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2026年度弁理士試験・短答第7問を解説|査証・第三者意見募集・信用回復措置

2026年短答試験・特許実用新案第7問、査証と侵害訴訟の解説

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目次

【問題文】

【特許・実用新案】7

特許権の侵害及びその訴訟に関し、次のうち、誤っているものは、いくつあるか。

(イ) 裁判所が、特許権の侵害に係る訴訟において、特許法の規定に基づいて、査証人に対して査証を命ずる決定をした場合、当該決定に対しては即時抗告をすることはできない。

(ロ) 査証を受ける当事者が、特許法の規定による査証人の工場への立入りの要求に対し、正当な理由なくこれに応じないときは、裁判所は、立証されるべき事実に関する申立人の主張を真実と認めることができる。

(ハ) 東京地方裁判所又は大阪地方裁判所が第一審の裁判所となる特許権の侵害に係る訴訟において、特許法の規定に基づき、裁判所は、当事者の申立てにより、必要があると認めるときは、意見募集を行うに適した事案であるか否かについて他の当事者の意見を聴くことなく、広く一般に対し、当該事件に関する特許法の適用その他の必要な事項について意見を求めることができる。

(ニ) 特許権の侵害に係る損害賠償請求訴訟において、当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な事項についての鑑定は、原告だけでなく、被告も申立てをすることができる。

(ホ) 故意又は過失により特許権を侵害したことにより特許権者の業務上の信用を害した者に対して、裁判所は、損害の賠償に代えて特許権者の業務上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができるが、損害の賠償とともに当該措置を命ずることはできない。

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出典:特許庁「令和8年度弁理士試験 短答式筆記試験問題」PDF9頁。問題文は改行・字間を整えています。赤字は判断の手掛かりとして編集部が追加しました。

【解説】

イ 査証命令の申立てについての決定には即時抗告ができる

この肢は誤りです。

特許法105条の2第4項は、査証命令の申立てについての決定に対し、即時抗告をすることができると定めています。「即時抗告をすることはできない」とする問題文は、条文と反対です。

ここでいう「申立てについての決定」には、査証を命ずる申立てを認める決定だけでなく、申立てを退ける決定も含まれます。査証を命じられた側だけに不服申立ての機会があるわけではありません。

査証は、中立な専門家である査証人が相手方の工場などへ入り、装置の作動・計測・実験などを通じて証拠を集める制度です。製造方法やソフトウェアに関する発明のように、侵害の証拠が相手方の内部にあり、通常の書類提出だけでは立証しにくい場面を想定しています。一方で、工場への立入りなど相手方に負担を課すため、査証命令の申立てについての決定には即時抗告が用意されています。

なお、同条1項は、必要性、侵害の蓋然性、他の手段による証拠収集の困難性などを査証命令の要件としています。即時抗告ができることと、申立てをすれば査証が当然に認められることは別です。

根拠:特許法105条の2第1項・4項。青本第22版・印刷361~363頁(PDF433~435頁)。

ロ 正当な理由なく査証を拒めば、申立人の主張が真実と認められることがある

この肢は正しいです。

特許法105条の2の5は、査証を受ける当事者が、査証人による工場等への立入り、質問、書類等の提示、装置の作動・計測・実験などの要求に正当な理由なく応じないとき、裁判所は、立証されるべき事実に関する申立人の主張を真実と認めることができると定めています。

条文は「真実と認めなければならない」ではなく、「真実と認めることができる」としています。拒否があれば自動的に申立人が勝つわけではなく、裁判所に判断の余地があります。

査証人の具体的な権限は105条の2の4に定められています。同条4項は、査証を受ける当事者に必要な協力を求めています。協力義務だけを置いても、正当な理由のない拒否に何の効果もなければ、証拠が相手方に偏っている問題を解決できません。そこで105条の2の5が、拒否に対する訴訟上の効果を定めています。

青本は、工場への立入りを不当に拒む場合に限らず、提示すべき書類を失わせた場合や、虚偽の内容を記した書類を提示した場合なども「正当な理由なくこれらに応じないとき」に含まれ得ると説明しています。

根拠:特許法105条の2の4第2項・4項、105条の2の5。青本第22版・印刷366~369頁(PDF438~441頁)。

ハ 第三者から意見を募る前に、他の当事者の意見を聴かなければならない

この肢は誤りです。

特許法105条の2の11第1項は、東京地方裁判所又は大阪地方裁判所が第一審となる特許権・専用実施権侵害訴訟で、当事者の申立てがあり、裁判所が必要と認めるとき、広く一般から意見書を募る制度を定めています。ただし、裁判所は、その前に他の当事者の意見を聴かなければなりません。

