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小学生でも分かる特許法|特許法第48条の3 出願審査の請求 ― 出願しただけでは審査は始まらない

小学生でもわかる特許法:出願審査の請求(特許法第48条の3)

小学生でも分かる特許法 / B. 出願・審査の手続 #19

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特許庁は、出願されたものを自動的に審査するわけではありません。「審査してください」という請求(出願審査の請求)があって初めて審査が始まります。請求できるのは出願の日から3年以内。しなければ、出願は取り下げたものとみなされます。

条文:特許法第48条の3(第1項〜第8項)関連:第48条の2、第44条・第46条・第46条の2参照時点:2026年9月

LEVEL 1イメージでつかむ

受付をしただけでは、診察は始まらない

病院に行くと、まず受付をしますね。でも受付をしただけでは、お医者さんは診てくれません。「診察をお願いします」とよびだしボタンを押して、順番を待つ必要があります。

特許も同じです。特許庁に出願するのが「受付」。そのあと「審査してください」とお願いする手続が出願審査の請求です。この請求をしないと、審査は始まりません。

出願(受付) 書類を出す 出願審査の請求 「審査して」ボタン 審査(診察) 審査官が中身を見る ボタンを3年以内に押さないと、出願は「取り下げた」ことになる ボタンは出願した本人でなくても押せる(何人も)

【図1】出願→出願審査の請求→審査。真ん中のボタンを押さない限り、審査は始まらない。

なぜ、こんなしくみなの?

出願する人の中には、「とりあえず出しておいて、本当に特許がほしいかは後で決めたい」という人もいます。全部を審査すると、特許庁はパンクしてしまいます。だから「本当に審査してほしいものだけ、ボタンを押してね」というしくみになっています。

3年以内にボタンを押さないと……

ボタンを押せるのは、出願の日から3年以内です。押さないと、その出願は「取り下げた」ことにされてしまいます。せっかく出願しても、なかったことになるのです。

ちなみに、ボタンは出願した本人でなくても押せます。「あの会社の出願、特許になるのかどうか早くはっきりさせてほしい」というライバル会社が押すこともできるのです。

レベル1のまとめ
  • 出願しただけでは審査されない。「審査してください」という請求(出願審査の請求)が必要。
  • 請求できるのは出願の日から3年以内。しないと出願は取り下げたことになる。
  • 請求は本人でなくてもできる。

※「3年を過ぎても請求できる場合」「うっかり過ぎたときの救済」があります。正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第48条の3の全体像

項内容キーワード
第1項特許出願があったときは、何人も、その日から3年以内に出願審査の請求ができる何人も/3年
第2項分割出願・変更出願・実用新案登録に基づく特許出願は、3年経過後でも、その分割・変更・実用新案登録に基づく特許出願の日から30日以内に限り請求できる30日の特例
第3項出願審査の請求は取り下げることができない取下げ不可
第4項第1項の期間内に請求がなかったときは、その特許出願は取り下げたものとみなす取下げ擬制
第5項取り下げたものとみなされた出願の出願人は、経済産業省令で定める期間内に限り、請求ができる。ただし故意に請求しなかったと認められる場合は除く回復(故意でない)
第6項第5項による請求は、第1項の期間が満了する時にされたものとみなす請求時期のみなし
第7項第4項〜第6項は、第2項の期間(30日)内に請求がなかった場合に準用する30日特例にも回復あり
第8項第5項の回復により特許権の設定登録があったとき、取下げ擬制の公報発行後・回復請求の公報発行前に善意で実施の事業(またはその準備)をしていた者は、その範囲で通常実施権を有する中用権的な法定通常実施権

