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小学生でも分かる特許法|特許法第134条の2 訂正の請求 ― 無効審判の中で、特許を「小さく直して守る」

小学生でもわかる特許法:訂正の請求(特許法第134条の2)

小学生でも分かる特許法 / D. 審判・訴訟 #44

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無効審判を請求された特許権者の最大の防御手段が「訂正の請求」です。審判の中で請求項を減縮するなどして無効理由を回避します。訂正審判(第126条)と要件はほぼ同じですが、無効審判の手続の中で行うための特別なルール(時期、単位、取下げ、独立特許要件の例外)があります。

条文:特許法第134条の2(第1項〜第9項)関連:第126条(訂正審判)、第134条(答弁書)、第134条の3、第120条の5(異議申立てでの訂正)、第123条第1項第8号参照時点:2026年9月

LEVEL 1イメージでつかむ

攻められたら、守りやすい形に直す

無効審判(第123条)を請求されると、特許権者は「あなたの特許は先行技術と同じだから無効だ」と攻められます。そのとき、特許の範囲を少しせばめて「先行技術とは違う部分だけを権利にします」と直せれば、無効を免れることができます。

ところが、無効審判が始まっている間は、訂正審判(第126条)を別に請求することはできません(第126条第2項)。そのかわり、無効審判の中で訂正を請求できます。これが訂正の請求です。

特許無効審判(1つの事件の中) 請求人の攻撃 「請求項1は無効」 特許権者の防御 訂正の請求(減縮など) 訂正後の 請求項で審理 訂正審判を別に起こすのではなく、同じ事件の中で直す

【図1】訂正の請求のイメージ。攻撃と防御を1つの事件で審理する。

レベル1のまとめ
  • 無効審判の中で、特許権者は明細書等の訂正を請求できる(訂正の請求)。
  • 無効審判係属中は訂正審判は使えないので、訂正の請求が防御の手段になる。

※請求できる時期、直せる内容、複数回請求したときの扱いなどは、正確には条件があります(→レベル2・レベル3)。

LEVEL 2条文の骨格

特許法第134条の2第1項(原文)特許無効審判の被請求人は、前条第一項若しくは第二項、次条、第百五十三条第二項又は第百六十四条の二第二項の規定により指定された期間内に限り、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正を請求することができる。ただし、その訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 特許請求の範囲の減縮 二 誤記又は誤訳の訂正 三 明瞭でない記載の釈明 四 他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。
出典:e-Gov法令検索(法令ID 334AC0000000121)、2026年9月参照。
項役割内容(要旨)
第1項時期・目的被請求人は、①答弁書提出期間(第134条第1項・第2項)、②審決の予告に対する応答期間(第164条の2第2項)、③職権審理の結果の通知に対する期間(第153条第2項)、④取消判決確定後の再審理開始に際する指定期間(第134条の3。確定から1週以内の請求)に限り、訂正を請求できる。目的は訂正審判と同じ4つ
第2項単位請求項ごとに請求できる。無効審判が請求項ごとに請求されているときは請求項ごとに請求しなければならない
第3項単位(一群)一群の請求項があるときは一群ごとに
第4項副本送達審判長は訂正請求書等の副本を請求人に送達
第5項職権審理審判官は、訂正が目的要件・第126条第5項〜第7項に適合しないことを、当事者が申し立てない理由についても審理できる。その理由で認めないときは通知して意見を述べる機会を与える
第6項先の請求の取下げ擬制訂正の請求がされたとき、同じ審判事件で先にした訂正の請求は取り下げられたものとみなす
第7項取下げ訂正の請求は、訂正した明細書等の補正ができる期間内に限り取り下げられる。請求項ごとにしたときは全部を取り下げる
第8項無効審判の取下げとの連動無効審判の請求が請求項ごとに取り下げられたときは、訂正の請求も当該請求項ごとに取り下げられたものとみなす。全部取下げなら全部
第9項準用第126条第4項〜第8項、第127条、第128条、第131条第1項・第3項・第4項、第131条の2第1項、第132条第3項・第4項、第133条第1項・第3項・第4項を準用。独立特許要件(第126条第7項)は「特許無効審判の請求がされていない請求項」に係る減縮・誤記誤訳訂正についてのみ

〔表1〕第134条の2の項ごとの内容(e-Gov、2026年9月参照)。

flowchart LR
  A["無効審判の請求"] --> B["答弁書提出期間
→ 訂正の請求①"] B --> C["審理"] C --> D["請求に理由あり等の所定の場合
審決の予告(第164条の2)→ 訂正の請求②"] D --> E["審決"] C -. "職権審理の結果通知(第153条第2項)
→ 訂正の請求" .-> C B -. "②がされると①は取下げ擬制(第6項)" .-> D

【図2】訂正の請求ができるタイミング。最後にした訂正の請求だけが生きる。

レベル2のまとめ
  • 時期:答弁書提出期間、審決の予告への応答期間など、指定された期間内に限る。目的は訂正審判と同じ4つ。
  • 請求項ごと(一群ごと)に請求。後の請求で先の請求は取下げ擬制。
  • 第126条第4項〜第8項等を準用。独立特許要件は無効審判の対象外の請求項についてのみ。

