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小学生でも分かる特許法|特許法第64条 出願公開 ― 出願から1年6か月たつと、中身はみんなに見える

小学生でもわかる特許法:出願公開(特許法第64条)

小学生でも分かる特許法 / B. 出願・審査の手続 #22

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出願した発明は、審査が終わるのを待たずに、出願から1年6月で世の中に公開されます。早く公開して重複研究を防ぎ、技術の進歩を早めるためです。公開されると、拡大先願(第29条の2)の引用になり、補償金請求権(第65条)の起点にもなります。

条文:特許法第64条、第64条の2、第64条の3関連:第29条の2、第65条、第48条の3参照時点:2026年9月

LEVEL 1イメージでつかむ

出願した発明は、しばらく秘密

拡大先願(第29条の2)の記事で、「出願された発明は、しばらくの間、外からは見えない」という話をしました。出願書類は特許庁の中で秘密にされています。

でも、ずっと秘密のままだと困ります。ほかの人が同じ研究を続けてムダになったり、その技術をもとにもっといい発明をするチャンスが失われたりするからです。

1年6か月たったら、開封

そこで特許法は、出願の日から1年6月たったら、審査が終わっていなくても、出願の中身を公開すると決めています。これが出願公開です。特許庁が「公開特許公報」という形で、誰でも見られるようにします。

出願 秘密(特許庁の中だけ) 1年6月経過 → 出願公開 公開特許公報に載る 誰でも見られる 審査が終わっていなくても公開される(審査の請求は3年以内なので、公開が先になることが多い)

【図1】出願公開のタイムライン。出願から1年6月で「秘密」から「公開」に切り替わる。

早く公開してもらうこともできる

「早く公開してほしい」という出願人もいます。公開されると、まねをした人にお金を請求できる権利(補償金請求権)が発生するからです。そのために、1年6月を待たずに公開を請求するしくみ(出願公開の請求)もあります。

レベル1のまとめ
  • 出願の中身は、出願の日から1年6月たつと公開される(出願公開)。審査が終わっていなくても公開される。
  • 早く公開してほしければ、請求できる。

※公開されない場合(取り下げた出願など)、公開されるもの・されないもの、公開の効果は、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

第64条 ― いつ、何を公開するか

特許法第64条第1項(原文) 特許庁長官は、特許出願の日から一年六月を経過したときは、特許掲載公報の発行をしたものを除き、その特許出願について出願公開をしなければならない。次条第一項に規定する出願公開の請求があつたときも、同様とする。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。優先権を伴う場合の最先日起算は第36条の2第2項括弧書きにより第64条第1項にも適用される。
項内容(要旨)
第1項特許庁長官は、出願の日から1年6月を経過したとき、特許掲載公報の発行をしたものを除き、出願公開をしなければならない。出願公開の請求(第64条の2)があったときも同様
第2項出願公開は、次の事項を特許公報に掲載して行う:①出願人の氏名・名称・住所等、②出願の番号・年月日、③発明者の氏名・住所等、④明細書・特許請求の範囲に記載した事項と図面の内容、⑤要約書に記載した事項、⑥外国語書面出願では外国語書面・外国語要約書面に記載した事項、⑦出願公開の番号・年月日、⑧その他必要な事項。ただし④〜⑥は、掲載が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると特許庁長官が認めるときは掲載しない
第3項要約書の記載が第36条第7項に適合しないときその他必要があるときは、特許庁長官が自ら作成した事項を要約書の事項に代えて掲載できる

〔表1〕第64条の項ごとの内容。

第64条の2・第64条の3 ― 出願公開の請求

条・項内容(要旨)
第64条の2第1項柱書出願人は、次の場合を除き、出願公開の請求ができる
同第1号すでに出願公開されている場合
同第2号パリ条約等による優先権の主張を伴う出願で、優先権証明書類等と第43条第5項の書面が提出されていない場合
同第3号外国語書面出願で、翻訳文が提出されていない場合
第64条の2第2項出願公開の請求は取り下げることができない
第64条の3請求書の記載事項(請求人の氏名・名称・住所等、出願の表示)

