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2026年度弁理士試験・短答第8問を解説|補正の時期と制限

2026年弁理士短答試験 第8問 補正の時期と制限

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目次

【問題文】

【特許・実用新案】8

手続の補正、明細書等の補正に関し、次のうち、正しいものは、どれか。

ただし、特に文中に示した場合を除いて、特許出願は、外国語書面出願、国際出願に係る特許出願、特許出願の分割に係る新たな特許出願、出願の変更に係る特許出願又は実用新案登録に基づく特許出願ではなく、取下げ、放棄又は却下されておらず、査定又は審決が確定しておらず、いかなる補正もされておらず、いかなる優先権の主張も伴わないものとする。

また、以下において、「最初の拒絶理由通知」とは、特許法第17条の2第1項第1号に規定する「最初に受けた」拒絶理由の通知をいい、「最後の拒絶理由通知」とは、同項第3号に規定する「最後に受けた」拒絶理由の通知をいうものとする。

1 特許出願の分割に係る新たな特許出願に対して、最初の拒絶理由通知において指定された期間内にした特許請求の範囲の補正は、特許請求の範囲についての補正を制限した特許法第17条の2第5項各号に規定する事項に、その目的が制限されることがある。

2 特許出願人は、特許出願の願書に添付した要約書について、適式に出願公開の請求をした後であっても、特許出願の日から1年4月以内であれば補正をすることができる。

3 訂正審判の請求人は、特許法第165条に規定された通知(いわゆる訂正拒絶理由通知)において指定された期間であれば、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる。

4 特許出願人は、拒絶をすべき旨の査定の謄本が送達されて、拒絶査定不服審判を請求した後に、当該拒絶査定不服審判が係属中であり、かつ当該査定の謄本の送達があった日から3月以内であれば、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について、いつでも補正をすることができる。

5 最後の拒絶理由通知において指定された期間内にした特許請求の範囲の減縮を目的とする補正が、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一でない場合、審査官は、そのことを理由として、その補正後の特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。

出典:特許庁「令和8年度弁理士試験 短答式筆記試験問題」PDF10頁。問題文は改行・字間を整えています。赤字は判断の手掛かりとして編集部が追加しました。

【解説】

1 分割出願では、最初の拒絶理由通知でも補正の目的が制限されることがある

この肢は正しいです。

特許法17条の2第5項は、最後の拒絶理由通知に対する補正などについて、特許請求の範囲の補正の目的を制限しています。ただし、対象は「最後」だけではありません。最初の拒絶理由通知でも、50条の2の通知が併せてされていれば、この制限を受けます。

50条の2は、分割の関係にある他の出願ですでに通知された拒絶理由と同一の理由を通知するとき、一定の要件の下で、その旨を併せて知らせる規定です。たとえば、親出願で指摘された拒絶理由を解消しないまま分割し、子出願で同じ拒絶理由を受ける場合が問題になります。出願を分けるたびに補正の機会を最初からやり直せるとすると、すでにした審査を有効に利用できません。

ただし、分割出願ならすべて制限されるわけではありません。 50条の2の通知には、分割による出願日の遡及関係、拒絶理由の同一性などの要件があります。また、対象の出願について審査請求をする前に出願人がその内容を知り得る状態になかった通知は、同条の対象から除かれます。

肢1は「制限される」と言い切らず、「制限されることがある」としています。50条の2の通知を伴う場合があるため、この表現が正しいことになります。

17条の2第5項が認める目的は次の四つです。

号補正の目的注意点
1号請求項の削除請求項を削る補正
2号特許請求の範囲の限定的減縮単に狭くすればよいわけではない。肢5で確認
3号誤記の訂正本来の記載へ正す補正
4号明りょうでない記載の釈明拒絶理由で示された事項についてするものに限る

根拠:特許法17条の2第5項、50条の2。青本第22版・印刷56頁・224頁(PDF128頁・296頁)。

2 要約書は、出願公開を請求した後には補正できない

この肢は誤りです。

要約書の補正期間は、特許法17条の3を受けた特許法施行規則11条の2の2に定められています。本問のように優先権主張などを伴わない通常の出願では、原則として出願日から1年4月です。しかし、出願公開の請求があった後の期間は除かれます。

本問の通常の出願について、期間と公開請求の有無を組み合わせると、次のようになります。

出願日からの期間出願公開の請求要約書の補正
1年4月以内まだ請求していないできる
1年4月以内すでに請求したできない
1年4月を経過請求の有無を問わないできない

「1年4月以内」という部分は正しいのですが、それだけで判断すると誤ります。肢2は、出願公開の請求後であっても補正できるとした点が誤りです。

要約書は、発明の概要を知らせ、特許情報を探しやすくするための書類です。出願公開の請求があれば、公開に向けた準備が始まります。その後も要約書を変更できると公開事務に支障が生じるため、補正の時期が制限されています。

