この記事にはアフィリエイト広告が含まれます。
令和8年度 論文式・必須科目
令和8年度の特許・実用新案【問題Ⅰ】の1は、パリ条約の優先権から始まって、前置審査、審判と、同じ「補正」を三つのステージで追いかける問題でした。私がこの手の問題を実際にどう手を動かして崩すか、その順番のまま書いていきます。
問題文
まず原文です。傍点は原文どおりに付けています(本番の問題冊子では甲・乙・イ・α・βなどに傍点が振られていて、これが「記号は勝手に増やすな」という出題者の合図になっています)。
【問題Ⅰ】
以下の設問に答えよ。解答は、いずれも法令及び条約上の根拠を提示し、その要件に各設問の事実を当てはめて、結論を導き出すこととする。ただし、文中に説明がない限り、各設問はいずれも独立しており、各設問に記載の事実は他の設問との関係では存在しないものとする。また、問題に示されていない事実をあえて仮定して論じる必要はない。
1 パリ条約の同盟国Xにおいて、同盟国民である甲は、2024年4月1日に請求の範囲に発明イを記載した特許出願Aをした。その後、甲は、出願Aについて出願の公開がされていない状態、かつ、いかなる権利をも存続させない状態で、2024年4月15日に出願Aを取り下げ、2024年5月1日に同盟国Xに請求の範囲に発明イを記載した特許出願Bをした。なお、甲は出願Bの時までに、出願Aに基づく優先権の主張を伴う出願を行ったことはなかった。
甲は、令和7年(2025年)4月15日に、日本国特許庁に対し、出願Bに基づくパリ条約による優先権の主張を伴う、特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Cをした。
出願Cに対し、審査官より特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとの理由で、拒絶理由が通知された。甲は、発明の技術上の意義が審査官に理解されていないと判断し、その意義を明確にすべく明細書を補正する補正αを行うとともに、意見書において、従来技術との違いについて補充説明をするなどして応答したが、同じ理由によって拒絶をすべき旨の査定(以下「原査定」という。)の謄本が送達された。甲は、拒絶査定不服審判の請求可能期間内に審判請求をすると同時に、特許請求の範囲を補正する補正βを行った。
(1) 出願Cに係る発明イに関して、出願Bに基づく優先権の主張の手続は適法か否か、説明せよ。
(2) 特許法第162条に規定する審査(いわゆる前置審査)において、審査官は補正βが、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものではなかったが、審判請求書における甲の主張を検討した結果、原査定の理由は妥当でなく、原査定時の出願Cについては、拒絶の理由を発見しないとの心証を得た。この場合、審査官はどのように前置審査を進めるべきか、説明せよ。
(3) 審判において、審判官合議体は、補正βは適法であり、かつ補正βにより原査定の拒絶の理由は解消するとの心証を得たが、審査段階でした補正αが、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないとの心証を得た。この場合、補正αに関して、当該審判官合議体はどのように審理を進めるべきか、説明せよ。なお、さらに審査に付すべき旨の審決については考慮する必要はない。
【60点】
特許庁公表の論点は「1 パリ条約の優先権主張の基礎となる出願/2 前置審査/3 審判請求前の補正の取扱い」。
問題文を読まず、設問だけ読む
私は必ず設問から読みます。問題文の事実から読み始めると、目に入った事実を片っ端から拾ってしまって、結局何を探しに読むのか決まらないまま二周目に入ることになるからです。設問だけ読めば、探し物のリストが先に手に入ります。
この3つを並べると、こう見えます。
| 設問 | 問われている場面 | 取り出す条文 |
|---|---|---|
| (1) | 優先権主張の手続の適否 | パリ4条C、特43条 |
| (2) | 前置審査で審査官がどう進めるか | 特162〜164条 |
| (3) | 審判で合議体がどう審理するか | 特159条 |
ここで気づきたいのは、(2)と(3)が対(ペア)になっているということです。どちらも「当初明細書等の範囲外=新規事項の補正が見つかった」という同じ状況で、違うのはそれを見つけたのが審査官か審判官か、そしてどの補正(β か α)かだけ。つまりこの問題の芯は、