〔表2〕出願公開の請求(第64条の2・第64条の3)。第2号・第3号は「公開すべき内容が確定していない」場合の除外。

flowchart TB
  A["特許出願"] --> B{"出願の日から1年6月を経過したか?
または出願公開の請求があったか?"} B -- "いいえ" --> W["公開しない(秘密のまま)"] B -- "はい" --> C{"特許掲載公報の発行を
すでにしたか?"} C -- "した" --> N1["出願公開はしない
(特許掲載公報で公開済み)"] C -- "していない" --> D{"出願はまだ係属しているか?"} D -- "取下げ・放棄・却下・拒絶確定" --> N2["原則は通常の出願公開なし
早期公開請求・PCTは別"] D -- "係属中" --> P["出願公開(第64条第1項)
特許公報に第2項各号の事項を掲載"] P --> E["公序良俗を害するおそれがある事項(第4号〜第6号)は掲載しない(第2項ただし書)"] style P fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F

【図2】出願公開の分岐図。

レベル2のまとめ
  • 第64条第1項:出願の日から1年6月で出願公開(義務)。特許掲載公報を発行済みなら不要。請求があれば早期に公開。
  • 第64条第2項:特許公報に掲載する事項の一覧。公序良俗を害するおそれがある明細書等・要約書・外国語書面は掲載しない。
  • 第64条の2:早期公開の請求。優先権証明書類等・翻訳文が未提出なら請求できない。請求の取下げ不可。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 「1年6月」の起算日

出願の種類起算日根拠
通常の出願特許出願の日第64条第1項
パリ条約による優先権・国内優先権を伴う出願優先日(最先の日)第36条の2第2項括弧書き(「……最先の日。第六十四条第一項において同じ。」)
分割出願・変更出願・実用新案登録に基づく特許出願もとの出願の日(出願日の遡及)。ただし分割等の時点ですでに1年6月を過ぎていれば、分割等の後に公開される第44条第2項本文、第46条第6項、第46条の2第2項
国際特許出願(PCT)第64条は不適用。日本語出願は国際公開、外国語出願は翻訳文提出後の国内公表を区別第184条の9第1項・第4項・第5項

〔表3〕起算日の整理。

優先日起算の根拠第64条第1項の「特許出願の日」は、第36条の2第2項の括弧書き(優先権の主張を伴う特許出願にあっては最先の日。「第六十四条第一項において同じ。」)により定義されています。したがって、優先権主張を伴う出願の出願公開は最先の日から1年6月で行われます(外国語書面出願の記事参照)。
根拠と補足:PCT出願には第64条の出願公開を適用しません。外国語特許出願は翻訳文が提出されたものについて、原則として国内書面提出期間(該当するときは翻訳文提出特例期間)の経過後に国内公表します。期間内の審査請求・回復翻訳文の提出には別の時点が定められています。日本語特許出願の国際公開と外国語特許出願の国内公表を区別します。出典:特許法(第184条の9第1項・第4項・第5項)。

2. 出願公開の効果 ― 何が変わるか

効果内容条文
補償金請求権の発生の起点出願公開後に警告をして、業として発明を実施した者に対し、設定登録後に補償金を請求できる第65条(次の記事)
拡大先願の引用になる本願より前に出願され、本願の後に出願公開された他の出願の当初明細書等が、第29条の2の引用になる第29条の2
新規性喪失の先行技術になる公開後は「頒布された刊行物に記載された発明」等として、それ以後の出願に対する第29条第1項第3号の先行技術になる第29条第1項第3号
第三者による情報提供・審査請求公開で内容を知った第三者も、審査請求や刊行物等提出書による情報提供を検討できる。審査請求自体は公開前から可能第48条の3、特許法施行規則第13条の2
優先審査の前提出願公開後に第三者が業として実施している場合の優先審査第48条の6
取下げ後も公開の効果は残る出願公開後に出願が取り下げられても、公開された事実は消えない。第29条の2の引用にも、第29条第1項の先行技術にもなり続ける第29条の2、第29条第1項

〔表4〕出願公開の効果。

根拠と補足:第三者の審査請求は公開後だけに限られず、出願から3年以内は「何人も」請求できます。情報提供は刊行物等提出書による手続で、特許法施行規則第13条の2が根拠です。公開後に第三者が業として実施しており必要がある場合、長官は優先審査をさせることができます。出典:特許法(第48条の3第1項・第48条の6)。出典:特許法施行規則・第13条の2。
flowchart LR
  P["出願公開"] --> E1["第65条 補償金請求権
(警告+実施→登録後に請求)"] P --> E2["第29条の2 拡大先願の引用
(本願後の公開でも効く)"] P --> E3["第29条第1項第3号 刊行物公知
(公開後の出願に対して)"] P --> E4["第48条の3 第三者の審査請求
第48条の6 優先審査
情報提供"]

