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小学生でも分かる意匠法|意匠法第25条・第25条の2 判定・鑑定の嘱託 ― 「似ているかどうか」を特許庁に聞くしくみ

小学生でもわかる意匠法 22:判定と鑑定の嘱託(第25条・第25条の2)

小学生でも分かる意匠法 / C. 意匠権の効力・実施権・侵害 #22

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意匠権の範囲は「登録意匠およびこれに類似する意匠」まで及びます(意匠法第23条)。では、ある製品がその範囲に入るかどうか、誰が答えてくれるのでしょうか。意匠法第25条は、特許庁に「判定」を求める制度を、第25条の2は、裁判所が特許庁に「鑑定」を頼む制度を定めています。どちらも「3名の審判官」が判断しますが、判定には法的な拘束力がない――ここが試験でも実務でもいちばん大事なポイントです。

条文:意匠法第25条・第25条の2関連:特許法第71条・第71条の2、実用新案法第26条特許庁資料:審判便覧 58-00「判定」、判定制度ガイドブック逐条解説:青本〔第22版〕意匠法第25条・第25条の2、特許法第71条・第71条の2参照時点:2026年9月
目次

LEVEL 1イメージでつかむ

「このコップ、私の登録意匠に似てる?」

Aさんは、持ち手がハート型のコップのデザインを意匠登録しました。ある日、お店で持ち手が少しだけ違うハート型のコップを見つけました。「これは私の意匠権の範囲に入るのかな? それとも、違う形だからセーフなのかな?」――自分では決めきれません。

こういうとき、意匠を登録した役所である特許庁に「これは似ていますか?」と意見を聞くことができます。これが判定です。特許庁は、意匠の審査や審判のプロである審判官3人のチームで考えて、「似ています」「似ていません」という答え(判定書)を出してくれます。

Aさん(意匠権者) 登録意匠 お店のコップ 似てる? 判定を求める 特許庁 審判官3人で考える →「判定書」で答える 参考にする 裁判所 最後に決めるのは こちら (判定に縛られない) 橙=当事者(判定を求める人) 緑=特許庁(審判官3名の意見) 紫=裁判所(最終判断) 破線=拘束力なし

図は左右にスクロールできます。

【図1】判定のイメージ。特許庁は「意見」を出すが、争いを最終的に決めるのは裁判所。

特許庁の答えは「命令」ではなく「意見」

ここが大事です。判定で「似ています」と言われても、お店の人が自動的に売るのをやめさせられるわけではありません。判定は、学校で先生に「この答え合ってる?」と聞いて意見をもらうのに近いものです。とても頼りになる意見ですが、最後に決める力(法的な拘束力)はありません。本当に売るのをやめさせたいときは、裁判所に訴える必要があります(意匠法第37条の差止請求)。

裁判所のほうから特許庁に聞くこともある(鑑定の嘱託)

逆に、裁判をしている裁判所が「意匠のことは特許庁がくわしいから、意見を聞こう」と考えることもあります。裁判所が特許庁に「鑑定」(専門家としての意見)を頼むのが鑑定の嘱託(意匠法第25条の2)です。「嘱託(しょくたく)」は「お願いして頼む」という意味です。このときも、特許庁は審判官3人で意見を出します。

判定=人(誰でも)が特許庁に聞く
鑑定の嘱託=裁判所が特許庁に頼む
どちらも審判官3人が判断
どちらも「意見」で、決定権は裁判所
レベル1のまとめ

  • 判定=「この意匠は、登録意匠に似ている?」を特許庁に聞くしくみ。審判官3人が答える。
  • 判定の答えは「意見」。法的に縛る力はなく、最後に決めるのは裁判所。
  • 鑑定の嘱託=裁判所のほうから特許庁に意見を頼むしくみ。

※誰が・いつ判定を求められるか、判定にどんな手続のルールが使われるか、判定に不服があるときどうなるかは、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第25条 ― 判定

意匠法第25条(原文)
登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲については、特許庁に対し、判定を求めることができる。
2 特許庁長官は、前項の規定による求があつたときは、三名の審判官を指定して、その判定をさせなければならない。
3 特許法第七十一条第三項及び第四項の規定は、第一項の判定に準用する。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
項 誰が 何を ポイント
第1項 (限定なし) 「登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲」について特許庁に判定を求めることができる 対象は権利範囲。意匠権者に限らず「求めることができる」
第2項 特許庁長官 「三名の審判官を指定して、その判定をさせなければならない」 合議体は3名。「しなければならない」=義務
第3項 ― 特許法第71条第3項・第4項を準用 審判の手続規定の準用と、却下決定への不服申立て禁止(→レベル3)

