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【問題文】
【特許・実用新案】2
特許無効審判に関し、次のうち、誤っているものは、いくつあるか。
(イ) 特許無効審判の請求が取り下げられた後において、当該特許無効審判の参加人が審判手続を続行することができる場合はない。
(ロ) 特許無効審判において、審判長は、審決の予告をし、被請求人が訂正の請求をした。その後、事件が審決をするのに熟した場合であって、審決の予告をしないときは、審判長は、当事者及び参加人に審理の終結を通知する。
(ハ) 特許庁長官は、審決があったときは、審決の謄本を当事者、参加人及び審判に参加を申請してその申請を拒否された者に送達しなければならない。
(ニ) 特許無効審判は、請求の認諾によっても終了する。
(ホ) 特許無効審判は、特許権について不実施の場合の通常実施権の設定の裁定(特許法第83 条第2項の裁定)による通常実施権に基づいて当該特許権に係る特許発明を実施する者も、請求することができる。
1 1つ 2 2つ 3 3つ 4 4つ 5 5つ
出典:特許庁「令和8年度弁理士試験 短答式筆記試験問題」PDF3ページ・特許/実用新案第2問。問題文は改行・字間を整えています。赤字・太字の強調は当ブログによるものです。
【解説】
情報確認日:2026年9月13日。
今回は、特許を無効にするかどうかを特許庁で審理する「特許無効審判」の手続がテーマです。請求する側を「請求人」、請求を受ける特許権者側を「被請求人」といいます。「審決」は、審判についての判断を示すものです。
設問は「誤っているもの」の個数を問うています。各肢の正誤を判断してから、最後に誤りの数を数えましょう。
試験時点を確認するための2025年6月1日施行版と、確認日に表示された2026年6月24日施行版を照合し、今回の判断に用いる条文の内容に差がないことを確認しました。青本は第22版を用い、現行条文と区別して参照しています。
肢イ:請求が取り下げられたら、参加人も必ず続行できなくなる?
この肢は誤りです。 判断の鍵は、「参加人」の種類を区別せず、続行できる場合をすべて否定している点です。
特許法148条には、大きく分けて二つの参加があります。
| 参加の種類 | 参加する立場 | 元の請求人が取り下げた後 |
|---|---|---|
| 148条1項の参加(当事者参加) | 自ら審判を請求できる者が、請求人として加わる | 148条2項により続行できる |
| 148条3項の参加(補助参加) | 審判の結果に利害関係のある者が、当事者の一方を補助する | 請求人側への補助参加であっても、これだけを根拠として続行はできない |
148条2項は、同条1項の参加人について、被参加人が請求を取り下げた後も審判手続を続行できると定めています。「被参加人」は、この場面では、参加人が加わった先の請求人です。
例えば、Aが特許無効審判を請求し、自らも請求人となれるBが148条1項により参加した場合を考えます。Aが請求を取り下げても、Bは請求人として手続を続けられます。Bは単なる応援役ではなく、自分でも無効審判を請求できる立場だからです。この具体例は制度理解のための架空例です。
青本第22版の148条解説も、1項の参加は参加によって自己の請求に代えるものであり、共同審判請求人と同様の立場にあると説明しています。元の請求人の取下げだけで、参加人自身が判断を求める機会まで失わせる必要はありません。
一方、3項の補助参加人に「一切の審判手続」を認める4項を見て、取下げ後も当然に続行できると読んではいけません。取下げ後の続行を明示する2項は、1項の参加人を対象としています。 本肢は、続行できる1項参加人が存在するため誤りです。
根拠:特許法148条1~4項、青本第22版・印刷522ページ(PDF594ページ)、審判便覧57-05「参加の効力」2ページ。
肢ロ:審決の予告後に訂正請求をしても、後で審理終結が通知される?
