・第53条・第54条・第50条・第50条の2・第51条・第52条が準用される。
  • 出口は特許査定(+拒絶査定取消し)か報告。特許査定をする場合を除き、補正却下の決定はできない。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. なぜ「補正却下の決定をしてはならない」のか(第164条第2項)

前置審査で補正を却下すると、補正前の明細書等に戻って審査することになり、その結果は「拒絶査定維持」にしかなりません。出願人はすでに審判を請求しているので、その判断は審判官がすべきです。そこで、審査官は補正が不適法だと考えても却下せず、その旨を含めて報告し、却下の判断は審判官に委ねます(第159条第1項で第53条を準用)。

2. 前置審査で拒絶理由通知はできるか(第163条第2項)

場面前置審査での扱い
査定の理由と同じ拒絶理由が残っている通知不要。報告する
補正により新たな拒絶理由が生じた(査定の理由と異なる)第50条を準用して拒絶理由通知ができる。出願人は意見書・補正で応答(この補正は第17条の2第1項第1号・第3号)
第50条の2の通知分割関係の他の出願で通知済みの拒絶理由と同一なら併せて通知

〔表2〕前置審査における拒絶理由通知。通知後の応答で拒絶理由が解消すれば特許査定、しなければ報告。

3. 前置審査と審判の役割分担

前置審査(第162条〜第164条)審判(第159条〜第160条)
主体審査官(原則として原査定の審査官)審判官の合議体
開始審判請求と同時の補正があったとき(必須)補正がなければ直接。補正があれば前置審査の報告後
できる結論特許査定(+拒絶査定取消し)/報告特許審決/差戻し審決/拒絶審決
補正却下特許査定をする場合を除き不可(第164条第2項)できる(第159条第1項)
拒絶理由通知査定と異なる理由についてできる(第163条第2項)同じ(第159条第2項)
準用の型第163条第159条(条文構造はほぼ同じ)

〔表3〕前置審査と審判の比較。

4. 分割出願との接続(第44条第1項第2号括弧書き)

前置審査の特許査定については、第44条第1項第2号の「特許査定謄本送達後30日以内」の分割期間は認められません。補正可能な時又は期間内での分割(同項第1号)と区別します。

第44条第1項第2号は、特許査定謄本送達後30日以内の分割から、前置審査の特許査定と、第160条第1項の差戻し後の特許査定を除いています。前置審査中の分割は、第44条第1項第1号の「補正をすることができる時又は期間内」に限られ、謄本送達前ならいつでもよいわけではありません。第44条第1項・第17条の2第1項。

5. 前置審査の結果の通知

前置報告書を利用した審尋は、必要と認める場合に行う運用です。すべての前置報告を請求人に通知する義務がある、という意味ではありません。条文上の通知義務の有無は令和8年度短答問11の枝2で問われています。

第164条第3項が審査官に義務付けるのは、特許査定をしない場合の特許庁長官への報告です。請求人への結果通知は同項の義務ではありません。審判便覧37は、必要と認めるときに前置報告書を利用して審尋できる運用を定めています。第164条第3項/審判便覧37・前置報告を利用した審尋。

6. 試験での問われ方

試験種別問われ方の傾向気をつける点
短答式「審判請求後に補正をしたときも前置審査に付されるか(同時のみ)」「前置審査で補正却下できるか(特許査定する場合を除き不可)」「前置審査で拒絶査定を維持する査定ができるか(不可、報告)」「前置審査で拒絶理由通知ができるか(異なる理由なら可)」「前置審査の結果の通知義務」〔表1〕〔表2〕〔表3〕
論文式拒絶査定後に補正して審判請求した場合の手続の流れを、審査官・審判官の権限を分けて書かせる【図2】
口述「前置審査とは」「前置審査で審査官ができることは」第162条、第164条

〔表4〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

問11の肢2・3は結果の通知義務と報告時の補正却下、問15(ロ)は審査官による審判請求書の補正命令、同(ハ)は審判での補正却下の適否の争い方です。同(ハ)は前置審査で拒絶査定をする問題ではありません。 公式正解番号:問11=4、問15=2。 公式問題/公式正解。
レベル3のまとめ
  • 開始要件は「審判請求と同時の補正」。準用の型は第159条と同じ(第163条)。
  • 審査官の出口は特許査定(拒絶査定取消し)か報告。特許査定をする場合を除き補正却下の決定は禁止(第164条第2項)。査定と異なる拒絶理由は通知できる。
  • 前置審査の特許査定謄本送達前は分割可能期間になる(第44条第1項第2号括弧書き)。

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