〔表1〕意匠法第25条の分解。

第25条の2 ― 鑑定の嘱託

意匠法第25条の2(原文)
特許庁長官は、裁判所から登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲について鑑定の嘱託があつたときは、三名の審判官を指定して、その鑑定をさせなければならない。
2 特許法第七十一条の二第二項の規定は、前項の鑑定の嘱託に準用する。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000125)、2026年9月参照。
項 誰が 何を ポイント
第1項 特許庁長官 「裁判所から」鑑定の嘱託があったとき、「三名の審判官を指定して、その鑑定をさせなければならない」 きっかけは裁判所。人が求めるものではない
第2項 ― 特許法第71条の2第2項を準用 合議体・審判長・審判官の指定に関する規定の準用(→レベル3)

〔表2〕意匠法第25条の2の分解。

2つの制度の入口を比べる

flowchart LR
  A["意匠権者・相手方など(誰でも)"] -- "①判定を求める(第25条第1項)" --> J["特許庁長官"]
  C["裁判所(訴訟の中で)"] -- "②鑑定の嘱託(第25条の2第1項)" --> J
  J -- "③三名の審判官を指定" --> P["審判官3名の合議体"]
  P -- "④判定書" --> A
  P -- "⑤鑑定書" --> C

図は左右にスクロールできます。

【図2】判定と鑑定の嘱託の入口の違い。矢印の①〜⑤は説明の順序(条文の号ではない)。どちらも「特許庁長官が三名の審判官を指定」する点は共通。

意匠法の判定は、特許法の判定とどこが同じか

特許法第71条第1項・第2項(原文)
特許発明の技術的範囲については、特許庁に対し、判定を求めることができる。
2 特許庁長官は、前項の規定による求があつたときは、三名の審判官を指定して、その判定をさせなければならない。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。
特許法第71条の2第1項(原文)
特許庁長官は、裁判所から特許発明の技術的範囲について鑑定の嘱託があつたときは、三名の審判官を指定して、その鑑定をさせなければならない。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。
特許法 意匠法 違い
判定の対象 「特許発明の技術的範囲」(特許法第71条第1項) 「登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲」(意匠法第25条第1項) 意匠は類似範囲まで対象。意匠権の効力が類似意匠に及ぶこと(意匠法第23条)の反映
合議体 三名の審判官 三名の審判官 同じ
鑑定の嘱託 特許法第71条の2 意匠法第25条の2 構造は同じ。対象の言い方だけ違う
手続規定 特許法第71条第3項・第4項に直接規定 意匠法第25条第3項で特許法第71条第3項・第4項を準用 意匠法は「準用」で借りてくる

〔表3〕特許法第71条・第71条の2と意匠法第25条・第25条の2の対応。

レベル2のまとめ

  • 第25条第1項:「登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲」について、特許庁に判定を求めることができる。
  • 第25条第2項:特許庁長官は三名の審判官を指定して判定をさせなければならない。
  • 第25条第3項:特許法第71条第3項・第4項(審判規定の準用、却下決定への不服申立て禁止)を準用。
  • 第25条の2:裁判所からの鑑定の嘱託があったときも、三名の審判官が鑑定する。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 判定の法的性質 ― 「鑑定的性質」にとどまり、行政処分ではない

逐条解説は、意匠法第25条について、意匠の範囲についての特許庁の判定を定めた規定であると説明したうえで、意匠権者は登録意匠に類似する意匠も実施することができるから(意匠法第23条)、類似する意匠の範囲についても判定を求めることができる、と述べています。そして、詳細は特許法第71条の趣旨を参照するよう案内しています(特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕』1316頁)。

そこで案内先の特許法第71条を見ると、逐条解説は、判定は旧法(大正10年法)の確認審判制度に代わるべきものと考えることができるとしたうえで、確認審判との最も大きな相違点は、その判断が何ら法律的な拘束力を有するものでないことを明確にした点にあると説明しています。具体的には、法律的な拘束力を有すると解されるおそれのあった旧法の規定を削除し、一事不再理の規定の適用も外した、としています(青本〔第22版〕283頁)。