この肢は正しいです。 「訂正の請求をした」という過去の経過だけで判断せず、その後、審決をするのに熟し、審決の予告をしないという現在の状態を読み取ります。
「審決をするのに熟した」とは、必要な事実や証拠を検討し、結論を出せる状態に達したことです。「審決の予告」は審決そのものではなく、一定の場合に判断をあらかじめ示し、特許権者に訂正の機会を与える手続です。164条の2第2項による指定期間内には、134条の2第1項に基づく訂正請求ができます。
特許法156条2項は、特許無効審判で終結通知をする場面を、次の二つに分けています。
- 事件が審決をするのに熟し、審決の予告をしないとき。
- 審決の予告をしたが、指定期間内に被請求人が所定の訂正請求・補正をしないとき。
本肢の流れは、次のとおりです。
審決の予告 → 訂正の請求 → その後の審理 → 結論を出せる状態になる → 今回は審決の予告をしない → 審理の終結を通知する。
したがって、本肢は1の場面に該当します。 訂正請求をしたので2の場面には該当しない、というだけで終結通知を否定するのが、この問題の落とし穴です。「又は」で結ばれた二つの場面は、それぞれ独立して確認します。
審理終結の通知は、間もなく審決がされることを当事者・参加人に知らせるためのものです。以前に予告があり、訂正請求をしたことによって、その後の終結通知が不要になるわけではありません。なお、終結通知後でも必要があれば審理を再開できます(156条3項)。終結通知と、審決による審判の終了も区別しましょう。
根拠:特許法156条2・3項、164条の2、134条の2第1項、青本第22版・印刷541ページ(PDF613ページ)、審判便覧42-00「審理の終結及び再開」1.(1)・1ページ。
肢ハ:参加を拒否された者にも審決の謄本が送達される?
この肢は正しいです。 特許法157条3項が定める送達先に、そのまま該当します。
特許庁長官が審決の謄本を送達しなければならない相手は、①当事者、②参加人、③審判への参加を申請してその申請を拒否された者です。謄本とは原本の内容を写した文書をいい、「送達」は法令に従って正式に届ける手続です。
「参加できなかったのだから、審決を知らせる必要はない」と考えると誤ります。特許法178条2項は、参加を申請して拒否された者にも、審決に対する訴えを提起する資格を認めています。参加を認められたかどうかと、審決に対して争う機会があるかどうかは別です。
青本の157条解説も、この訴えを提起する機会との関係から、参加を拒否された者にも送達すると説明しています。誰でも送達を求められるという意味ではなく、単に審判に関心がある第三者は、この列挙には含まれません。
手続の主体にも注意しましょう。肢ロの終結通知は「審判長」、本肢の審決謄本の送達は「特許庁長官」です。似た手続でも、条文の主語を入れ替えないことが大切です。
根拠:特許法157条3項、同178条2項、青本第22版・印刷542~543ページ(PDF614~615ページ)。
肢ニ:特許権者が「無効でよい」と認めれば、認諾で終了する?
この肢は誤りです。 特許無効審判には、請求の認諾によって手続を終了させる仕組みはありません。
「請求の認諾」は、請求を受ける側が、相手の請求を認めることです。しかし、特許が有効か無効かは、請求人と特許権者の二人だけの問題ではありません。特許権は第三者にも影響するため、その有効性を当事者の合意や一方の意思表示だけで決着させることはできません。
このため、無効審判では、当事者の主張だけに拘束されず、審判官が必要な審理をする職権主義が採られています。特許法153条1項が、当事者・参加人の申し立てない理由についても審理できるとすることも、その表れです。青本第22版の157条解説は、職権による審理が行われる特許審判では、認諾などによる終了はないと説明しています。
したがって、被請求人が請求人の主張を認めたとしても、認諾だけで審判が終わるわけではありません。 157条1項による審決が、通常の終了の形です。
ここで「取下げ」と混同しないようにしましょう。特許法155条は、請求人による審判請求の取下げを認めています。認諾は被請求人が相手の請求を認めること、取下げは請求人が自分の請求を撤回することで、手続も効果も別です。なお、答弁書提出後の取下げには相手方の承諾が必要であり(155条2項)、肢イの当事者参加人が続行する場合にも注意が必要です。
また、職権主義といっても、請求人が申し立てていない「請求の趣旨」まで審理できるわけではありません(153条3項)。申し立てていない「理由」と、申し立てていない「請求の趣旨」を分けて理解してください。
根拠:特許法153条・155条・157条1項、青本第22版・印刷543ページ(PDF615ページ)、審判便覧36-01「職権主義と職権調査事例」1.・1~2ページ。
肢ホ:裁定による通常実施権で実施している者も、無効審判を請求できる?
