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【問題文】
【特許・実用新案】11
特許出願についての拒絶査定不服審判又は特許法第162条に規定する審査(いわゆる前置審査)に関し、次のうち、正しいものは、どれか。
1拒絶査定に対する審判の結果について利害関係を有する者であれば、拒絶査定不服審判を請求することができる。
2前置審査において、審査官が審査の結果を特許庁長官に報告する場合、その審査の結果を請求人に通知しなければならない。
3前置審査において、審査官は、拒絶をすべき旨の査定の理由とは異なる拒絶の理由を発見したので、請求人に対して特許法第17条の2第1項第3号に規定する「最後に受けた拒絶理由通知」をした。しかし、当該通知に対して請求人がした補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件(いわゆる新規事項の追加の禁止)を満たしていなかった。この場合、審査官は、決定をもって当該補正を却下した上で、審査の結果を特許庁長官に報告しなければならない。
4拒絶査定不服審判の請求と同時にその請求に係る特許出願の願書に添付した明細書に記載された発明の名称についてのみ補正がなされた。この場合であっても、特許庁長官は審査官にその請求を審査させなければならない。
5拒絶査定不服審判において、審判長は審尋することができるが、そのときは口頭審理によりしなければならない。
出典:特許庁「令和8年度弁理士試験短答式筆記試験問題」特許・実用新案第11問、PDF14頁。公式問題PDF。原文は改行・字間を整理して掲載し、赤字の強調は編集上追加しています。
【解説】
前置審査は、審判請求に伴って補正された出願を、審判官の審理に先立って審査官がもう一度審査する手続です。「審査官が特許にできる場合」と「特許にできず審判へ引き継ぐ場合」で、できる処分が違います。
以下は2026年5月17日の試験時点を基準に解説します。9月29日現在の条文も照合し、本問の結論に関係する規定が変わっていないことを確認しています。145条は試験後に期日の呼出し等の規定が変わっていますが、ここで使う2項は同じです。図表は当サイトによる学習用の整理で、各肢に関係する部分を示しています。
1 利害関係があれば請求できるか
根拠:特許法121条1項。
この肢は、拒絶査定不服審判を請求できる人の範囲を問うものです。121条1項が定めるのは、拒絶査定を受け、その査定に不服がある者です。「審判の結果に利害関係がある人」全体へ請求人の範囲を広げる規定ではありません。
拒絶査定不服審判は、出願人が自分の出願にされた拒絶査定を争うための手続です。たとえば、その発明が特許になるかどうかに経済的な関心を持つ第三者でも、その利害関係だけを根拠に、この審判を請求することはできません。
〔表1〕請求できる人を決める条件
| 人・事情 | この肢での判断 |
|---|---|
| 拒絶査定を受け、その査定に不服がある者 | 121条1項の請求人に当たる |
| 結果に利害関係があるだけの第三者 | その事情だけでは請求できない |
基準:試験時点の121条1項。請求期間や承継手続など、本肢の判断に直接関係しない事項は省略しています。
「利害関係人」という言葉から、特許無効審判の請求人を連想しやすいところです。しかし、拒絶査定を争う手続と、成立した特許の無効を求める手続では、請求できる人を定める条文が異なります。「利害関係を有する者であれば」という範囲の広げ方が誤りです。
2 前置報告をするとき、審査官から請求人への通知は必要か
根拠:特許法164条3項。
審査官が前置審査を終えても特許査定をしない場合は、その審査の結果を特許庁長官に報告します。これが前置報告です。条文が報告先として定めているのは特許庁長官であり、審査官に対して、同じ結果を請求人へ通知する義務までは課していません。
前置報告は、審判官がその後の審理を進める際の参考になるものです。審査官が新たに拒絶査定をするわけでもありません。再び拒絶査定をして再度の審判請求を求めると、請求人に余分な負担をかけるためです。
〔表2〕前置報告と拒絶理由通知の違い
| 手続 | 相手・役割 |
|---|---|
| 前置報告(164条3項) | 審査官から特許庁長官へ、審査結果を報告する |
| 拒絶理由通知(163条2項で準用する50条) | 査定の理由と異なる拒絶理由を発見した場合に、条文の条件に従って請求人に意見を述べる機会を与える |
基準:試験時点の163条2項・164条3項。前置報告の義務と、拒絶理由を通知する手続を区別した表です。
なお、審判便覧37-02の1.(3)は、報告書をもとに請求人の見解を求める必要があるとき、合議体が報告書を利用して審尋できるとしています。これも、審査官が前置報告のたびに結果を通知する義務とは別です。
審査結果の「報告」と拒絶理由の「通知」は、相手も役割も異なります。前置審査で請求人への通知が一切ないという意味ではありません。前置報告をするから必ず請求人にもその結果を通知する、という本肢は誤りです。
3 新規事項を追加した補正を却下してから前置報告するか
根拠:特許法163条1項で準用する53条1項、164条1〜3項。
本肢では、前置審査中の最後の拒絶理由通知に対する補正が、新規事項の追加を禁じる17条の2第3項に違反しています。通常の審査の補正却下だけを思い浮かべると、「不適法な補正だから却下」と考えたくなります。