さらに〔参考〕欄では、旧法の確認審判の審決の効力について、①鑑定的なもの、すなわち何ら拘束力のないものとする説、②当事者だけでなく第三者をも拘束するとする説、③当事者のみを拘束するとする説の三つの考え方があったと整理したうえで、現行法の判定を求める制度は①の説に立つものである、と述べています(青本〔第22版〕284頁)。判定に法的拘束力がないことは、立法の段階から意図されていた、ということです。

特許庁の審判便覧 58-00「判定」は、判定について、特許発明の技術的範囲等についての特許庁の公的な見解の表明であって、鑑定的性質をもつにとどまり、何らの法的拘束力はなく、行政不服審査法における行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為にあたらない、と説明しています。同時に、高度に専門的・技術的な行政官庁である特許庁が行う鑑定であるから、事実上、社会的に十分尊重され、権威ある判断の一つであると考えられている、とも述べています(審判便覧はこの説明の根拠として名古屋高裁金沢支部の昭和42年6月14日の判決を挙げています)。

ここから導かれる帰結は次のとおりです。

論点 帰結 根拠
判定は行政処分か 行政処分ではない 審判便覧 58-00(鑑定的性質、法的拘束力なし)
判定の結論に不服があるとき 行政不服審査法による不服申立て、行政事件訴訟法による訴えはできない 審判便覧 58-00
裁判所は判定に拘束されるか 拘束されない(裁判所が独自に判断) 法的拘束力がないことの帰結
判定を求める者に法律上の利害関係は必要か 不要(判定制度ガイドブック)。ただし審判便覧は「判定を請求する利益」が必要と説明 判定制度ガイドブック、審判便覧 58-00
いつから求められるか 権利の設定登録後。権利消滅後も可能 判定制度ガイドブック
相手方(被請求人)がいないときも求められるか 可能 審判便覧 58-00

〔表4〕判定の法的性質から導かれる帰結(特許庁の審判便覧・判定制度ガイドブックに基づく整理)。

判定は、特許庁が登録意匠とこれに類似する意匠の範囲について示す判断です。裁判の判決のように当事者を法的に拘束するものではありません。特許庁も「行政サービスの一環」と説明しており、侵害の有無についての判断材料として利用できます。出典:特許庁「判定制度」解説。

2. 判定でできること・できないこと

flowchart TB
  Q["特許庁に聞きたいことは?"] --> A{"登録意匠及びこれに類似する意匠の
「範囲」に属するかどうか?"} A -- "はい" --> J["判定を求められる(意匠法第25条第1項)"] A -- "いいえ" --> B{"何を聞きたい?"} B -- "この意匠登録は無効では?" --> N1["判定の対象外。
意匠登録無効審判(意匠法第48条)で争う"] B -- "相手に実施をやめさせたい" --> N2["判定では止められない。
差止請求(意匠法第37条)は裁判所へ"] B -- "損害を賠償させたい" --> N3["判定では請求できない。
損害賠償請求は裁判所へ"] style J fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style N1 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N2 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style N3 fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図3】判定で扱えるもの・扱えないものの分岐図。判定の対象は「範囲」の問題に限られる(審判便覧 58-00 の「判定の対象」の説明を本記事作成者がフロー化)。凡例:緑=判定で扱える/赤=判定では扱えず、別の手続(無効審判・裁判所)による。

3. 準用される審判手続の規定(特許法第71条第3項・第4項)

意匠法第25条第3項は、特許法第71条第3項・第4項を準用します。特許法第71条第3項は、審判の手続に関する規定を「判定」に借りてくる(準用する)条文で、第4項は却下決定への不服申立てを禁じる条文です。

