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小学生でも分かる特許法|特許法第73条 特許権の共有 ― みんなで持っている特許は、何が自由で、何に同意がいるのか

小学生でもわかる特許法:特許権の共有(特許法第73条)

小学生でも分かる特許法 / C. 特許権の効力・実施権・侵害 #30

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特許権を複数人で共有しているとき、各共有者が自分だけの判断でできることと、他の共有者の同意が必要なことが決まっています。「自分で実施するのは自由、持分を売ったり他人に使わせたりするのは同意が必要」が基本です。

条文:特許法第73条(第1項〜第3項)関連:第33条(特許を受ける権利の共有)、第38条、第132条第2項・第3項、民法第249条以下参照時点:2026年9月

LEVEL 1イメージでつかむ

2人で1つの特許を持っている

AさんとBさんが共同で発明して、特許権を2人で持っています(共有)。Aさんは「自分の工場でこの発明を使いたい」、Bさんは「持分をCさんに売りたい」と考えています。何が自由で、何に相手の同意がいるのでしょうか。

同意なしで自由(第2項) 自分で特許発明を実施する (自分の工場で作る・売る) ※契約で別段の定めをすれば制限できる 他の共有者の同意が必要 持分を譲渡する(第1項) 持分に質権を設定する(第1項) 専用実施権を設定する(第3項) 通常実施権を許諾する(第3項) 「誰が使うか」が変わることは相談が必要

【図1】共有特許権の「自由」と「同意」。

なぜ「自分で使う」は自由なの?

土地や家を共有している場合と違って、発明は「使っても減らない」ものです。Aさんが自分の工場で使っても、Bさんの取り分が減るわけではありません。だから自分で使うのは自由です。

でも、Bさんが持分をCさんに売ったり、Dさんに使わせたりすると、「誰が使うか」が変わります。Cさんが大企業だったら、Aさんの商売は大打撃です。だから、相手の同意が必要になります。

レベル1のまとめ
  • 共有者は、自分で特許発明を実施するのは自由(契約で別に決めた場合を除く)。
  • 持分の譲渡・質権設定、専用実施権の設定・通常実施権の許諾には、他の共有者の同意が必要。

※民法の共有ルールとの違い、審判・訴訟での共有者の扱いなどは、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

特許法第73条(原文)1 特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができない。
2 特許権が共有に係るときは、各共有者は、契約で別段の定をした場合を除き、他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施をすることができる。
3 特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その特許権について専用実施権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができない。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。
項行為同意備考
第1項持分の譲渡必要相続などの一般承継は「譲渡」でないため同意不要(一般的理解)
第1項持分を目的とする質権の設定必要質権実行で持分が移転しうるため
第2項自己による特許発明の実施不要契約で別段の定めをした場合を除く
第3項専用実施権の設定必要
第3項通常実施権の許諾必要

〔表1〕第73条の整理。

flowchart TB
  A["共有特許権の共有者がしたい行為"] --> B{"自分で実施する?"}
  B -- "はい" --> C{"契約で別段の定めがあるか"}
  C -- "ない" --> OK["同意不要(第2項)"]
  C -- "ある" --> D["契約に従う"]
  B -- "いいえ" --> E{"持分の譲渡・質権?
専用実施権・通常実施権?"} E -- "はい" --> NG["他の共有者の同意が必要(第1項・第3項)"] E -- "放棄・相続など" --> F["共有者の同意不要
放棄は専用実施権者・質権者の承諾を別途確認(第97条)"] style OK fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style NG fill:#FDEDED,stroke:#B23A3A,color:#22303F

【図2】第73条の分岐図。

レベル2のまとめ
  • 第1項:持分譲渡・質権に同意。第2項:自己実施は自由(契約で制限可)。第3項:専用実施権・通常実施権に同意。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 民法の共有との違い

民法の共有(民法第249条以下)特許権の共有(第73条)
持分の処分各共有者が自由に処分できる他の共有者の同意が必要(第1項)
使用持分に応じて共有物全部を使用できる(民法第249条第1項)別段の契約がなければ、持分にかかわらず全部を実施できる(第2項)
分割請求原則いつでも分割請求できる(民法第256条)。5年以内の不分割契約が可能発明を物のように切り分けない。共有関係の解消は持分移転等で処理する
趣旨の違い有体物の使用・収益の調整無体物(使っても減らない)の特性と、共有者間の信頼関係の保護