補正を「決定で却下」できるのは誰で、どの補正か。却下できないなら、代わりに何をするのか。
ここまで決まれば構成は自動的に出ます。(1)は独立して優先権で書き切る。(2)(3)は同じ表(誰が/どの号の補正を/却下できるか)を頭の中に置いて、却下できる側=(2)、却下できない側=(3)として書き分ける。配点60点・3設問なので20点ずつ、時間配分は問題Ⅰ全体60分のうち35分程度を割り当てます。
マーカーを引く ── とくに「なお書き」
ここで初めて問題文を読みます。色の決め方は単純で、日付は青、あとは「どの出願の話か」で色を変える。事実が出願A・B・Cのどの系列に属するのかが色で分かれば、ステップ3の図がそのまま引けます。そして主体(甲)にも必ずマーカーを引く──共同出願や承継が絡む問題では、この一本が命綱になります。
- 日付・期間
- 主体(甲)
- 出願Aの系列
- 出願Bの系列
- 出願Cの系列
1 パリ条約の同盟国Xにおいて、同盟国民である甲は、2024年4月1日に請求の範囲に発明イを記載した特許出願Aをした。その後、甲は、出願Aについて出願の公開がされていない状態、かつ、いかなる権利をも存続させない状態で、2024年4月15日に出願Aを取り下げ、2024年5月1日に同盟国Xに請求の範囲に発明イを記載した特許出願Bをした。なお、甲は出願Bの時までに、出願Aに基づく優先権の主張を伴う出願を行ったことはなかった。
甲は、令和7年(2025年)4月15日に、日本国特許庁に対し、出願Bに基づくパリ条約による優先権の主張を伴う、特許請求の範囲に発明イを記載した特許出願Cをした。
出願Cに対し、審査官より特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとの理由で、拒絶理由が通知された。甲は、…明細書を補正する補正αを行うとともに、意見書において…応答したが、同じ理由によって拒絶をすべき旨の査定(原査定)の謄本が送達された。甲は、拒絶査定不服審判の請求可能期間内に審判請求をすると同時に、特許請求の範囲を補正する補正βを行った。
そして本題。この問題、「なお書き」が2つあり、両方が答えの半分を渡してくれています。私はなお書きには二重線を引いて、余白に「なぜここに置いた?」と書き込みます。
なお書き①(1の第1段落・末尾)
「なお、甲は出願Bの時までに、出願Aに基づく優先権の主張を伴う出願を行ったことはなかった。」
→ パリ条約4条C(4)の第3要件「その先の出願がまだ優先権の主張の基礎とされていないこと」を、出題者がわざわざ満たしてくれている。ということは、4条C(4)を書かせに来ている。ここを読み飛ばすと、出願A起算で「優先期間経過・不適法」と真逆の結論に着地します。
なお書き②(設問(3)・末尾)
「なお、さらに審査に付すべき旨の審決については考慮する必要はない。」
→ 特160条1項を書くな、という指示。逆に読むと、「差戻し以外の手を書け」=特159条2項で準用する特50条の拒絶理由通知が本命だと言っているのと同じです。除外指示は、消去法で答えを教えてくれる合図として読みます。
なお書き・ただし書・カッコ書きは、字数の都合で削られずに残った文です。残っている理由がある、と考えて読む。
図解する ── タイムチャート
日付が4つ出てきた時点で、私は答案構成用紙に縦のタイムチャートを引きます。横に寝かせると出願A・B・Cの出来事が一本の線に混ざってしまうので、第1列に日付、第2列以降に出願A・出願B・出願Cと列を分けて、上から下へ時間を流します。優先権は「どの出願の日が初日か」だけで勝負が決まるので、列を分けておけば起算点の取り違えが起きません。
出願C以降の経過は、日付ではなく手続の段が問題なので、縦に並べずに一列で書きます。
29条2項→ 補正α(明細書)
17条の2①1号→ 原査定(拒絶)→ 審判請求+補正β(特請)
17条の2①4号
この図の意味は1つです。補正αは「1号の補正・審判請求前」、補正βは「4号の補正・審判請求と同時」。号が違い、時期が違う。(2)(3)の分かれ目は全部ここから出ます。
そこで、却下できるかの表をその場で作ります。これが答案構成の背骨になります。
| 補正を却下できるか | 審査 53条1項 | 前置審査 163条1項→53条1項 | 審判 159条1項→53条1項 |
|---|---|---|---|
| 補正α 1号(最初の拒絶理由通知への応答) =審判請求前の補正 |