公開された日ではなく、公開を請求した後かどうかを見る点にも注意します。また、要約書の補正期間を、明細書・特許請求の範囲・図面の補正期間と混同しないようにします。

根拠:特許法17条の3、特許法施行規則11条の2の2。青本第22版・印刷57〜59頁(PDF129〜131頁)。

3 訂正審判で補正するのは「訂正審判の請求書に添付した訂正明細書等」

この肢は誤りです。

決め手は、問題文の「願書に添付した」という部分です。

特許法17条の5第3項により、訂正審判で補正できるのは、訂正審判の請求書に添付した、訂正した明細書・特許請求の範囲・図面です。出願時の願書に添付した明細書等を、出願中と同じように直接補正する制度ではありません。

訂正審判は、特許後に、明細書等を一定の範囲で訂正することを求める手続です。その請求の際に「この内容に訂正したい」という訂正明細書等を添付します。審理中にその訂正案を手直しするのが、17条の5第3項の「補正」です。

場面対象書類根拠
出願中の明細書等の補正願書に添付した明細書等17条の2
訂正審判中の訂正案の補正訂正審判の請求書に添付した訂正明細書等17条の5第3項

また、訂正審判の訂正明細書等を補正できる時期は、原則として審理終結の通知前です。審理が再開された場合は、再度の審理終結通知前までです。165条の訂正拒絶理由通知に対する指定期間だけに限られるわけではありません。

もちろん、時期の要件を満たせばどのような訂正案へも変更できるわけではありません。訂正審判の請求書の要旨を変更する補正は原則として許されず、添付した訂正明細書等の変更も、この制限と併せて考えます。

根拠:特許法17条の5第3項、131条の2第1項、165条。青本第22版・印刷60〜62頁(PDF132〜134頁)。

4 審判の請求期間と、補正できる時点は別

この肢は誤りです。

特許法121条1項は、拒絶査定不服審判を請求できる期間を、原則として拒絶査定の謄本の送達があった日から3月以内と定めています。一方、その審判請求に伴う明細書等の補正は、17条の2第1項4号により、審判の請求と同時にしなければなりません。

審判を先に請求した後、3月の期限まで残りの日数があるからといって、その間に自由に補正できるわけではありません。

手続原則となる時期
拒絶査定不服審判の請求拒絶査定謄本の送達から3月以内
その請求に伴う明細書等の補正審判請求と同時

青本は、審判請求と補正を同時とした趣旨として、補正内容を十分に検討した上で適切な審判請求を行えるようにすること、第三者の監視負担を過度にしないことを説明しています。

なお、審判請求後に新たな拒絶理由通知を受け、その指定期間内に補正できる場合はあります。これは、その通知に対応する別の補正機会です。肢4のように、審判が係属していて3月以内なら「いつでも」補正できるという意味ではありません。

根拠:特許法17条の2第1項1号・3号・4号、121条1項。青本第22版・印刷52〜53頁(PDF124〜125頁)。

5 目的外補正への処分は「補正の却下」

この肢は誤りです。

最後の拒絶理由通知に対して請求項を狭める場合、17条の2第5項2号の「限定的減縮」に当たる必要があります。単に権利範囲が小さくなれば足りるわけではありません。

同号は、発明を特定するために必要な事項を限定し、かつ、補正前後の発明について産業上の利用分野と解決しようとする課題が同一であることを求めています。すでに行った先行技術調査などの審査結果を利用できる範囲に、補正を収めるためです。

この要件を満たさない減縮は、同号の目的に当たらない補正、すなわち目的外補正となります。ここまでは問題文の前提に対応します。誤っているのは、その後の処分です。

審査官は、その補正を決定で却下します。 根拠は53条1項です。目的外補正であることを理由に、補正後の出願について拒絶査定をするのではありません。

補正が却下されれば、審査は補正前の明細書等を対象として行われます。補正前の出願に拒絶理由が残っていれば、別途、拒絶査定となることはあります。しかし、「補正を取り除く決定」と「出願に対する拒絶査定」は異なる処分です。

なお、「同一」は字面が完全一致することだけを意味しません。青本は、利用分野には技術分野が密接に関連する場合を含み、課題には概念をより下位にした場合や同種の場合を含むと説明しています。本問では、その同一性がないという前提で処分を判断します。

本問では、次の順に処理を分けると混同を防げます。

段階判断の対象処理
① 補正の適否を判断利用分野・課題の同一性を欠く減縮補正53条1項により補正を決定で却下
② 却下後に審査を続ける補正前の明細書・特許請求の範囲・図面補正前の内容で特許の可否を判断
③ 拒絶理由が残る場合補正前の出願拒絶査定となることがある

根拠:特許法17条の2第5項2号、53条1項。青本第22版・印刷56〜57頁・228〜229頁(PDF128〜129頁・300〜301頁)。

【解答】

正答は1です。

肢正誤判断のポイント
1正しい最初の拒絶理由通知でも、50条の2の通知を伴えば補正目的が制限される
2誤り出願公開請求後は、1年4月以内でも要約書を補正できない
3誤り補正の対象は、訂正審判請求書に添付した訂正明細書等
4誤り審判請求に伴う補正は、審判請求と同時
5誤り目的外補正に対する処分は、補正の却下

特許庁の公式正答の保存済み資料にある「特許・実用新案 第8問=1」と照合しています。

参照:特許法、特許法施行規則、工業所有権法逐条解説〔第22版〕。確認日:2026年9月19日。青本は刊行時の解説資料として参照し、本問に関係する規定はe-Govの条文と照合しています。

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