〔表1〕第48条の3の項ごとの内容(e-Gov法令検索、2026年9月参照、要旨)。

条文を読む ― 第1項〜第4項

特許法第48条の3第1項(原文) 特許出願があつたときは、何人も、その日から三年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。
特許法第48条の3第2項(原文) 第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願については、前項の期間の経過後であつても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から三十日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。
特許法第48条の3第3項・第4項(原文) 出願審査の請求は、取り下げることができない。
第一項の規定により出願審査の請求をすることができる期間内に出願審査の請求がなかつたときは、この特許出願は、取り下げたものとみなす。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。
timeline
    title 出願審査の請求ができる期間(第48条の3第1項・第2項)
    特許出願 : ここから3年以内なら「何人も」請求できる(第1項)
    3年経過 : 請求がなければ取り下げたものとみなす(第4項)
    分割・変更・実用新案登録に基づく特許出願(3年経過後) : その日から30日以内に限り請求できる(第2項)

【図2】請求期間のタイムライン。分割出願等は出願日が元の出願に遡るため、3年がすでに過ぎていることがある。そのための30日特例。

「何人も」―出願人以外が請求したとき

第1項の「何人も」により、出願人以外の第三者も請求できます。第三者が請求したときは、特許庁長官がその旨を出願人に通知します(第48条の5第2項)。出願人は、自分の知らないうちに審査が始まっていた、ということにならないようになっています。

根拠と補足:審査は審査請求を待って行われます。出願人以外が請求したときは、特許庁長官が出願人へその旨を通知します。出典:特許法(第48条の2・第48条の5第2項)。
レベル2のまとめ
  • 第1項:何人も、出願の日から3年以内に請求できる。第4項:しなければ取下げ擬制。第3項:請求の取下げは不可。
  • 第2項:分割・変更・実用新案登録に基づく特許出願は、3年経過後でもその日から30日以内なら請求できる。
  • 第5項〜第8項:故意でない徒過の回復と、回復した場合の第三者保護(通常実施権)。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 第2項の30日特例 ― なぜ必要か

分割出願(第44条第2項)、変更出願(第46条第6項で第44条第2項を準用)、実用新案登録に基づく特許出願(第46条の2第2項)は、出願日が元の出願の日に遡ります。すると、分割等をした時点で「出願の日から3年」がすでに過ぎていることがあり、第1項だけでは請求の機会がなくなってしまいます。そこで第2項は、3年経過後でも、分割等の現実の日から30日以内なら請求できるとしています。

flowchart TB
  A["分割・変更・実用新案登録に基づく特許出願をした"] --> B{"元の出願の日から3年は
まだ残っているか?"} B -- "残っている" --> C["第1項の3年以内に請求可
第2項の30日が後なら、その日まで可"] B -- "もう過ぎている" --> D["第2項:分割等の日から30日以内に請求"] D --> E{"30日以内に請求したか?"} E -- "した" --> OK["審査へ"] E -- "しなかった" --> F["取下げ擬制(第4項の準用・第7項)
故意でなければ回復可(第5項の準用)"] style OK fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style F fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

【図3】分割出願等の請求期間の分岐図。第1項の3年と第2項の現実の分割等から30日を比べ、遅い方まで請求できる。

第46条の2との関係第46条の2第2項は、実用新案登録に基づく特許出願の出願日を遡及させつつ、第48条の3第2項の適用については遡及の例外としています。これは、30日の起算点を現実の出願日にするための調整です(第46条の記事〔表6〕参照)。

2. 第5項 ― 「故意でない」徒過の回復

第5項は、請求期間を過ぎて取下げ擬制となった出願について、出願人が経済産業省令で定める期間内に限り請求できるとし、故意に請求しなかったと認められる場合を除いています。

要素内容根拠
だれが取り下げたものとみなされた出願の出願人(第1項の「何人も」とは異なる)第5項本文
要件故意に期間内に請求しなかったと認められる場合でないこと第5項ただし書
期間手続可能日から2月以内、かつ請求期間の経過後1年以内(特許法施行規則第31条の2)第5項本文
効果第1項の期間が満了する時にされたものとみなす第6項
30日特例の徒過第4項〜第6項を準用(回復できる)第7項