× 50条の2通知なし |
× 「審判請求前にしたものを除く」 |
× 同じ読替えで除外 |
| 補正β 4号(審判請求と同時) |
― | ○ ただし164条2項の枠内 |
○ |
読替えの現物を確認しておきます。163条1項(=前置審査)と159条1項(=審判)は、実はまったく同じ読替えです。
53条1項中「第17条の2第1項第1号又は第3号」→「第17条の2第1項第1号、第3号又は第4号」と、「補正が」→「補正(同項第1号又は第3号に掲げる場合にあつては、拒絶査定不服審判の請求前にしたものを除く。)が」と読み替える。
つまり4号の補正(=β)だけが却下の対象に加わり、1号・3号の補正で審判請求前にしたもの(=α)は明文で外されている。ここまで図と表ができていれば、あとは埋めるだけです。
構成+メモ書き
答案構成用紙に実際に書く分量はこの程度です。文章にはしません。条番号と結論だけを、答案に書く順に縦に並べます。
(1) 優先権主張は適法か
- パリ4条A(1)(2)(3):甲=同盟国民/出願B=正規の国内出願
- 4条C(4):同一対象・同一同盟国/Aは公開なし・権利残さず・Bの日までに取下げ/Aはまだ基礎とされていない → Bを「最初の出願」とみなす
- 4条C(1)(2):12箇月・初日不算入 → 2025.5.1まで/出願C 2025.4.15 → 期間内
- 特43条1項・2項:書面に書くのはBの国名・年月日(43条1項が4条C(4)を明記)
- 結論:適法。なお4条C(4)後段でAは基礎にできない
(2) 前置審査の進め方
- 特162条:審判請求と同時の補正あり → 前置審査へ
- 補正β=4号・17条の2第3項違反 → 163条1項準用53条1項で却下しなければならない
- 164条2項:前置審査で却下決定ができるのは特許査定をする場合に限る(反対解釈)→ 本問は該当
- 却下後=原査定時の出願C → 拒絶理由なし → 163条3項準用51条で特許査定
- 164条1項:原査定を取り消さなければならない
- 164条3項の前置報告は不要(1項の場合を除き、だから)
(3) 審判での審理の進め方
- 補正α=1号・審判請求前 → 159条1項準用53条1項の対象外=却下できない(50条の2通知もなし)
- 17条の2第3項違反は49条1号の拒絶理由 → 放置して特許審決はできない
- 原査定の理由は29条2項 → 査定の理由と異なる拒絶の理由
- → 159条2項準用50条:拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書提出の機会を与える
- 甲は17条の2第1項1号で補正可(50条の2通知なし → 5項の目的制限なし)
- 解消すれば159条3項準用51条で特許審決/解消しなければ請求不成立の審決
- 160条1項の差戻しは考慮不要(なお書き)
解答
ここまでの構成をそのまま文章にします。設問の指示どおり、根拠 → 要件 → 当てはめ → 結論の順で崩しません。
設問(1) 出願Bに基づく優先権主張の手続は適法か
- 優先権の基礎となる「最初の出願」
パリ条約4条C(2)は、優先期間は「最初の出願の日」から開始すると定める。もっとも同条C(4)は、4条C(2)にいう最初の出願と同一の対象について同一の同盟国においてされた後の出願は、①先の出願が公衆の閲覧に付されないで、かつ、いかなる権利をも存続させないで、後の出願の日までに取り下げられ、放棄され又は拒絶の処分を受けたこと、②その先の出願がまだ優先権の主張の基礎とされていないことを条件として、最初の出願とみなされ、その出願の日が優先期間の初日とされる旨を規定する。 - 本問への当てはめ
出願A及び出願Bは、いずれも同盟国Xにおいて、請求の範囲に発明イを記載してされた出願であるから、同一の対象について同一の同盟国においてされたものである。
出願Aは、出願の公開がされておらず、いかなる権利をも存続させない状態で、2024年4月15日に取り下げられている。これは後の出願である出願Bの日(2024年5月1日)前であるから、要件①を満たす。
また、甲は出願Bの時までに出願Aに基づく優先権の主張を伴う出願を行っていないから、出願Aはまだ優先権の主張の基礎とされていない。要件②も満たす。
よって、4条C(4)により出願Bが「最初の出願」とみなされ、優先期間の初日は2024年5月1日となる。 - 優先期間の計算