〔表2〕民法の共有との比較。根拠:民法第249条・第256条。

2. 特許を受ける権利の共有(第33条)との対応

行為特許を受ける権利(第33条)特許権(第73条)
持分の譲渡同意(第3項)同意(第1項)
質権設定不可(第2項)同意があれば可(第1項)
実施権仮専用実施権・仮通常実施権に同意(第4項)専用実施権・通常実施権に同意(第3項)
自己実施―別段の契約がなければ可(第2項)
出願・審判請求出願は全員(第38条)、審判請求は全員(第132条第3項)審判請求は全員(第132条第3項)、被請求人は全員(第132条第2項)

〔表3〕出願段階と特許後の共有規定の対応。

3. 手続・訴訟における共有者の扱い

場面扱い根拠
訂正審判の請求共有者全員で第132条第3項
無効審判の被請求人共有者全員を被請求人に第132条第2項
登録済み権利を失わせる無効審決・取消決定への取消訴訟共有者の一人が単独で提起できる(最高裁平成14年2月22日判決〔ETNIES事件・商標〕、平成14年3月25日判決〔パチンコ装置事件・特許〕)下記の最高裁判決
侵害訴訟の提起(差止め・損害賠償)各共有者が単独で提起できる(保存行為・持分に基づく請求として)第100条、民法第709条(自己の損害)
特許料の納付共有者の一人が全額納付できる(第110条:利害関係人の納付)。持分に応じた負担は内部関係第107条第3項(減免者との共有の特則)

〔表4〕手続・訴訟での共有者の扱い。

根拠と補足:最高裁平成14年2月22日(平成13年(行ヒ)第142号)は共有商標の無効審決、同年3月25日(平成13年(行ヒ)第154号)は共有特許の異議取消決定について、一人で取消訴訟を起こせるとしました。既に成立した権利を守る場面であり、共同で権利を取得する手続とは区別します。侵害の差止めは共有者一人からの保存行為として、損害賠償はその共有者自身の損害について請求します。知財高裁令和2年11月30日(平成29年(ネ)第10049号)は、共有者間の実施地域の合意に反した実施について第100条第1項の差止めを認めました。合意に参加していない共有者との関係まで同じ扱いになるわけではありません。出典:判決第3の16・115〜117頁。放棄には第97条第1項の専用実施権者・質権者の承諾が必要です。出典:ETNIES判決・2〜3頁、パチンコ装置判決、特許法第97条・第100条。

4. 「契約で別段の定め」の使い方

第2項の自己実施の自由は、契約で制限できます。共同研究契約では、「一方の当事者は製造販売を行わず、実施料相当額を受け取る」「実施できる地域・分野を分ける」といった定めがよく置かれます。逆に第1項・第3項の同意要件を契約であらかじめ包括的に与えておくことも可能です。

5. 試験での問われ方

試験種別問われ方の傾向気をつける点
短答式「共有者は同意なく自己実施できるか(できる、契約で別段の定めがある場合を除く)」「持分譲渡に同意は必要か」「通常実施権の許諾に同意は必要か」「共有者の一人が無効審判を請求されたとき」「審決取消訴訟の単独提起」〔表1〕〔表3〕〔表4〕
論文式共同研究の事例で、各当事者ができること・できないことと契約での手当てを論じさせる【図2】〔表2〕
口述「共有特許権で同意が必要な行為は」第73条各項

〔表5〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

過去問との対応:令和8年度短答式試験について、特許・実用新案の問1〜20を照合した範囲では、第73条を直接の論点とする肢はありません。 出典:公式問題・特許/実用新案の部、公式正解。公式正解は問題単位の番号です。個々の肢の論点説明は条文との照合によります。
レベル3のまとめ
  • 特許権の共有は民法の共有と異なり、持分処分に同意が必要で、別段の契約がなければ自己実施は持分にかかわらず自由。
  • 第33条(出願前)と第73条(特許後)は対応関係にある。質権は出願前は不可、特許後は同意で可。
  • 審判請求・被請求は全員、審決取消訴訟は判例上単独提起可。

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