特許法第71条第3項・第4項(原文)
3 第百三十一条第一項、第百三十一条の二第一項本文、第百三十二条第一項及び第二項、第百三十三条、第百三十三条の二、第百三十四条第一項、第三項及び第四項、第百三十五条、第百三十六条第一項及び第二項、第百三十七条第二項、第百三十八条、第百三十九条(第六号及び第七号を除く。)、第百四十条から第百四十四条まで、第百四十四条の二第一項及び第三項から第五項まで、第百四十五条第二項から第八項まで、第百四十六条、第百四十七条第一項、第二項及び第三項(民事訴訟法第百六十条の二第一項の規定の準用に係る部分に限る。)、第百五十条第一項から第五項まで、第百五十一条から第百五十四条まで、第百五十五条第一項、第百五十七条並びに第百六十九条第三項、第四項及び第六項の規定は、第一項の判定について準用する。この場合において、第百三十五条中「審決」とあるのは「決定」と、第百四十五条第二項中「前項に規定する審判以外の審判」とあるのは「判定の審理」と、同条第六項ただし書中「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるとき」とあるのは「審判長が必要があると認めるとき」と、第百五十一条中「第百四十七条」とあるのは「第百四十七条第一項、第二項及び第三項(民事訴訟法第百六十条の二第一項の規定の準用に係る部分に限る。)」と、第百五十五条第一項中「審決が確定するまで」とあるのは「判定の謄本が送達されるまで」と読み替えるものとする。
4 前項において読み替えて準用する第百三十五条の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。
準用される特許法の条文 内容(本記事作成者の整理) 判定での意味
第131条第1項、第131条の2第1項本文 請求書の記載事項、請求書の補正の制限 判定請求書も審判請求書と同じ様式感覚で書く
第132条第1項・第2項 共同請求 複数人での判定請求
第133条、第133条の2 方式違反・不適法な手続の却下 形式不備の処理
第134条第1項・第3項・第4項 答弁書の提出、審尋 被請求人がいる判定では答弁の機会がある
第135条(「審決」→「決定」と読替え) 不適法な請求の却下 判定では「決定」で却下。この決定には不服申立てができない(特許法第71条第4項)
第136条第1項・第2項、第137条第2項、第138条 合議体・過半数、審判長、審判官の指定 3名の合議体の運営
第139条(第6号・第7号を除く)、第140条〜第144条 除斥・忌避、手続の中止 公平性の確保
第144条の2第1項・第3項〜第5項 審判書記官 調書等の事務
第145条第2項〜第8項(読替えあり) 審理の方式(書面審理が原則、口頭審理にできる) 判定の審理は原則書面審理(審判便覧 58-00)
第146条、第147条第1項〜第3項(一部) 民事訴訟法の準用、調書 ―
第150条第1項〜第5項、第151条〜第154条 証拠調べ・証拠保全、職権審理、審理の併合・分離 ―
第155条第1項(「審決が確定するまで」→「判定の謄本が送達されるまで」) 請求の取下げ 判定の謄本送達までは取り下げられる
第157条 審決の方式 判定書の方式
第169条第3項・第4項・第6項 費用 ―

〔表5〕特許法第71条第3項が判定に準用する審判規定の一覧。条文番号は原文どおり。内容欄は本記事作成者の要約で、青本〔第22版〕特許法編の各条の見出し・〔趣旨〕(第131条〜第169条、同書の第6章)と照合済みです(2026年9月)。

読替えに注目:準用の中で「審決」は「決定」に、「審決が確定するまで」は「判定の謄本が送達されるまで」に読み替えられます。判定は審決ではないので「確定」という概念がなく、謄本の送達で手続が終わる、という構造が読替えから見えてきます。

4. 鑑定の嘱託に準用される規定(特許法第71条の2第2項)

特許法第71条の2第2項(原文)
2 第百三十六条第一項及び第二項、第百三十七条第二項並びに第百三十八条の規定は、前項の鑑定の嘱託に準用する。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。

鑑定の嘱託では、判定と違って合議体の構成に関する規定だけ(第136条第1項・第2項、第137条第2項、第138条)が準用されます。請求書・答弁書・証拠調べ・取下げなどの規定は準用されません。裁判所が訴訟の中で頼むものなので、当事者間の攻撃防御のルールは訴訟側にあるからだと整理できます(本記事作成者の整理)。

この条文が置かれた理由について、逐条解説は、意匠法第25条の2は裁判所から登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲について鑑定の嘱託があったときの取扱いを定めたものであり、詳細は特許法第71条の2の趣旨を参照するよう案内しています(青本〔第22版〕1317頁)。その特許法第71条の2について、逐条解説は、従前から民事訴訟法第218条の規定により特許庁に鑑定を嘱託することは可能であったが、こうした重要な判断を行う主体が明確になっていなかったため、必ず三人の審判官により行われることを条文上明らかにしたものだと説明しています。また第2項の準用については、①三人の審判官の合議体が審理を行うこと、②合議体の合議は過半数により決すること、③審判に関与することに故障がある審判官を他の審判官をもって補充すること、④三人の審判官のうち一人を審判長とすること、の4点を明らかにしたものだとしています(青本〔第22版〕285頁)。