4条C(1)により特許の優先期間は12箇月、同C(2)後段により出願の日は期間に算入しない。したがって優先期間は2024年5月2日から起算し、2025年5月1日に満了する。
出願Cは2025年4月15日にされているから、優先期間内である。
(なお、4条C(4)が適用されず出願Aが最初の出願とされる場合、優先期間は2025年4月1日に満了し、出願Cは期間経過後の出願となる。結論を分けるのはこの点である。) - 主体・基礎出願の適格
甲は同盟国Xの国民であり(4条A(1))、出願Bは同盟国Xにおいてされた正規の国内出願であって優先権を生じさせる(同A(2)(3))。出願Cの特許請求の範囲に記載された発明イは、出願Bの請求の範囲に記載されていた発明であるから、優先権の対象としても問題がない。 - 手続
パリ条約4条D(1)及び特許法43条1項により、優先権を主張しようとする者は、その旨並びに「4条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願」をした同盟国の国名及び出願の年月日を記載した書面を、経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出しなければならない。本問で記載すべきは出願Aではなく出願B(同盟国X・2024年5月1日)である。さらに同条2項により、優先権証明書類等を同項各号の最先の日(本問では出願Bの日)から1年4月以内に提出する必要がある。 - 結論
以上より、出願Cに係る発明イについて出願Bに基づく優先権を主張する手続は適法である。なお、4条C(4)後段により、出願Aを優先権の主張の基礎とすることはできない。
「適法か否か」と問われているので、優先期間内か(実体)だけでなく43条の書面に何を書くか(手続)まで触れる。43条1項は条文中に「パリ条約第4条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願」と明記しているので、ここを引けると要件の当てはめが一本で通ります。
設問(2) 審査官はどのように前置審査を進めるべきか
- 前置審査に付される根拠
特許法162条により、特許庁長官は、拒絶査定不服審判の請求があった場合において、その請求と同時に明細書、特許請求の範囲又は図面について補正があったときは、審査官にその請求を審査させなければならない。本問では審判請求と同時に補正βがされているから、出願Cは前置審査に付される。 - 補正βの却下
補正βは、拒絶査定不服審判を請求する際にその請求と同時にした補正であるから17条の2第1項4号の補正である。そして補正βは当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、同条3項に違反する。
163条1項が準用する53条1項は、読替えにより「第17条の2第1項第1号、第3号又は第4号に掲げる場合」を対象とするから、4号の補正である補正βは却下の対象となる。よって審査官は、決定をもって補正βを却下しなければならない。却下の決定は文書をもって行い理由を付す(53条2項準用)。 - 164条2項の制約 ── ここが本問の核心
もっとも、164条2項は「審査官は、前項に規定する場合を除き、前条第1項において準用する第53条第1項の規定による却下の決定をしてはならない」と定める。すなわち前置審査において補正の却下決定ができるのは、164条1項の場合=特許をすべき旨の査定をするときに限られる。
本問では、審査官は原査定の理由は妥当でなく、原査定時の出願Cについて拒絶の理由を発見しないとの心証を得ている。補正βを却下すれば出願Cは原査定時の内容に戻り、これについて拒絶の理由がないのであるから、審査官は特許をすべき旨の査定をする場合に当たる。したがって本問では補正βの却下決定をすることができる(かつ、しなければならない)。 - 特許査定と原査定の取消し
163条3項が準用する51条により、審査官は、補正β却下後の出願Cについて拒絶の理由を発見しないから特許をすべき旨の査定をする。
そして164条1項により、前置審査において特許をすべき旨の査定をするときは、審判の請求に係る拒絶をすべき旨の査定(原査定)を取り消さなければならない。 - 前置報告は不要
164条3項の特許庁長官への報告(前置報告)は「第1項に規定する場合を除き」行うものであるから、本問のように特許査定をする場合には報告を要しない。審判の請求は目的を達し、審判手続は終了する。 - 結論