LEVEL 3要件・例外・試験での問われ方

1. 独立特許要件の読み替え ― なぜ対象請求項には課さないのか

flowchart TB
  A["訂正の請求(減縮または誤記・誤訳の訂正)"] --> B{"その請求項は無効審判の請求対象か"}
  B -- "対象である" --> C["独立特許要件は課さない
(無効理由の有無は本案の審理で判断するため、二重に審理しない)"] B -- "対象でない" --> D["独立特許要件を課す(第126条第7項の準用)
(誰も無効理由を審理しないので、訂正の段階でチェック)"] style C fill:#E6F5F3,stroke:#1F8A83,color:#22303F style D fill:#FFF3E8,stroke:#D9782D,color:#22303F

【図3】第9項の読み替えの趣旨。

2. 訂正審判との比較

訂正審判(第126条)訂正の請求(第134条の2)
手続の性格独立した審判無効審判の中の付随手続
時期第126条第2項の禁止期間外(異議申立て・無効審判請求から決定・審決確定までを除き、取消訴訟係属中も不可)無効審判係属中の指定期間内
目的の4類型第126条第1項ただし書第134条の2第1項ただし書(同じ)
範囲内・拡張変更禁止第126条第5項・第6項第9項で準用
独立特許要件減縮・誤記誤訳訂正のすべてに無効審判の対象でない請求項についてのみ
審理の主体訂正審判の合議体無効審判の合議体(職権審理:第5項)
結論訂正審決(認容/不成立)無効審判の審決の中で訂正の可否を判断
効果第128条(遡及)第128条を準用(第9項)
不服申立て審決取消訴訟無効審判の審決に対する審決取消訴訟の中で争う

〔表2〕訂正審判と訂正の請求の比較。

3. 審決の予告(第164条の2)との関係

平成23年改正で、審判長は無効審判の審理が熟し、請求に理由がある場合その他省令所定の場合に審決の予告をし、特許権者に訂正の請求の機会を与える制度が導入されました(第164条の2)。これにより、審決取消訴訟後に訂正審判で争点を蒸し返す「キャッチボール」現象が減りました。同時に、審決取消訴訟提起後の訂正審判の請求は認められなくなりました(第126条第2項)。

第164条の2第1項は、無効審判が審決をするのに熟し、請求に理由があると認める場合その他省令で定める場合に、当事者・参加人への審決の予告を義務付けています。第2項により、被請求人には訂正請求のための相当の期間を指定します。平成23年改正解説の関連箇所は第3章「審決取消訴訟提起後の訂正審判の請求の禁止」です。第164条の2/改正解説の章立て。

4. 訂正の請求書の補正(第17条の5)と取下げ(第7項)

論点内容
訂正した明細書等の補正第17条の5第2項が定める期間内に限り可(要旨)
訂正の請求の取下げ上記の補正ができる期間内に限り可。請求項ごとにした場合は全部を取り下げる(第7項)
無効審判の取下げとの連動無効審判の請求が取り下げられれば訂正の請求も取下げ擬制(第8項)。訂正だけを残すことはできない

〔表3〕補正・取下げの整理。第17条の5第2項の指定期間内に訂正書類を補正でき、第134条の2第7項はその期間に取下げを認める。

5. 異議申立てでの訂正の請求(第120条の5)との比較

無効審判(第134条の2)異議申立て(第120条の5第2項)
時期答弁書提出期間、審決の予告への応答期間等取消理由通知の指定期間
相手方への副本交付請求人に副本送達(第4項)異議申立人に副本を送付し意見書提出の機会(第120条の5第5項。意見不要の申出・特別事情の例外あり)
独立特許要件無効審判の対象外の請求項のみ異議申立ての対象外の請求項のみ(同趣旨の読み替え)
先の請求の取下げ擬制あり(第6項)あり(第120条の5第7項)

〔表4〕無効審判と異議申立てにおける訂正の請求。第120条の5の項番号は異議申立ての記事で確認。

6. 試験での問われ方

試験種別問われ方の傾向気をつける点
短答式「訂正の請求ができる時期」「後の訂正の請求で先の請求はどうなるか」「無効審判の対象請求項に独立特許要件はかかるか」「無効審判の取下げ時の訂正の請求」「一部の請求項だけ訂正の請求を取り下げられるか」〔表1〕【図3】〔表3〕
論文式無効審判を請求された特許権者の対応策を、時期と要件を示して論じさせる【図2】〔表2〕
口述「訂正の請求ができる期間は」「訂正審判との違いは」第134条の2第1項、〔表2〕

〔表5〕試験での問われ方の整理。傾向の記述は本記事作成者の整理であり、出題を保証するものではありません。

問2(ロ)は訂正請求後の審理終結、問5(ニ)は実用新案の請求項削除の訂正(特許の訂正請求とは別制度)、問18(ホ)は再度の訂正請求が論点です。 公式正解番号:問2=2、問5=4、問18=5。 公式問題/公式正解。
レベル3のまとめ
  • 訂正の請求は無効審判の指定期間内(答弁書期間・審決の予告への応答期間等)に限る。目的・範囲・拡張変更禁止は訂正審判と同じ。
  • 独立特許要件は無効審判の対象外の請求項のみ(第9項の読み替え)。
  • 後の請求で先の請求は取下げ擬制(第6項)。無効審判の取下げに連動して訂正の請求も取下げ擬制(第8項)。

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