この記事にはアフィリエイト広告が含まれます。
【問題文】
【特許・実用新案】5
実用新案登録出願及び実用新案登録に関し、次の(イ)~(ホ)のうち、正しいものは、いくつあるか。
(イ) 実用新案登録出願の願書に添付した明細書、実用新案登録の請求の範囲、又は図面の記載が著しく不明確であるとして、特許庁長官から補正すべきことを命ぜられたが、指定した期間内に補正をしなかったため、出願が却下された。この場合、出願人は出願の却下を不服として審判を請求できる。
(ロ) 甲と乙とからそれぞれ、同日に同一の発明について特許出願があり、それらの特許出願日よりも後の日に、丙による実用新案登録出願があり、その実用新案登録出願に係る考案は当該発明と同一であった。甲と乙が協議をすることができず、甲と乙の特許出願について拒絶をすべき旨の査定が確定した。この場合、丙は当該実用新案登録出願に係る考案について実用新案登録を受けることができない。
(ハ) 甲は、特許出願Aをし、その特許出願Aについて拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達を受けたが、その送達の日から3月が経過する前に特許出願Aを実用新案登録出願Bに変更した。この場合、甲は、実用新案登録出願Bに係る考案に関し、実用新案技術評価を請求することができる。
(ニ) 実用新案登録についての無効審判が特許庁に係属している場合において、その実用新案登録に係る実用新案権者は、実用新案法第39条第1項の答弁書を提出する期間を経過した後であっても、請求項の削除を目的とした訂正をすることができる場合がある。
(ホ) 実用新案登録出願Aを特許出願Bに変更した。その後、特許出願Bの一部を分割して新たな特許出願Cとした。特許出願Cは特許庁に係属しており、拒絶すべき旨の査定がされていない。この場合、実用新案登録出願Aの出願の日から4年を経過したときに、特許出願Cを実用新案登録出願に変更することができる。
1 1つ
2 2つ
3 3つ
4 4つ
5 5つ
出典:特許庁「令和8年度弁理士試験 短答式筆記試験問題」PDF7頁。問題文は改行・字間を整えています。赤字は判断の手掛かりとして編集部が追加しました。
【解説】
(イ)長官の却下と、審査官の拒絶査定を分ける
この肢は誤りです。問題文の処分は、特許庁長官による出願の却下です。拒絶査定不服審判で争う処分ではありません。
実用新案法6条の2第4号は、明細書・実用新案登録請求の範囲・図面の記載が著しく不明確である場合などに、特許庁長官が補正を命じることができると定めています。その指定期間内に補正しなければ、同法2条の3により手続を却下することができます。本肢はこの流れに当たります。
実用新案は、新規性や進歩性などの実体的要件を審査してから登録する制度ではありません。ただし、出願書類の体裁も整っていないものまで登録するわけではなく、登録に必要な基礎的要件は確認します。その不備を直すための手続が、長官による補正命令です。
青本は、この基礎的要件の不備について、審査官の拒絶理由通知ではなく、長官の補正命令を用いる理由を説明しています。方式審査に準じる性格があり、方式の不備と基礎的要件の不備で手続が分かれる複雑さを避けるためです。
却下に不服を申し立てる道がない、という意味ではありません。行政不服審査法による審査請求や、行政事件訴訟法による取消訴訟の対象になります。「審判」と「審査請求」は別の手続として押さえます。
根拠:実用新案法6条の2第4号・2条の3。青本第22版・印刷951~952頁、964~965頁(PDF1023~1024頁、1036~1037頁)。
(ロ)協議ができずに拒絶された先願は、後願を排除する
この肢は正しいです。甲・乙の拒絶査定が確定しても、本問ではその特許出願の先願の地位が残ります。
実用新案法7条3項によると、特許出願の発明と実用新案登録出願の考案が同一で、出願日が異なる場合、実用新案の出願人が登録を受けられるのは、特許出願人より先に出願した場合です。丙は甲・乙より後に出願しているため、この条件を満たしません。
ここで気になるのが、甲・乙の特許出願はどちらも拒絶が確定している点です。同条5項本文では、拒絶査定・審決が確定した特許出願を、3項の適用上、初めからなかったものとみなします。しかし、同日・同一発明の出願について、協議が成立せず、又は協議できないために拒絶が確定した場合は例外です。同条5項ただし書が、特許法39条2項後段による拒絶を除外しています。
本肢は、その例外にちょうど当たります。甲・乙の特許出願が初めからなかった扱いにはならないため、後願である丙は登録を受けることができません。
青本は、協議不成立でどちらも権利を得られなかった後に、第三者や同じ出願人が改めて実用新案登録出願をして権利を得ることを防ぐ趣旨を説明しています。「拒絶確定」の一語だけで先願が消えると判断せず、何を理由に拒絶されたのかまで読みます。
なお、実用新案は無審査登録制度なので、この先願違反が登録前に実体審査されるという意味ではありません。登録された場合には無効理由となる問題です。