〔表2〕第5項〜第7項の回復のしくみ。

根拠と補足:令和5年4月1日以降に期間を徒過した手続には「故意でない」基準が適用されます。手続ができるようになった日から2月以内、かつ請求期間の経過後1年以内に審査請求と回復理由書の提出を行い、原則として回復手数料も納めます。理由書には故意でないことのほか、審査請求を遅らせる目的でなかったことも記載します。旧期間徒過には旧基準が適用されます。出典:特許庁・期間徒過後の救済(3・4・5・6)。

3. 第8項 ― 回復した場合の第三者保護

いったん「取り下げたものとみなされた」と公報に載った出願が、回復して特許になると、その間に「もう取り下げられたから自由に実施できる」と信じて事業を始めた第三者が不利益を受けます。第8項は、この第三者に法定の通常実施権を与えます。

timeline
    title 第8項の通常実施権が生じる「窓」
    取下げ擬制の旨が掲載された特許公報の発行 : ここから
    第三者が善意で日本国内で実施の事業(またはその準備)を開始 : この「窓」の間に始めた者が対象
    第5項の回復請求があった旨が掲載された特許公報の発行 : ここまで
    特許権の設定登録 : 第三者は「実施・準備をしている発明及び事業の目的の範囲内」で通常実施権を有する

【図4】第8項の要件のタイムライン。「善意」「日本国内」「事業またはその準備」「2つの公報の間」がキーワード。

4. 出願人の請求と第三者の請求の比較

出願人が請求第三者が請求
できるかできる(第1項「何人も」)できる(第1項「何人も」)
期間出願の日から3年(第2項の30日特例あり)同じ
取下げできない(第3項)できない(第3項)
第5項の回復できる(出願人に限る)できない
出願人への通知―特許庁長官が出願人に通知(第48条の5第2項)

〔表3〕請求の主体による違い。回復(第5項)だけは出願人に限られる。

5. 関連する周辺規定(概観)

条文内容(要旨)この記事との関係
第48条の2審査は出願審査の請求を待って行う制度の出発点
第48条の4請求書の記載事項(請求人の氏名・名称・住所等、出願の表示)手続の形式
第48条の5請求があった旨の公報掲載、第三者の請求の出願人への通知「何人も」の受け皿
第48条の6優先審査(出願公開後に第三者が業として実施している場合)審査の順番の例外
第48条の7文献公知発明に係る情報の記載についての通知第17条の2第1項第2号の補正時期

〔表4〕第48条の2〜第48条の7の概観。根拠:特許法第48条の2〜第48条の7。

6. 試験での問われ方

試験種別問われ方の傾向気をつける点
短答式「分割出願の審査請求期間」「第三者は請求できるか」「請求の取下げ」「回復は誰ができるか」「第8項の通常実施権の要件」の正誤3年と分割等から30日の遅い期限を確認。回復は出願人のみ。第8項は「2つの公報の間」+善意+国内+事業または準備
論文式分割出願・変更出願の事例で、審査請求の期限を検討させる【図3】で「3年が残っているか」をまず判断
口述「出願審査の請求ができる期間は」「請求がなかったときの効果は」〔表1〕を口頭で言えるようにする

〔表5〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

過去問との対応:令和8年度短答式試験について、問16の肢1は、分割から30日を過ぎた場合でも元の出願から3年以内なら審査請求できることが論点です(第48条の3第1項・第2項)。問16の正解番号は3です。 出典:公式問題・特許/実用新案の部、公式正解。公式正解は問題単位の番号です。個々の肢の論点説明は条文との照合によります。
レベル3のまとめ
  • 3年(第1項)、30日特例(第2項:分割・変更・実用新案登録に基づく特許出願、3年経過後)、取下げ不可(第3項)、取下げ擬制(第4項)。
  • 回復(第5項)は出願人のみ、故意でない徒過に限る。効果は期間満了時の請求とみなす(第6項)。30日特例の徒過にも準用(第7項)。
  • 回復して特許になった場合、取下げ擬制の公報と回復請求の公報の間に善意で国内で事業(準備)を始めた者に通常実施権(第8項)。

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