問題文は「他の当事者の意見を聴くことなく」としているため、誤りです。

この第三者意見募集制度は、一般から寄せられた意見を裁判所がそのまま判決の基礎にする手続ではありません。提出された意見書を当事者が閲覧・謄写し、裁判所の判断材料としたいものを各当事者が書証として提出する、という構造です。

また、意見募集を始めるには「当事者の申立て」が必要です。裁判所が職権だけで開始できる制度ではありません。他の当事者の同意までは条文上求められていませんが、意見を述べる機会は保障されています。「意見を聴く」と「同意を得る」は区別して覚えます。

根拠:特許法105条の2の11第1項・3項。青本第22版・印刷377~381頁(PDF449~453頁)。

ニ 損害計算のための鑑定は被告も申し立てられる

この肢は正しいです。

特許法105条の2の12は、特許権・専用実施権侵害訴訟において、当事者の申立てにより、裁判所が損害計算に必要な事項について鑑定を命じたとき、当事者が鑑定人に必要事項を説明しなければならないと定めています。

条文は申立人を「原告」に限定していません。「当事者」には原告と被告の双方が含まれるため、被告も申し立てることができます。

損害額の計算には、侵害品の販売数量、販売単価、利益率などの資料が使われます。資料が大量であったり、会計上の略号が使われていたりすると、提出されただけでは内容を正確に理解できません。このため、経理・会計の知識を持つ鑑定人を利用し、当事者に説明義務を負わせる制度が設けられています。

ただし、当事者が鑑定を申し立てれば、裁判所が必ず命じるわけではありません。鑑定を採用するかは裁判所が判断します。「誰が申立てをできるか」と「申立てが認められるか」を分けて読みます。

根拠:特許法105条の2の12。青本第22版・印刷381~383頁(PDF453~455頁)。

ホ 信用回復措置は損害賠償と併せて命じることができる

この肢は誤りです。

特許法106条は、故意又は過失による特許権・専用実施権侵害で権利者の業務上の信用を害した者に対し、裁判所が権利者の請求により、信用回復に必要な措置を命じられると定めています。その方法は、次の二つです。

  • 損害の賠償に代えて、信用回復措置を命ずる
  • 損害の賠償とともに、信用回復措置を命ずる

問題文は前者だけを認め、後者を否定しているため誤りです。

信用回復措置の例として、青本は新聞紙上への謝罪広告を挙げています。金銭の支払いだけでは回復しにくい業務上の信用に対応するための制度です。

なお、裁判所が職権で命じるわけではなく、特許権者又は専用実施権者の請求が必要です。また、故意又は過失も要件です。短答では「代えて、又は……とともに」という並列表現を片方だけに書き換える肢に注意します。

根拠:特許法106条。青本第22版・印刷395~396頁(PDF467~468頁)。

五つの肢を整理する

肢 制度 条文上のポイント
イ 査証命令 申立てについての決定には即時抗告ができる
ロ 査証への協力 正当な理由のない拒否では、申立人の主張を真実と認めることができる
ハ 第三者意見募集 当事者の申立てが必要で、他の当事者の意見を聴く
ニ 損害計算の鑑定 原告・被告のいずれも申立てができる。採否は裁判所が判断する
ホ 信用回復措置 損害賠償に代えることも、損害賠償と併せることもできる

査証、第三者意見募集、損害計算の鑑定はいずれも侵害訴訟に関する制度ですが、目的が違います。

制度 主な目的
査証 相手方の工場や装置などから、侵害立証に必要な証拠を集める
第三者意見募集 社会的影響の大きい事件などで、広い分野から意見・情報を募る
損害計算のための鑑定 販売数量・単価・利益率などを専門家が整理し、損害計算を助ける
信用回復措置 侵害で害された権利者の業務上の信用を回復する

本問の中心は、制度名を覚えているかではなく、誰が申し立てるのか、他の当事者の意見を聴くのか、不服申立てができるのか、裁判所に裁量があるのかという手続の細部です。

【解答】

誤っているのは、イ・ハ・ホの3つです。したがって、正答は3です。

肢 正誤 判断のポイント
イ 誤り 査証命令の申立てについての決定には即時抗告ができる
ロ 正しい 正当な理由のない拒否には真実擬制の効果があり得る
ハ 誤り 他の当事者の意見を聴く必要がある
ニ 正しい 条文は「当事者」と定め、被告も申立てができる
ホ 誤り 信用回復措置は損害賠償とともに命じることもできる

特許庁の公式正答の「特許・実用新案 第7問=3」と照合しています。

参照:特許法(e-Gov法令検索)、工業所有権法逐条解説〔第22版〕。確認日:2026年9月18日。第7問に関係する上記条文について、出題時点と確認日時点で結論を変える改正は確認されませんでした。青本は刊行時の解説資料として参照し、現行条文はe-Gov法令検索で確認しています。

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