根拠:実用新案法7条3項・5項ただし書・37条1項2号、特許法39条2項後段。青本第22版・印刷966~968頁(PDF1038~1040頁)。
(ハ)特許から変更した出願でも、技術評価を請求できる
この肢は正しいです。実用新案法12条1項は、実用新案登録出願又は実用新案登録について、何人も技術評価を請求できると定めています。出願人である甲も請求できますし、登録を待つ必要もありません。
元の特許出願Aについて拒絶査定が出ていたことは、変更後の実用新案登録出願Bについて技術評価を請求できなくなる理由ではありません。技術評価は権利の有効性を判断するための資料を提供する制度であり、請求を認めることと、肯定的な評価が得られることは別です。
混同しやすいのは、実用新案法12条3項です。同項は、実用新案登録に基づく特許出願をした後、その基礎となった実用新案登録について技術評価を請求することを制限しています。本肢は、特許出願Aから実用新案登録出願Bへ変更した話であり、方向も制度も異なります。
また、特許から実用新案への変更期限には、実用新案法10条1項による「最初の拒絶査定の謄本送達から3月」と「出願の日から9年6月」という二つの制限があります。本肢は既にBへ変更したことを前提として、その後の評価請求の可否を問うものです。「3月以内なら、出願から何年たっていても変更できる」と覚えないようにします。
根拠:実用新案法10条1項・12条1項及び3項。青本第22版・印刷975頁、978頁、983~985頁(PDF1047頁、1050頁、1055~1057頁)。
(ニ)請求項の削除は、最初の答弁期間が過ぎてもできる場合がある
この肢は正しいです。実用新案の訂正は、14条の2第1項の訂正と、7項の請求項削除の訂正を分けて考えます。
1項による減縮・誤記訂正などは、全期間を通じて1回限りで、時期も制限されています。最初の技術評価書の謄本送達から2月、又は無効審判で最初に指定された答弁期間の、いずれか早い方を経過した後は、原則としてできません。
これに対し、7項は、1項の訂正とは別に、請求項の削除を目的とする訂正を認めています。最初の答弁期間が終わったこと自体は、7項の訂正を妨げません。 例えば、答弁期間は経過していても、まだ審理終結の通知を受けていない段階なら、削除の訂正が可能です。
ただし、無効審判が係属している間に審理終結の通知を受けた後はできません。審理が再開された場合には、その後に再び審理終結の通知があるまで可能になります。権利が無効にされた後にもできません。
青本は、請求項の削除は第三者の負担を軽減するため、回数制限なく原則いつでも認める一方、審理終結通知後の制限は審判を迅速に処理するためと説明しています。「訂正は答弁期間まで」と一括して覚えると、この違いを見落とします。
根拠:実用新案法14条の2第1項・7項・8項、41条で準用する特許法156条1項・3項。青本第22版・印刷991~996頁(PDF1063~1068頁)。
(ホ)出願変更と、登録に基づく特許出願を区別する
この肢は正しいです。Aから4年が経過していても、Cから実用新案登録出願への変更が可能です。
まず、出願日の関係を追います。AをBへ変更した場合、特許法46条6項で準用する44条2項により、Bの出願日は原則としてAの出願日に遡ります。さらにBから分割したCも、44条2項によりBの出願日に遡ります。本肢の変更期間を判断する際は、Aの出願日を基準にします。
次に、今から行う変更の方向を確認します。Cは特許出願であり、これを実用新案登録出願に変更するので、適用するのは実用新案法10条1項です。出願から9年6月を経過する前で、Cには拒絶査定も出ていません。Aから4年という本肢の時点は、変更期間内です。
特許法46条1項の「3年」は、実用新案登録出願から特許出願へ変更する際の制限です。最初のAからBへの変更では問題になりますが、今から行うCから実用新案への変更に、そのまま当てはめることはできません。
もう一つのひっかけは、実用新案法10条1項の括弧書きです。実用新案登録に基づく特許出願と、それを分割した特許出願などは、実用新案登録出願に変更できません。しかし、本肢のAは「実用新案登録出願」です。登録済みの実用新案に基づいて特許出願をしたのではなく、係属する出願の種類を変更しています。この禁止には当たりません。
青本は、登録に基づく特許出願から再び実用新案に戻すことを許すと、登録を維持していた場合にはできない補正・分割ができてしまう点などを、禁止の理由として挙げています。「出願を変更した」と「登録に基づいて出願した」の読み分けが、結論を決めます。
根拠:実用新案法10条1項、特許法44条2項・46条1項及び6項。青本第22版・印刷975~979頁(PDF1047~1051頁)。
特許法と実用新案法の違いを表で整理する
本問では、特許の手続をそのまま実用新案に当てはめないことが大切です。まず、審査と技術評価の役割を分けておきます。
| 比較する点 | 特許 | 実用新案 |
|---|---|---|