【図3】出願公開から派生する効果の相関図。

3. 出願公開されない場合・掲載されない事項

場合扱い根拠
1年6月経過前に特許掲載公報が発行された出願公開しない(特許掲載公報が公開の役割を果たす)第64条第1項「特許掲載公報の発行をしたものを除き」
1年6月経過前に取下げ・放棄・却下・拒絶査定確定原則、通常公開なし。早期公開請求後・外国語PCTの国内公表は別特許庁・公報FAQ/方式審査便覧54.51
明細書等・要約書・外国語書面の内容が公序良俗を害するおそれその事項は掲載しない(出願公開自体は行う)第64条第2項ただし書
要約書が第36条第7項に適合しない特許庁長官が自ら作成した事項を掲載できる第64条第3項

〔表5〕公開されない場合と掲載されない事項。

根拠と補足:通常の出願公開は、1年6月経過前に取下げ・放棄・却下・拒絶査定確定となった出願には原則行われません。ただし早期公開請求後の取下げ・放棄・拒絶査定確定でも公開されます。また翻訳文が提出され国内移行した外国語PCT出願は、公報発行前に終了していても国内公表されます。出典:特許庁・公報FAQ(2-3および取下げ等の扱い)。

4. 出願公開の請求(早期公開)の使いどころ

観点内容
目的補償金請求権(第65条)を早く発生させる。模倣品が出回っている場合など
できない場合すでに公開済み/優先権証明書類等が未提出/外国語書面出願で翻訳文が未提出(第64条の2第1項各号)
取下げできない(第64条の2第2項)。いったん請求すると公開は止められない
出願審査の請求との違い出願公開の請求は出願人のみ。出願審査の請求は何人も(第48条の3第1項)。どちらも取下げ不可

〔表6〕出願公開の請求の整理。

5. 実用新案・意匠・商標との比較

法域出願公開制度理由
特許あり(出願から1年6月)審査に時間がかかるため、早期公開で重複研究を防ぐ
実用新案なし(無審査で登録後に実用新案掲載公報)登録が早いため不要
意匠なし(登録後に公報。秘密意匠制度あり)デザインは公開により模倣されやすい
商標出願公開あり(商標法第12条の2)出願内容を知らせる制度。第13条の2の金銭的請求権は公開を要件とせず、出願後の書面による警告が必要

〔表7〕四法の比較。根拠:商標法第12条の2・第13条の2。

6. 試験での問われ方

試験種別問われ方の傾向気をつける点
短答式「出願公開の請求は取り下げられるか」「翻訳文未提出の外国語書面出願で請求できるか」「特許掲載公報発行後に出願公開されるか」「出願公開後に取り下げた出願は第29条の2の引用になるか」「要約書の差替え」〔表2〕〔表4〕〔表5〕。第64条第2項ただし書は4号〜6号のみ
論文式タイムライン問題で、公開の時期が第29条第1項・第29条の2・第65条のどれに効くかを論じさせる【図3】と拡大先願の記事【図3】を組み合わせる
口述「出願公開の時期は」「出願公開の請求ができない場合は」〔表1〕〔表2〕

〔表8〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

過去問との対応:令和8年度短答式試験について、問8の肢2は出願公開請求後の要約書の補正(第17条の3)、問19の肢3は元の出願の取下げと公開済みの分割出願の拡大先願の関係を扱います。正解番号は問8が1、問19が5です。「第65条の2」を根拠とする説明ではありません。 出典:公式問題・特許/実用新案の部、公式正解。公式正解は問題単位の番号です。個々の肢の論点説明は条文との照合によります。
レベル3のまとめ
  • 起算日は出願日(優先権主張があれば優先日、分割等は遡及した出願日)。特許掲載公報発行済み・非係属の出願は公開されない。
  • 効果:第65条の起点、第29条の2の引用、第29条第1項第3号の先行技術、第三者の審査請求・情報提供・優先審査。取下げ後も公開の効果は残る。
  • 出願公開の請求は出願人のみ、取下げ不可、優先権証明書類等・翻訳文未提出なら不可。

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