判定(特許法第71条第3項の準用) 合議体・審判長・審判官の指定 第136条第1項・第2項、第137条第2項、第138条 + 請求書(第131条など) + 答弁書・審尋(第134条) + 除斥・忌避(第139条〜第144条) + 審理方式・証拠調べ(第145条〜第154条) + 取下げ・判定書・費用 (第155条第1項・第157条・第169条) 鑑定の嘱託(特許法第71条の2第2項の準用) 合議体・審判長・審判官の指定 第136条第1項・第2項、第137条第2項、第138条 これだけ 当事者の攻撃防御は 裁判所の訴訟手続の中で行われる 緑の実線枠=判定・鑑定の嘱託の両方に準用 橙の破線枠=判定にのみ準用

図は左右にスクロールできます。

【図4】判定と鑑定の嘱託で準用される規定の範囲の比較。共通するのは合議体の構成に関する規定のみ。条文は2026年9月時点のもの。

5. 判定と鑑定の嘱託の対比表

観点 判定(意匠法第25条) 鑑定の嘱託(意匠法第25条の2)
きっかけ 人が特許庁に「求める」 裁判所が特許庁長官に「嘱託」する
誰が求められるか 条文上の限定なし。法律上の利害関係は不要(判定制度ガイドブック) 裁判所のみ
対象 「登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲」 同じ
担当 特許庁長官が指定する三名の審判官 同じ
準用される規定 特許法第71条第3項の広い範囲(〔表5〕) 特許法第71条の2第2項の合議体規定のみ
被請求人 いる場合もいない場合もある(審判便覧 58-00) 該当なし(訴訟の当事者は裁判所側にいる)
結果の名前 判定(判定書) 鑑定(鑑定書)
法的拘束力 なし(審判便覧 58-00) 裁判所の証拠として扱われる。裁判所を拘束するものではない(本記事作成者の整理)
不服申立て できない(行政処分ではない)。却下決定にも不服申立て不可(特許法第71条第4項の準用) 制度上想定されていない

〔表6〕判定と鑑定の嘱託の対比。

6. 四法での判定制度の置き方(特許法・実用新案法・意匠法・商標法)

法 判定の根拠条文 対象 備考
特許法 特許法第71条(判定)、第71条の2(鑑定の嘱託) 「特許発明の技術的範囲」 本体の条文
実用新案法 実用新案法第26条で特許法第70条から第71条の2までを準用 登録実用新案の技術的範囲 実用新案法には、無審査登録を補う「実用新案技術評価」の制度も別にある(実用新案法第12条)。判定とは別の制度なので混同しない
意匠法 意匠法第25条(判定)、第25条の2(鑑定の嘱託) 「登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲」 意匠法に直接規定。手続は特許法第71条第3項・第4項を準用
商標法 商標法第28条 「商標権の効力」(商標法第28条第1項) 意匠・特許と違い、対象は「範囲」ではなく「商標権の効力」という言い方

〔表7〕四法における判定制度の対比。実用新案法第26条の準用対象、商標法第28条第1項、実用新案法第12条(実用新案技術評価の請求)はe-Gov法令検索の原文による(2026年9月参照)。

実用新案法第26条(原文・抜粋)
特許法第六十九条第一項及び第二項、第七十条から第七十一条の二まで(特許権の効力が及ばない範囲及び特許発明の技術的範囲)、第七十三条(共有)、第七十六条(相続人がない場合の特許権の消滅)、第七十九条(先使用による通常実施権)、第七十九条の二(特許権の移転の登録前の実施による通常実施権)、第八十一条、第八十二条(意匠権の存続期間満了後の通常実施権)、第九十七条第一項(放棄)並びに第九十八条第一項第一号及び第二項(登録の効果)の規定は、実用新案権に準用する。

