この記事にはアフィリエイト広告が含まれます。
【問題文】
【特許・実用新案】1
特許要件及び特許出願に関し、次のうち、正しいものは、どれか。ただし、特に文中に示した場合を除いて、特許出願は、外国語書面出願、国際出願に係る特許出願、特許出願の分割に係る新たな特許出願、出願の変更に係る特許出願又は実用新案登録に基づく特許出願ではなく、取下げ、放棄又は却下されておらず、査定又は審決が確定しておらず、いかなる補正もされておらず、いかなる優先権の主張も伴わないものとする。
1 発明者甲は、発明イについて記載した私信メールを、個人の第三者である乙に送信した場合、発明イは、当該私信メールの送信により、特許法第29条第1項第3号に掲げる「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明」に該当する。
2 特許出願に係る発明について新規性の喪失の例外の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面、及び、特許法第29条第1項各号のいずれかに該当するに至った発明が特許法第30条第2項の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面を、特許出願の日から30日以内に特許庁長官に提出しなければならないことが特許法に規定されている。
3 発明イが掲載された書籍αが令和5年4月1日に多数の図書館へ納本され、その翌日から公衆の自由な閲覧に供され、かつ、その複写物が公衆からの要求に即応して遅滞なく交付される態勢が整った。しかしながら、実際に書籍αが最初に閲覧されたのは、同年10月1日であった。それまで、複写もされなかった。この場合、同年9月30日までに発明イについて特許出願Aを行った場合、書籍αは特許出願Aの出願前までに閲覧されず複写もされていないから、書籍αに掲載された発明イは特許法第29条第1項第3号に掲げる「頒布された刊行物に記載された発明」に該当しない。
4 特許を受けようとする者は、特許出願人の氏名又は名称及び住所又は居所、並びに、発明者の氏名及び住所又は居所を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならないことが特許法に規定されている。
5 特許出願に係る願書が特許庁長官に提出されたが、その願書に明細書が添付されていない場合、特許出願について補完をすることができる旨の通知を受けた後でなければ、特許を受けようとする者はその補完をすることができない。
出典:特許庁・令和8年度短答式筆記試験問題集、特許・実用新案第1問。原文の改行・字間を整え、解説上のキーワードを赤字・太字にしています。強調は当ブログによるものです。
【解説】
情報確認日:2026年9月12日。各肢について、根拠と判断の理由を順番に確認します。
根拠条文は特許法。出題時点については2025年6月1日施行版も照合しています。本問の判断に使用する29条・30条・36条・38条の2は、確認時点の施行条文と一致しています。
肢1:メールを送れば、電気通信回線による公開になるのか
判定は誤りです。 メールが電気通信回線を利用していることと、その内容が公衆に利用可能になったことは、別の条件です。
29条1項3号では、通信手段だけでなく、情報を公衆が利用できる状態かが問題になります。青本第22版の29条「字句の解釈」5は、個人間の私信メールを、公衆に利用可能となったものに含めていません。宛先の乙が発明者以外の第三者であっても、それだけで私信が公衆向けの情報になるわけではありません。青本第22版・印刷87頁(全体PDF159ページ)
ここで「メールなら新規性を失わない」と覚えるのは危険です。秘密保持義務のない人に発明が知られた場合などには、29条1項1号の「公然知られた発明」に当たるかを別に検討します。本肢が述べているのは、あくまで3号の電気通信回線による公衆利用可能性です。別の号の問題まで一括して否定してはいけません。
覚える点:通信回線を使ったかと、公衆に開かれたかを分ける。
肢2:「その旨の書面」と「証明書」は同じ期限なのか
判定は誤りです。 30条3項は、30条2項の適用を受ける場合の二つの書面を区別しています。
| 書面 | 役割 | 30条3項の提出時期 |
|---|---|---|
| 適用を受ける旨を記載した書面 | 例外の適用を求める意思を示す | 特許出願と同時 |
| 適用を受けられる発明であることを証明する書面 | 公開の事実などを証明する | 特許出願の日から30日以内 |
本肢は、最初の書面まで「出願後30日以内でよい」としている点が違います。出願時に意思を示す手続と、その根拠を後から証明する手続を、一つの期限にまとめないようにしましょう。特許法30条3項、青本第22版・印刷95頁(全体PDF167ページ)
なお、30条4項には、本人の責めに帰することができない理由で証明書を期限内に提出できない場合の救済があります。したがって、証明書について「例外なく30日を過ぎたら不可能」とも覚えないでください。本肢を誤りと判断する直接の理由は、二つの書面の通常の提出時期を取り違えていることです。
また、30条3項は「前項」、つまり2項の適用を受けるための手続です。1項の意に反する公開まで、同じ書面提出義務が当然にあると広げないようにします。
覚える点:意思表示は出願時、証明は原則30日以内。
肢3:図書館で誰も読んでいなければ、新規性は残るのか
判定は誤りです。 刊行物が頒布されたといえるために、誰かが実際に読んだり複写したりする必要はありません。