この肢は正しいです。 通常実施権を持っていることを理由に、無効審判の請求人から排除されるわけではありません。
特許法123条2項は、特許無効審判を請求できる者を、原則として「利害関係人」に限っています。利害関係人とは、その特許の有効・無効について、法律上の利益に関わる立場にある者です。審判便覧31-02の(5)は、その具体例に専用実施権者・通常実施権者等を挙げています。
本肢の者は、83条2項の裁定により設定された通常実施権に基づき、現に特許発明を実施しています。裁定は、一定の不実施の状況で協議が成立しない場合などに、特許庁長官の判断によって通常実施権を設定する制度です。
ここで、「実施できる権利があるのだから、特許を無効にする利益はない」と考える必要はありません。実施権に基づいて実施する立場も、特許権の有効性と直接関係します。通常実施権を持つことと、その特許の有効性を争う資格があることは両立します。 その通常実施権が、契約による許諾ではなく裁定によるものであっても、本肢の結論は変わりません。
ただし、請求できる「人」の問題と、主張できる「無効理由」の問題は分けます。共同出願違反(38条違反)や冒認を理由に請求する場合には、123条2項の括弧書きにより、特許を受ける権利を有する者であることが必要です。通常実施権者というだけで、あらゆる無効理由を主張できるという意味ではありません。
また、「不実施だったから特許が無効になる」という問題でもありません。83条は裁定による通常実施権についての規定であり、無効審判の理由は123条1項の各号で確認します。本肢は、裁定による通常実施権者の請求人としての資格を問うています。
根拠:特許法123条1・2項、同83条、審判便覧31-02「利害関係人の具体例」(5)・2ページ。
復習するときの着眼点
条文を開いて、次の違いを自分の言葉で説明してみてください。
- 148条:請求人として加わる参加と、当事者を補助する参加の違い。
- 156条2項:終結通知をする二つの場面をつなぐ「又は」。
- 157条3項:審決謄本の送達先と、178条2項の訴えを提起できる者との対応。
- 155条・157条:取下げと認諾の違い。
- 123条2項:利害関係人という原則と、共同出願違反・冒認に関する例外。
今回は審判手続が論点のため、条文・青本・審判便覧を主な根拠としました。新規性や進歩性などの実体審査を扱う審査基準を、手続の直接の根拠として引用してはいません。
本記事は公開資料に基づく試験学習用の解説です。AIを調査・執筆の補助に利用しています。
【解答】
正解は「2」(誤っているものは2つ)です。
| 肢 | 正誤 | 決め手 |
|---|---|---|
| イ | 誤り | 148条1項の参加人は、被参加人の取下げ後も続行できる |
| ロ | 正しい | 訂正後に熟し、予告をしない場合は156条2項前段に該当する |
| ハ | 正しい | 参加申請を拒否された者も157条3項の送達先に含まれる |
| ニ | 誤り | 特許無効審判は請求の認諾では終了しない |
| ホ | 正しい | 本肢の通常実施権者も利害関係人として請求できる |
誤りはイ・ニの2つです。特許庁の公式正答表の「特許・実用新案 第2問」と一致します。
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