| 登録前の審査 | 出願審査の請求を受け、新規性・進歩性などを実体審査する | 新規性・進歩性などの実体審査をせずに登録する。ただし方式・基礎的要件は確認する |
| 本問で区別する処分 | 審査官の拒絶査定には、拒絶査定不服審判を請求できる | (イ)の長官による出願却下には、拒絶査定不服審判を請求できない |
| 技術評価 | 実用新案法12条の技術評価制度の対象ではない | 出願中でも登録後でも、何人も請求できる。評価書は登録の可否を決める査定ではない |
特許にも長官による手続の却下はあります。「特許なら審判、実用新案なら審査請求」と分けるのではなく、誰が、どの処分をしたのかを確認します。また、実用新案技術評価には、登録が無効にされた後や、その登録に基づく特許出願をした後など、請求できない場合があります。
根拠:特許法48条の2・49条・121条、実用新案法2条の3・6条の2・12条。
出願変更は「どちらへ変更するか」で期限が違う
| 変更の方向 | 原則の期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 実用新案登録出願 → 特許出願 | 実用新案登録出願の日から 3年 を経過するまで | 特許法46条1項 |
| 特許出願 → 実用新案登録出願 | 特許出願の日から 9年6月 を経過するまで。最初の拒絶査定の謄本送達があった場合は、送達から 3月 の制限も満たす必要がある | 実用新案法10条1項 |
表は係属する出願の変更について、通常の期限を比較したものです。特許法46条5項の期間徒過の救済、実用新案法10条6項の3月の期間の延長は別に定められています。
(ホ)で見るのは下の行です。最初に実用新案から出発していても、今のCは特許出願なので、変更先に対応する実用新案法10条を使います。登録済みの実用新案に基づく特許出願は別制度であり、その出願や、それを分割した出願から実用新案登録出願への変更は認められません。
根拠:特許法46条・46条の2、実用新案法10条。
訂正は「特許か実用新案か」と「何を直すか」を分ける
| 比較する点 | 特許 | 実用新案 |
|---|---|---|
| 訂正の手続 | 訂正審判、又は無効審判・異議申立ての手続内での訂正請求 | 訂正書を提出する。訂正審判の制度はない |
| 減縮・誤記訂正などの回数 | 実用新案のような「全期間を通じて1回限り」という制限はない。各手続の要件に従う | 14条の2第1項の訂正は 全期間を通じて1回限り。時期の制限もある |
| 無効審判中の請求項削除 | 訂正請求として、134条の2第1項に定める指定期間内に行う | 14条の2第7項により、最初の答弁期間後でも可能。回数制限はないが、審理終結通知後は不可(審理再開の場合を除く) |
特許では、無効審判が係属してから審決が確定するまで、別に訂正審判を請求することはできません。無効審判の中で訂正を請求します。最初の答弁期間が終わった後でも、後に法律所定の訂正機会が与えられる場合があります。
実用新案では、減縮などの訂正と、請求項を丸ごと削除する訂正を分けます。「実用新案の訂正は全部1回だけ」でも、「請求項削除ならいつでもできる」でもありません。 登録が無効にされた後は、いずれの訂正もできません。
根拠:特許法120条の5第2項・126条・134条の2、実用新案法14条の2。比較表は2026年9月16日に条文を確認して作成しています。
【解答】
正答は4(4つ)です。
| 肢 | 正誤 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| イ | 誤り | 長官の出願却下は拒絶査定不服審判の対象ではない |
| ロ | 正しい | 同日・同一発明の協議不成立による拒絶確定には、先願の地位が残る |
| ハ | 正しい | 特許から変更した実用新案登録出願についても技術評価を請求できる |
| ニ | 正しい | 請求項削除の訂正は、答弁期間経過後でも可能な場合がある |
| ホ | 正しい | 今から行うのは特許から実用新案への変更。4年は9年6月以内 |
特許庁の公式正答の「特許・実用新案 第5問=4」と照合しています。
参照:実用新案法(e-Gov)、特許法(e-Gov)、工業所有権法逐条解説〔第22版〕。確認日:2026年9月16日。
実用新案法2条の3・6条の2・7条・10条・12条・14条の2は、2025年6月1日施行版と現在施行版の条文が一致することを確認しています。
短答の演習に使う過去問題集
PR 以下は楽天ブックスの広告リンクです。
紙の過去問題集で演習したい方は、収録範囲や版を確認して選んでください。
TAC 2026年度版 弁理士試験 体系別短答式 枝別過去問題集(紙)を楽天ブックスで見る
![]()
LEC 2026年版 弁理士試験 体系別短答過去問 特許法・実用新案法・意匠法・商標法(紙)を楽天ブックスで見る
![]()
紹介しているのは2026年版です。購入時は販売ページで版・収録内容・価格をご確認ください。