出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000123)、2026年9月参照。

7. 判定の手続の流れ(概略)

flowchart TB
  A["判定請求書を特許庁に提出
(特許法第131条第1項の準用)"] --> B["特許庁長官が三名の審判官を指定
(意匠法第25条第2項)"] B --> C{"請求は適法か?"} C -- "はい" --> E{"被請求人はいるか?"} C -- "いいえ(不適法・補正不能)" --> D["決定で却下
(第135条の読替え準用)
→ 不服申立て不可(特許法第71条第4項)"] E -- "はい" --> F["答弁書の提出(第134条の準用)"] E -- "いいえ(被請求人なし)" --> G["審理へ"] F --> G G --> H["原則 書面審理(第145条第2項の読替え準用)"] H --> I["判定(判定書)の謄本を送達"] I --> J["法的拘束力なし・不服申立て不可"] I -.-> K["謄本送達までは取下げ可
(第155条第1項の読替え準用)"] style D fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F style J fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

図は左右にスクロールできます。

【図5】判定手続の流れ(概略)。準用条文は特許法第71条第3項の原文(2026年9月時点)に基づき、流れは本記事作成者の整理。凡例:赤=却下(例外処理)/緑=判定の効果。実線=必須の手続、点線=任意の手続(取下げ)。

判定請求の手数料は1件4万円です(特許法等関係手数料令第3条の意匠法第67条第2項に関する表)。請求書は、意匠法施行規則第19条第5項が準用する特許法施行規則第39条・様式第57によります。特許庁の記載案内には請求書の項目と料金が示されています。特許庁の2021年の紹介記事には「最短3か月」とありますが、すべての事件の所要期間や期限を保証する数値ではありません。出典:判定制度の紹介。

8. 拒絶理由・無効理由との関係

第25条・第25条の2は権利範囲の判断に関する手続の条文であり、拒絶理由(意匠法第17条)にも無効理由(意匠法第48条第1項)にも該当しません。判定は「範囲に属するか」を答えるだけで、意匠登録に無効理由があるかどうかは判定の対象外です(【図3】)。意匠権の有効性は意匠登録無効審判(意匠法第48条)で別に争います。

9. 試験での問われ方

試験種別 学習用の問いの例 気をつける点
短答式 「判定を求めることができるのは意匠権者に限られる」「判定に対して不服申立てができる」「鑑定の嘱託は当事者が求める」といった正誤 第25条第1項に主体の限定はない/判定は行政処分ではなく不服申立て不可/嘱託は裁判所から
短答式 「特許庁長官は二名の審判官を指定する」など数字の入替え 判定も鑑定も「三名」
短答式 判定の対象の言い方(「登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲」) 特許法は「特許発明の技術的範囲」。意匠は類似範囲を含む
論文式 侵害が疑われる場面で意匠権者がとり得る手段の列挙(警告、判定、差止請求、損害賠償請求など) 判定は「法的拘束力のない公的見解」と位置づけて書く
口述 「判定の法的性質を述べよ」「鑑定の嘱託と判定の違いは」 審判便覧 58-00 の表現(鑑定的性質、法的拘束力なし、行政処分でない)で答える

〔表8〕学習用の問いと確認点。出題実績や頻度の集計ではありません。

令和8年度短答式〔意匠〕全10問の本文では、判定・鑑定の嘱託を直接問う肢はありません。本記事の整理は、出題頻度を示すものではありません。出典:公式問題・公式解答。正解番号は問題全体の答えです。

レベル3のまとめ

  • 判定は「鑑定的性質」にとどまり、法的拘束力がなく、行政処分ではない(審判便覧 58-00)。逐条解説も、判定制度は旧法の確認審判の審決の効力をめぐる三説のうち「鑑定的なもの=何ら拘束力のないもの」とする説に立つと説明している(青本〔第22版〕283〜284頁)。したがって不服申立てはできず、裁判所も拘束されない。
  • 判定の対象は「登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲」に限られ、無効理由の有無や差止め・損害賠償は判定では扱えない。
  • 判定には特許法第71条第3項の準用により審判手続の広い範囲が使われ、「審決」→「決定」などの読替えがある。却下決定には不服申立てができない(特許法第71条第4項)。
  • 鑑定の嘱託は裁判所からのもので、準用されるのは合議体の構成に関する規定のみ(特許法第71条の2第2項)。
  • 実用新案法は実用新案法第26条で特許法第70条から第71条の2までを準用する。

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