しかし、前置審査には164条2項の制限があります。審査官が補正却下の決定をできるのは、164条1項の特許査定をする場合に限られます。特許査定をせず、審査結果を長官へ報告する場合には、補正却下の決定をしてはなりません。
〔表3〕前置審査の終わり方と補正却下
| 前置審査の結末 | 審査官の処理 |
|---|---|
| 特許査定をする | 原拒絶査定を取り消す。補正が却下要件に当たる場合は、補正却下をしたうえで特許査定することがある |
| 特許査定をしない | 補正却下の決定も新たな査定もしないで、長官に審査結果を報告する |
基準:試験時点の164条1〜3項。上段は「補正却下が必要な補正がある場合」を含む整理で、特許査定のたびに補正を却下するという意味ではありません。
ここで補正却下をしないのは、違反補正が適法になるからではありません。補正の適否も含めた判断を、後の審判の審理へ引き継ぐためです。本肢の決め手は「却下した上で、……報告」という組合せです。前置報告の際には補正却下の決定をしてはならないため、誤りです。
4 発明の名称だけの補正でも前置審査になるか
根拠:特許法162条、36条3項1号。
162条は、拒絶査定不服審判の請求と同時に、願書に添付した明細書・特許請求の範囲・図面について補正があった場合、審査官に審査させなければならないと定めています。請求項が変わったことや、発明の技術的内容が実質的に変わったことだけを条件にはしていません。
発明の名称は、36条3項1号に定める明細書の記載事項です。名称だけを直した場合でも、明細書について補正があったことになります。本肢では、その補正が審判請求と同時に行われているので、162条の条件を満たします。
〔表4〕名称だけの補正を162条に当てはめる
| 確認する条件 | 本肢の事実 |
|---|---|
| 拒絶査定不服審判を請求したか | 請求している |
| その請求と同時の補正か | 同時にしている |
| 明細書・請求の範囲・図面の補正か | 明細書中の発明の名称を補正している |
| 長官の処理 | 審査官に前置審査をさせなければならない |
基準:試験時点の162条・36条3項1号。補正の適法性の個別要件は別問題として省略しています。
前置審査には、出願内容を知っている審査官に再審査させ、処理を迅速にする趣旨があります。ただし、その趣旨から「技術的に大きな変更があった場合だけ」と条文にない条件を加えてはいけません。発明の名称だけでも明細書の補正に当たり、本肢は正しいと判断できます。
5 審尋は必ず口頭審理で行うか
根拠:特許法134条4項、145条2項。
審尋とは、審判長が審理に必要な事項について当事者や参加人に問い、説明を求める手続です。134条4項は審尋できることを定めていますが、その方法を口頭だけに限定していません。青本第22版の134条の解説も、口頭による場合と文書による場合の両方を含むと説明しています。
また、拒絶査定不服審判の審理方式は、145条2項により原則として書面審理です。当事者の申立て又は職権により、審判長が口頭審理とすることもできます。審尋を行うことと、審理方式を口頭審理へ変えることは別です。
〔表5〕審尋と審理方式を分けて考える
| 着目する事項 | 取扱い |
|---|---|
| 審尋の方法 | 口頭による方法も、文書による方法もある |
| 拒絶査定不服審判の原則 | 書面審理 |
| 口頭審理とする場合 | 当事者の申立て又は職権により審判長が決める |
基準:試験時点の134条4項・145条2項、青本第22版495頁。審尋の方法と審理方式の関係を整理した表です。
「審尋」という言葉に、必ず相手を呼んで口頭で質問するイメージを重ねないことが大切です。文書による審尋もできるため、「口頭審理によりしなければならない」は誤りです。
参照した一次資料
- 特許法(e-Gov法令検索):17条の2第3項、36条3項1号、53条1項、121条1項、134条4項、145条2項、162〜164条。試験時点の保存条文と2026年9月29日取得条文を照合。
-
特許庁「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説 第22版」:特許法447〜448頁(121条)、494〜495頁(134条)、550〜555頁(162〜164条)。保存済みPDF由来の該当箇所を確認し、趣旨を要約しています。第22版を現行法そのものとして扱っていません。
-
特許庁「審判便覧」:保存第20版37-02「審尋」1.(3)・2、PDF367〜368頁(改訂R5.12、訂正R7.11)。前置報告書を利用した審尋と、口頭・文書の両方式を確認。
【解答】
正答は4です。 特許庁の公式正答の保存画像で照合しています。
〔表6〕正誤と決め手(○=正しい、×=誤り)
| 選択肢 | 正誤 | 決め手 |
|---|---|---|
| 1 | × | 利害関係だけでは拒絶査定不服審判を請求できない |
| 2 | × | 前置報告の相手は長官。審査官による請求人への結果通知義務はない |
| 3 | × | 前置報告をする場合、補正却下の決定をしてはならない |
| 4 | ○ | 発明の名称のみでも明細書の同時補正に当たり、前置審査となる |
| 5 | × | 審尋は文書によっても行える |
基準:2026年5月17日の試験時点。2026年9月29日確認。
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