青本の29条「字句の解釈」4と、審査基準第III部第2章第3節3.1.1は、刊行物が不特定の者の閲覧可能な状態に置かれたかを判断の基準としています。青本第22版・印刷87頁、特許・実用新案審査基準・第III部第2章
本問の時間関係を整理すると、次のようになります。
| 日付 | 事実 | 判断上の意味 |
|---|---|---|
| 4月1日 | 図書館に納本 | 納本だけで直ちに閲覧可能になったとは限らない |
| 4月2日 | 公衆が自由に閲覧でき、複写要求にも応じられる | 本問では、この時点で頒布の条件を満たす |
| 10月1日 | 初めて実際に閲覧された | 頒布の成立をこの日まで待つ必要はない |
したがって、例えば9月に出願しても、書籍は既に出願前の頒布刊行物です。「9月30日まで」という表現には4月2日より前も含まれますが、だからこそ、その期間内の出願ならすべて非該当になるという本肢の説明は成り立ちません。出願の具体的な時点と、閲覧可能になった時点を比較します。
この考え方は、インターネット情報の公衆利用可能性でも共通します。審査基準の同節3.1.2では、実際にアクセスされた事実までは必要としていません。ただし、図書館に届いただけの状態や、公開されていないデータまで、当然に公衆利用可能だと扱うわけではありません。
覚える点:「読まれた日」より「読める状態になった時点」。
肢4:願書に書く人の情報は、法律に規定されているのか
判定は正しいです。 36条1項の二つの号と一致します。出願人は「氏名又は名称」、発明者は「氏名」という違いも、そのまま確認しましょう。特許法36条1項
願書の様式に関係する内容なので、施行規則にしか書かれていないのではないか、と迷うかもしれません。しかし、この基本的な記載事項は法律そのものにあります。青本の36条「趣旨」も、旧法では施行規則に置かれていた事項を、法律で規定すべき性質のものとして規定した経緯を説明しています。青本第22版・印刷124、126頁(全体PDF196、198ページ)
なお、この二つの号を満たすだけで、出願に必要なものがすべてそろうわけではありません。36条2項には、明細書・特許請求の範囲・必要な図面・要約書という添付書類が別に規定されています。本肢は、願書の記載事項について正しい説明をしているのであり、添付書類が不要と言っているのではありません。
覚える点:願書の記載事項は36条1項、添付書類は同条2項。
肢5:明細書の付け忘れは、通知が来るまで直せないのか
判定は誤りです。 38条の2は、通知を受けてから行う補完だけでなく、通知前に自ら行う補完も規定しています。
同条2項は補完できる旨の通知、3項は通知を受けた後の補完を規定します。しかし、ここで条文を読むのを止めてはいけません。9項は、省令で定める場合を除き、通知前に必要な手続をした場合も、通知を受けてした手続として扱うと定めています。特許法38条の2第2・3・9項
青本の同条「趣旨」の9項の説明でも、通知前に出願人が自発的にする補完手続を設けたことを確認できます。「通知がなければ一切できない」という本肢の断定は、9項を見落としています。青本第22版・印刷149頁(全体PDF221ページ)
ここで扱うのは、明細書が付いていない出願の「補完」です。既に提出した明細書の内容を直す「補正」とは、根拠と手続を分けて理解しましょう。また、補完ができても、最初に願書を提出した日を必ず確保できるわけではありません。同条6項は、所定の補完をした場合、手続補完書の提出時を出願の時とし、その日を出願日として認定する効果を定めています。
なお、38条の2第1項3号には、38条の3の先の出願を参照する方式を除くという規定もあります。「明細書がない」と見たら、どの手続の話かを確かめる習慣を付けておきましょう。本肢を判断する決め手は9項の存在です。
覚える点:通知後の規定だけで判断せず、通知前を扱う9項まで読む。
復習するときの5つの問い
- 個人間の私信メールは、29条1項3号の公衆利用可能性を満たすか。他の号とは区別できるか。
- 新規性喪失の例外について、意思表示の書面と証明書の期限を別々に言えるか。
- 図書館の納本日・閲覧可能日・実際の閲覧日を区別できるか。
- 願書の記載事項と添付書類の根拠条文を分けて言えるか。
- 通知前の補完を認める条項と、補完した場合の出願日への影響を説明できるか。
本問は、条文の言葉を少し入れ替えた肢と、制度の意味を問う肢が混在しています。解き終えた後も、残りの肢のどこが違うかを言葉にすると、同じ論点が別の表現で出たときの確認に使えます。
【解答】
正解:4
| 肢 | 判定 | 決め手 |
|---|---|---|
| 1 | 誤り | 個人間の私信メールの送信は、それだけで29条1項3号の公衆利用可能性を満たさない |
| 2 | 誤り | 適用を受ける旨の書面は出願と同時、証明書は原則として出願日から30日以内 |
| 3 | 誤り | 実際に閲覧されていなくても、不特定の者が閲覧できる状態なら頒布に当たり得る |
| 4 | 正しい | 願書の記載事項は36条1項1号・2号に規定されている |
| 5 | 誤り | 38条の2第9項は、通知前の自発的な補完を認めている |
特許庁の公式正答と一致します。
短答の演習に使う過去問題集
PR 以下は楽天ブックスの広告リンクです。
紙の過去問題集で演習したい方は、収録範囲や版を確認して選んでください。
TAC 2026年度版 弁理士試験 体系別短答式 枝別過去問題集(紙)を楽天ブックスで見る
![]()
LEC 2026年版 弁理士試験 体系別短答過去問 特許法・実用新案法・意匠法・商標法(紙)を楽天ブックスで見る
![]()
紹介しているのは2026年版です。購入時は販売ページで版・収録内容・価格をご確認ください。