審査官は、①163条1項が準用する53条1項により決定をもって補正βを却下し、②163条3項が準用する51条により特許をすべき旨の査定をし、③164条1項により原査定を取り消す、という順序で前置審査を進めるべきである。
164条2項を書けるかどうかだけで差がつきます。この条文の趣旨は、審判請求時の補正を却下して出願を拒絶に導く判断は、審査官ではなく審判官合議体がすべきという点にあります。だから前置審査での却下は「却下したうえで特許にする」場面だけに絞られ、それ以外は却下せずに長官へ報告(164条3項)して審判に戻す。本問は例外的に審査官が却下できる、まさにその場面を突いています。
設問(3) 補正αについて合議体はどのように審理を進めるべきか
- 補正αは却下できない
補正αは、最初の拒絶理由通知に対する応答として審査段階でされた補正であるから17条の2第1項1号の補正であり、かつ拒絶査定不服審判の請求前にされたものである。
159条1項が準用する53条1項は、読替えにより「補正(同項第1号又は第3号に掲げる場合にあつては、拒絶査定不服審判の請求前にしたものを除く。)が」とされている。補正αはまさにこの除外に当たる。加えて、53条1項本文のカッコ書きにより1号の補正が却下対象となるのは拒絶理由通知と併せて50条の2の通知をした場合に限られるが、本問にその事実はない。
よって審判官合議体は、補正αを決定をもって却下することはできない。 - 却下できないなら、拒絶理由となる
補正αは当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく17条の2第3項に違反するから、これは49条1号の拒絶の理由に当たる。補正αを却下できないということは、補正α後の明細書を前提に審理せざるを得ない。したがって、補正βにより原査定の拒絶の理由(29条2項)が解消していても、そのまま特許をすべき旨の審決をすることはできない。 - 審判における拒絶理由通知
原査定の理由は29条2項であり、17条の2第3項違反は査定の理由と異なる拒絶の理由である。
159条2項は、拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に50条を準用する。よって合議体(審判長)は、甲に対し補正αが17条の2第3項に違反する旨の拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならない。手続保障の要請から、これを欠いて拒絶審決をすることは許されない。 - 通知後の処理
甲は、この通知に対し17条の2第1項1号により指定期間内に補正をすることができる。本問では拒絶理由通知と併せて50条の2の通知がされる場面ではないから、同条5項の目的の制限は及ばず、新規事項に当たる記載を削除する補正をすることができる(同条3項・4項の要件は満たす必要がある)。
補正により17条の2第3項違反が解消し、他に拒絶の理由がなければ、159条3項が準用する51条により特許をすべき旨の審決をする。解消しなければ、審判の請求は成り立たない旨の審決をする。 - 結論
合議体は、補正αを却下することはできないから、159条2項が準用する50条により17条の2第3項違反の拒絶理由を通知して意見書提出の機会を与え、その応答を踏まえて審決をするという形で審理を進めるべきである。
(2)と(3)は同じ「新規事項」を扱いながら、却下できる/できないで処理が正反対になります。分岐は17条の2第1項の何号の補正かと、審判請求の前か同時かだけ。試験場でこの表を作れれば、条文を思い出す作業が「表を埋める」作業に変わります。
問題文・論点の出典:特許庁「令和8年度弁理士試験論文式筆記試験(必須科目)問題及び論点」。条文は e-Gov 法令検索(特許法・昭和34年法律第121号)、パリ条約は特許庁公表の日本語訳により確認しています。
論文の答案構成を練習する過去問題集
PR
別の年度の問題でも答案構成を練習したい方には、TAC「2026年度版 弁理士試験 論文式試験過去問題集」があります。平成28年度〜令和7年度の10年分を収録し、問題文の読み方、答案構成、模範答案、解説を確認できます。
TAC「2026年度版 弁理士試験 論文式試験過去問題集」(紙)を楽天ブックスで見る
![]()
2026年度版ですが、令和8年度の試験問題は収録されていません。販売ページの情報をもとに紹介しています。価格・在庫・収録内容は購入前に販売ページでご確認ください。
